ケーススタディー: 不二家様

不二家
経営企画室 広報IR部 広報室
兼 不二家ファミリー文化研究所
土橋美紀氏
不二家、周年イベントや将棋関連など話題続く
『ミルキー』70周年や新商品CMに藤井氏
WEBやSNSで若者世代に向け訴求

1951年に発売した『ミルキー』は今年発売70周年を迎えました。そこで3月に、新業態店舗「milky70 since1951」をオープンしました。『ミルキー』の味わいをメインとしたさまざまなドリンクやスイーツを販売しています。
店舗名には、『ミルキー』が70年歩んできた歴史を大切にしながらも新たな価値を提供し続けたいという「今までとこれから」という意味を込めました。数寄屋橋交差点の広告塔「ペコちゃんビジョン」でもおなじみの銀座の地で、『ミルキー』の変わらないおいしさと新しい楽しみ方をお届けしています。
大々的にオープンイベントを行ったわけではありませんが、気軽にコミュニケーションが取れるインスタグラムなどのSNSを活用しながら、分かりやすくお店の情報をお伝えしました。
新業態店は、もちろんすべてのお客様に向けてということですが、若者層にもアプローチしたいと、店舗の内観やスイーツの味について、企画段階から洋菓子事業部の若手女性社員が取り組みました。
リリースのタイミングをどうするのか、調整が非常に難しかったです。チーム内では、オープン前のなるべく早い時期に情報を出して開店時に多くの取材を受けたいという声もありましたが、広報としては、世の中の状況や時期を見計らいながらリリースを出すべきだと考え、ギリギリまで待ちました。
本来ならオープンイベントを開催するケースかもしれません。そういう中で、最大限に効果をあげるために行ったのがSNSの活用でした。

星野リゾートさんとは昨年、『カントリーマアム』と若者向けの「星野リゾート BEB」という2つのブランドによるタイアップ企画を行ったご縁から、『ミルキー』でもコラボキャンペーンを展開することになりました。
双方、若者へアプローチしたいという点で合致し、一味違う旅を楽しめるように『ミルキー』をテーマにした客室と、仲間と一緒だからこそ盛り上がれるコンテンツを用意しました。現在、当社の公式ツイッターで、星野リゾートさんの宿泊ギフト券5万円分と『ミルキー』の詰め合わせのセットが、合計6名様に当たるプレゼントキャンペーンを行っています。
SNSでは、洋菓子と菓子事業それぞれに配置された宣伝担当と連携し、広報が情報を取りまとめて発信しました。このように『ミルキー』70周年の取り組みでは、当社の主力事業である洋菓子事業、菓子事業という枠を超えプロジェクトを立ち上げワンチームで活動しています。
近年は、B-R サーティワン アイスクリームさん、赤城乳業さん、東ハトさんとコラボをさせていただき、リリースを出しました。モノを作るのは企画や事業部ですが、発信する内容について広報同士が連携を取って情報のすり合わせを行っています。星野リゾートさんとのタイアップのように、キャンペーンにおいてもコラボが進んできたという印象があります。
昨年の創業110周年は会社の記念日でしたが、それをことさらに強調するのではなく、同じ年に70周年を迎え、皆様にとても親しまれてきたペコちゃんとお客様とのコミュニケーションの中で「周年」の取り組みをしっかり表に出していこうと情報発信に力を入れました。お客様とペコちゃんとの絆をより深めていただき、あらゆる世代に今一度ペコちゃんの存在を刷り込んでいくためのPRを行うことが、広報の役どころでした。
このような時期でしたので、周年広報としては社外的には目立った取り組みを行っていませんが、従業員のモチベーションを高めるため、社内提案のコンテストをするなどインナーコミュニケーションも行っていました。

想像以上でしたね。あらためて将棋ファンのすそ野の広さを実感しました。将棋初心者のお子さんや保護者向けの「ペコちゃんはじめての将棋教室」を2019年から日本将棋連盟さんと一緒に開催させていただいているご縁もありました。ファンの方から「主催してくれてありがとう」といった感謝の声も多く届き、私たちも驚いています。

藤井さんの初めてのCMということもあり注目度も高い中で、しっかりと露出したいと考えました。コロナの影響でCMお披露目のイベントもできない状況でしたので、メディアへアプローチできる唯一の手段が、このリリースだと思うとつい力が入ってしまい……撮影エピソードやインタビュー、ストーリーボードなどなるべく多くの情報を可能な限り盛り込んだら8ページの尺になってしまいました(笑)。それと、メディアへの素材提供も手厚くしました。テレビでは、メイキングやインタビュー動画も多く使っていただきました。
中でも藤井さんとペコちゃん、ポコちゃんが一緒に映っているカットは「かわいい」と好評でした。ペコちゃんは不二家のイメージそのものなので、著名人やタレントさんと一緒に露出されれば、不二家らしさもアピールできると考えました。宣伝では、タレントさんと商品という組み合わせですが、広報・PRでは、今回のようにペコちゃん、ポコちゃんと結びつけ効果的なPRができ、あらためてペコちゃんというキャラクターの力を感じました。
コロナ禍以降、「おうち時間、スイーツ応援」をテーマに取り組みながら、創業110周年の昨年からは「Smile Switch」をテーマに、Snow Manさんを『LOOK』と「洋菓子」のブランドキャラクターに起用しプロモーションを展開しています。対象商品を購入していただくとQUOカードが当たるキャンペーンを行ったり、Snow Manさんが出演されているラジオの冠番組(「不二家 presents Snow Manの素のまんま」)でおすすめのケーキや『LOOK』を紹介していただいたりしています。
当社の公式ツイッターでもラジオで取りあげられた内容を投稿していますが、「いいね!」の数が4000~5000になるほどで、ファンの方を中心に多くの反響をいただいています。Snow Manさんによる効果はとても大きく、手応えを感じています。

2019年11月に所沢高校の社会科の探究型授業の中で「地元の狭山茶の魅力を発信したい」という提案があり、『狭山茶スイーツ』を作るプロジェクトがスタートしたそうです。当社は生徒さんから依頼を受け、企画に参加しました。新型コロナの感染拡大の影響で約5カ月間、生徒の皆さんと直接対話ができませんでしたが、電話やメールなどで意見を交わしながら、発売にこぎ着けました。当社だけでなく所沢高校さんからもリリースを出されて、地域の高校との商品開発ということで話題性があったのではと思います。

洋菓子事業では全国各地に店舗を持っており、古くからさまざまな地域で親しまれてきました。当社ではエリアごとにエリアマネージャーやスーパーバイザーといった営業の担当者を置いています。店舗に取材のご依頼があった場合、その地域の営業を介して、店舗と私たち広報が連携を取るようにしています。
私たちはあくまでもフォローという立ち位置で、店舗が主役となってメディア対応を行っています。当社では広報は黒子として、社内全体を説明する以外は、できるだけ現場の担当者に出てもらうようにしています。従業員一人一人に光が当たるようなフォローを普段から心掛けています。
地域の店舗の取り組みがニュースになり、その取り組みが他の店舗に波及していった事例として、マスク姿のペコちゃん人形があります。マスク姿は、もともと京都のある店舗が始めたものでSNSで話題になりました。「ペコちゃんがマスクしているのだから、マスクをしないとね」と、お子さま連れのお客様にも大変好評で全国に波及していきました。
酒井さんには、昨年ペコちゃんの「70周年アンバサダー」をお願いし、情報発信のお手伝いしていただきました。また、酒井さんはNPO法人「ワールド・ビジョン・ジャパン」の親善大使として世界の子どもたちを支援する活動をされています。こうした社会貢献活動の実践者としての観点はもとより、消費者としての観点からもご助言をいただければと思います。
もともと、親会社である山崎製パンのCMに20年以上出演されており、そういったつながりを含めて当社をよく知ってくださっており、適任であると考え、就任をお願いしました。

コロナ禍で、ペコちゃんが児童施設を訪問する「ペコちゃんが行く! 不二家キャラバン隊」が昨年から休止を余儀なくされるなどCSR活動にも影響が出ています。直接、お客様と触れ合うリアルイベントの開催が難しい状況ですが、発信を止めることなくお客様とのコミュニ―ションを図っていきたいと思います。
2月にはプロゴルファーの上田桃子選手とスポンサー契約を発表しましたが、特設サイトを開設し、上田選手からのメッセージなどをWEBに掲載しています。
昨年からエンドユーザーに対し、より効果的な訴求をするために広告宣伝も強化しています。宣伝など各事業部と連携しながら、より効果的に認知度を広げていくためにどんなPRができるのか知恵を絞っていきたいと思います。引き続き、WEBやSNSを有効活用しながら広報・PRに取り組んでいきたいと考えています。
不二家には2種類の社内報がある。年3回発行している紙媒体「Sweeeet!!」と、毎週金曜日に発行しているデジタルの「WEEKLY Sweeeet!!」だ。「WEEKLY Sweeeet!!」は各部署の情報をタイムリーに伝えるべく、社内イントラに掲載。両社内報は、部署を超えて横断的に集めた若手メンバーが中心の小委員会で運営し発行している。
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