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ケーススタディー: 不二家様


不二家
経営企画室 広報IR部 広報室
兼 不二家ファミリー文化研究所
土橋美紀氏

不二家、周年イベントや将棋関連など話題続く

『ミルキー』70周年や新商品CMに藤井氏
WEBやSNSで若者世代に向け訴求

新型コロナウイルスの感染拡大に揺れた2020年、コロナ禍は店頭のペコちゃん人形にある変化をもたらした。いつも笑顔で舌を出している、そのトレードマークがマスクに覆われて見えなくなってしまったのだ。ペコちゃんはこの年、生誕70周年を迎えたが、感染防止の観点から「大きなイベントができなかった」と広報は振り返る。しかし、マスク姿のペコちゃんはうれしそうに見える。人気アイドルグループのCM起用や将棋関連などの話題が相次ぎ、全国の店舗で若者の姿が増えているからだろう。洋菓子と菓子事業の両輪を支える広報。「チーム不二家」でお客様を笑顔に――。
不二家を代表するロングセラーブランド『ミルキー』が発売から70周年を迎えました。3月には、銀座に新業態店舗「milky70 since1951」がオープンし話題になりました。

1951年に発売した『ミルキー』は今年発売70周年を迎えました。そこで3月に、新業態店舗「milky70 since1951」をオープンしました。『ミルキー』の味わいをメインとしたさまざまなドリンクやスイーツを販売しています。

店舗名には、『ミルキー』が70年歩んできた歴史を大切にしながらも新たな価値を提供し続けたいという「今までとこれから」という意味を込めました。数寄屋橋交差点の広告塔「ペコちゃんビジョン」でもおなじみの銀座の地で、『ミルキー』の変わらないおいしさと新しい楽しみ方をお届けしています。

『ミルキー』とは:1951年に発売され、今年で発売から70周年を迎えた不二家を代表するロングセラー菓子。創業者の藤井林右衛門が開発した。
インスタを中心に若者の反響が大きかったようですね。

大々的にオープンイベントを行ったわけではありませんが、気軽にコミュニケーションが取れるインスタグラムなどのSNSを活用しながら、分かりやすくお店の情報をお伝えしました。

新業態店は、もちろんすべてのお客様に向けてということですが、若者層にもアプローチしたいと、店舗の内観やスイーツの味について、企画段階から洋菓子事業部の若手女性社員が取り組みました。

新業態店オープンのリリースの配信は非常事態宣言継続中の2月26日で、オープンの2週間前でした。

リリースのタイミングをどうするのか、調整が非常に難しかったです。チーム内では、オープン前のなるべく早い時期に情報を出して開店時に多くの取材を受けたいという声もありましたが、広報としては、世の中の状況や時期を見計らいながらリリースを出すべきだと考え、ギリギリまで待ちました。

本来ならオープンイベントを開催するケースかもしれません。そういう中で、最大限に効果をあげるために行ったのがSNSの活用でした。

星野リゾートさんとのコラボも話題です。
『ミルキー』と星野リゾートによる体験キャンペーン

星野リゾートさんとは昨年、『カントリーマアム』と若者向けの「星野リゾート BEB」という2つのブランドによるタイアップ企画を行ったご縁から、『ミルキー』でもコラボキャンペーンを展開することになりました。

双方、若者へアプローチしたいという点で合致し、一味違う旅を楽しめるように『ミルキー』をテーマにした客室と、仲間と一緒だからこそ盛り上がれるコンテンツを用意しました。現在、当社の公式ツイッターで、星野リゾートさんの宿泊ギフト券5万円分と『ミルキー』の詰め合わせのセットが、合計6名様に当たるプレゼントキャンペーンを行っています。

SNSでは、洋菓子と菓子事業それぞれに配置された宣伝担当と連携し、広報が情報を取りまとめて発信しました。このように『ミルキー』70周年の取り組みでは、当社の主力事業である洋菓子事業、菓子事業という枠を超えプロジェクトを立ち上げワンチームで活動しています。

コラボ商品も増えています。

近年は、B-R サーティワン アイスクリームさん、赤城乳業さん、東ハトさんとコラボをさせていただき、リリースを出しました。モノを作るのは企画や事業部ですが、発信する内容について広報同士が連携を取って情報のすり合わせを行っています。星野リゾートさんとのタイアップのように、キャンペーンにおいてもコラボが進んできたという印象があります。

昨年から創業110周年、ペコちゃん生誕70周年、そして今年の『ミルキー』70周年とアニバーサルイヤーが続きますが、周年広報で大切にされていることは?

昨年の創業110周年は会社の記念日でしたが、それをことさらに強調するのではなく、同じ年に70周年を迎え、皆様にとても親しまれてきたペコちゃんとお客様とのコミュニケーションの中で「周年」の取り組みをしっかり表に出していこうと情報発信に力を入れました。お客様とペコちゃんとの絆をより深めていただき、あらゆる世代に今一度ペコちゃんの存在を刷り込んでいくためのPRを行うことが、広報の役どころでした。

このような時期でしたので、周年広報としては社外的には目立った取り組みを行っていませんが、従業員のモチベーションを高めるため、社内提案のコンテストをするなどインナーコミュニケーションも行っていました。

第6期叡王戦に関する記者発表会で右から2人目が河村宣行社長。ペコちゃん、ポコちゃんも駆けつけた
不二家さんの最近の話題と言えば、将棋関連が目を引きます。叡王戦を主催するという発表は多くの露出がありました。将棋のタイトル戦で初めてお菓子メーカーが主催を務めることになりましたが、反響はいかがですか?

想像以上でしたね。あらためて将棋ファンのすそ野の広さを実感しました。将棋初心者のお子さんや保護者向けの「ペコちゃんはじめての将棋教室」を2019年から日本将棋連盟さんと一緒に開催させていただいているご縁もありました。ファンの方から「主催してくれてありがとう」といった感謝の声も多く届き、私たちも驚いています。

新商品の『ONチョコレート』『OFFチョコレート』では、藤井王位・棋聖をCMに起用し注目を集めました。新CMはスポーツ紙を中心に全国紙でも取りあげられました。ニュースリリースは8ページにわたり、撮影エピソードやインタビューもありました。
『ON/OFFチョコレート』新TV-CMの一場面

藤井さんの初めてのCMということもあり注目度も高い中で、しっかりと露出したいと考えました。コロナの影響でCMお披露目のイベントもできない状況でしたので、メディアへアプローチできる唯一の手段が、このリリースだと思うとつい力が入ってしまい……撮影エピソードやインタビュー、ストーリーボードなどなるべく多くの情報を可能な限り盛り込んだら8ページの尺になってしまいました(笑)。それと、メディアへの素材提供も手厚くしました。テレビでは、メイキングやインタビュー動画も多く使っていただきました。

中でも藤井さんとペコちゃん、ポコちゃんが一緒に映っているカットは「かわいい」と好評でした。ペコちゃんは不二家のイメージそのものなので、著名人やタレントさんと一緒に露出されれば、不二家らしさもアピールできると考えました。宣伝では、タレントさんと商品という組み合わせですが、広報・PRでは、今回のようにペコちゃん、ポコちゃんと結びつけ効果的なPRができ、あらためてペコちゃんというキャラクターの力を感じました。

コロナ禍にもかかわらず、特に若者の来店が増えているようですね。

コロナ禍以降、「おうち時間、スイーツ応援」をテーマに取り組みながら、創業110周年の昨年からは「Smile Switch」をテーマに、Snow Manさんを『LOOK』と「洋菓子」のブランドキャラクターに起用しプロモーションを展開しています。対象商品を購入していただくとQUOカードが当たるキャンペーンを行ったり、Snow Manさんが出演されているラジオの冠番組(「不二家 presents Snow Manの素のまんま」)でおすすめのケーキや『LOOK』を紹介していただいたりしています。

当社の公式ツイッターでもラジオで取りあげられた内容を投稿していますが、「いいね!」の数が4000~5000になるほどで、ファンの方を中心に多くの反響をいただいています。Snow Manさんによる効果はとても大きく、手応えを感じています。

全国ニュースだけでなく、地域ニュースも多くなっています。昨秋には、埼玉県の高校生とのコラボで狭山茶を使った限定スイーツを発売し、日経の地域経済面でも紹介されました。
高校生と共同開発した『狭山茶スイーツ』

2019年11月に所沢高校の社会科の探究型授業の中で「地元の狭山茶の魅力を発信したい」という提案があり、『狭山茶スイーツ』を作るプロジェクトがスタートしたそうです。当社は生徒さんから依頼を受け、企画に参加しました。新型コロナの感染拡大の影響で約5カ月間、生徒の皆さんと直接対話ができませんでしたが、電話やメールなどで意見を交わしながら、発売にこぎ着けました。当社だけでなく所沢高校さんからもリリースを出されて、地域の高校との商品開発ということで話題性があったのではと思います。

店舗の不二家洋菓子店のショーケースを見ると、小田原産の桜、笠間産の栗など地域の特産を使用したケーキが並んでいます。お店が地域に根付き、店舗発信の話題も多くなっています。地域の直営・FC店舗と、どう連携を図っているのですか?
不二家洋菓子店店頭のマスク姿のペコちゃん人形

洋菓子事業では全国各地に店舗を持っており、古くからさまざまな地域で親しまれてきました。当社ではエリアごとにエリアマネージャーやスーパーバイザーといった営業の担当者を置いています。店舗に取材のご依頼があった場合、その地域の営業を介して、店舗と私たち広報が連携を取るようにしています。

私たちはあくまでもフォローという立ち位置で、店舗が主役となってメディア対応を行っています。当社では広報は黒子として、社内全体を説明する以外は、できるだけ現場の担当者に出てもらうようにしています。従業員一人一人に光が当たるようなフォローを普段から心掛けています。

地域の店舗の取り組みがニュースになり、その取り組みが他の店舗に波及していった事例として、マスク姿のペコちゃん人形があります。マスク姿は、もともと京都のある店舗が始めたものでSNSで話題になりました。「ペコちゃんがマスクしているのだから、マスクをしないとね」と、お子さま連れのお客様にも大変好評で全国に波及していきました。

3月にあった株主総会の模様も多くのメディアで報道されました。女優の酒井美紀さんの社外取締役就任に注目が集まりました。

酒井さんには、昨年ペコちゃんの「70周年アンバサダー」をお願いし、情報発信のお手伝いしていただきました。また、酒井さんはNPO法人「ワールド・ビジョン・ジャパン」の親善大使として世界の子どもたちを支援する活動をされています。こうした社会貢献活動の実践者としての観点はもとより、消費者としての観点からもご助言をいただければと思います。

もともと、親会社である山崎製パンのCMに20年以上出演されており、そういったつながりを含めて当社をよく知ってくださっており、適任であると考え、就任をお願いしました。

コロナ禍で、お客様とのコミュニケーションが取りづらい状況が続きます。今後の広報活動の展望や手掛けていきたいことなどについてお聞かせください。

コロナ禍で、ペコちゃんが児童施設を訪問する「ペコちゃんが行く! 不二家キャラバン隊」が昨年から休止を余儀なくされるなどCSR活動にも影響が出ています。直接、お客様と触れ合うリアルイベントの開催が難しい状況ですが、発信を止めることなくお客様とのコミュニ―ションを図っていきたいと思います。

2月にはプロゴルファーの上田桃子選手とスポンサー契約を発表しましたが、特設サイトを開設し、上田選手からのメッセージなどをWEBに掲載しています。

昨年からエンドユーザーに対し、より効果的な訴求をするために広告宣伝も強化しています。宣伝など各事業部と連携しながら、より効果的に認知度を広げていくためにどんなPRができるのか知恵を絞っていきたいと思います。引き続き、WEBやSNSを有効活用しながら広報・PRに取り組んでいきたいと考えています。

<不二家> 創業:1910年11月
不二家には2種類の社内報がある。年3回発行している紙媒体「Sweeeet!!」と、毎週金曜日に発行しているデジタルの「WEEKLY Sweeeet!!」だ。「WEEKLY Sweeeet!!」は各部署の情報をタイムリーに伝えるべく、社内イントラに掲載。両社内報は、部署を超えて横断的に集めた若手メンバーが中心の小委員会で運営し発行している。
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