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ケーススタディー: 三和交通様

(写真左から)
三和交通
統轄本部 広報兼横浜駅前営業所係長
「KOOちゃん」こと 小関正和氏
統轄本部 広報
「まーちゃん」こと 和田茉璃奈氏
統轄本部 広報
「ちーちゃん」こと 小澤千秋氏

タクシー大手、三和交通の広報担当はYouTuber!?

チャンネル登録数は5600人を突破
親しみやすい動画で採用ブランディング

ここは横浜市某所、タクシー会社大手の三和交通の会議室。「まーちゃん」「ちーちゃん」「KOOちゃん」の3人が繰り出す動画が話題となり、あの人気番組「タモリ倶楽部」に全編出演を果たした。横浜や東京、埼玉に拠点を持つ同社は、『忍者でタクシー』『心霊スポット巡礼ツアー』などユニークな企画を次々と打ち出すことで知られている。会社紹介から激辛焼きそばの試食まで振れ幅の大きい広報動画だが、その目的はいったい何なのか。電脳空間で活躍する姿は、「広報は黒子」という従来のイメージをも覆す。ついに企業広報YouTuberが登場――。
動画を見ると、広報チームの息がぴったりです。普段から3人で行動することが多いのですか?

小澤: 普段は3人ともバラバラで、私が横浜・桜木町にある統轄本部、小関は横浜駅前営業所所属の管理職、和田は採用業務も兼ねて新宿にあるグループ会社のラボに詰めています。取材や動画撮影があれば、本社や営業所、外部のイベント会場などで、そのつど集まります。

実は、今日この取材の後、こちらの会議室で1本動画を撮る予定です。タクシー会社なので呼ばれれば、すぐ駆けつける、機動力が売りの広報チームです。

動画はいつから始めたのですか?

和田: 2013年に動画チャンネルを開設し、まずドワンゴさんのニコニコ生放送からスタートしました。そのニコニコ動画を録画したものをYouTubeに上げていましたが、2年前から、YouTubeでも自社制作した動画をアップしています。

今、YouTubeは若い世代に対してテレビ以上の影響力を持っています。例えば、弊社が紹介されたテレビの情報番組をきっかけに興味を持った方が何をするかというと、ネットで弊社を検索されるのではないでしょうか。その際、テキストよりも画像よりも、会社のリアルな雰囲気を伝えられるのは、動画が一番だと思うんです。

動画のほかにも、TwitterとInstagramでも発信されています。

小澤: TikTokもやっているんですよ。TikTokは別ですが、TwitterとInstagramは広報3人で回しています。

9月には和田さんと小澤さんが「タモリ倶楽部」に出演されました。同番組には各企業の広報担当者から「出たい」と数多くのアプローチがあると聞きます。

小澤: たまたま番組のスタッフさんがネットサーフィンをされていた時に目に留まったみたいです。

小関: 再生回数が2ケタにも関わらず、その後もずーっと動画が上がっているのが面白いと言われました。再生回数が伸びないと凍結状態になっているケースが多いのに、どうして続けているのか、そういったところがどうも不思議に思われたようです。

番組放送日にはYouTubeで「出演を喜ぶ会」という生配信を行いました。

和田: 「どうせならやらせてもらったら」という社長の吉川(永一氏)の指示です(笑)。番組から許可をいただきライブ配信しました。番組を見てくださる方は、やはりリアルタイムでネット検索すると思うので、そこで気づいてもらえればと思いました。

小澤: もちろん、三和交通を知っていただくことが狙いではありますが、(YouTubeの)チャンネル登録者数を増やす絶好のチャンスを逃したくないという思いでした。

和田: 番組放送前のチャンネル登録者数は1990人でしたが、12月6日時点で5600人を大きく超えています。コメントも多く、番組後には動画を毎回視聴してくださる方が増えましたね。社内でも「見たよ」と反響がものすごくありました。社内の雰囲気アップにもつながり、本当にメリットだらけの番組出演になりました。

広報動画の狙いが少しずつ見えてきました。

小澤: 社内にもこれまで動画をよく思っていなかった乗務社員もいたと思うんです。ですが、番組で自分の会社が紹介されたということで、私のもとにも「うれしかった」という声がたくさん届きました。

和田: タクシー業界では現在、乗務員の高齢化が目立っています。業界全体でみた場合、平均年齢は55、56歳といったところでしょうか。弊社は45、46歳くらいと業界平均よりは若いとはいえ、将来的にみるとドライバー不足は深刻です。

若者がタクシー業界に興味を持つにはどうしたらいいのか、そういった問題意識で取り組んでいるのが弊社のさまざまな企画であり、広報動画なのです。最近では、応募の理由に動画が挙がるようになり、効果も出てきました。

小澤: 「愛想が悪い」など、タクシードライバーにネガティブなイメージを持っている方は少なくありません。弊社の企画や動画を通じて、タクシー業界のイメージを変えていきたいという目的もあります。

それにしても、乗務員の点呼風景といった会社紹介もあれば、広報チームによる社内コンペに向けたゴルフ打ちっ放しまで、硬軟の触れ幅が大きいですね。

和田: 私個人の考え方かもしれませんが、真面目な動画だけだとなかなか採用にはつながらないということがあります。先ほど話にも出ましたが、タクシー業界はまだまだ暗いイメージが残っています。弊社は業界に先駆けて新卒採用を行っていますが、就職の際、選択肢に入れてもらうためにも、あえてユルい動画を持ってきて、まずは三和交通に興味を持ってもらえればと思っています。

動画づくりのコツをうかがってもいいですか?

小関: 動画編集は和田1人で全部行っています。私と小澤は出演のみです。では、動画担当の和田からどうぞ。

和田: 独学でスキルを一つ一つ調べながら身に付けていった感じですね。YouTuber講習会にも1度参加しました。カメラをブレさせないとか、サムネイル(縮小画面)のつくり方、タグのつけ方など基本中の基本を学びました。

コツ?うーん、手探りでやってきたので……。リアルな雰囲気が伝わるようにと、基本「リテイクなしの一発撮り」なところでしょうか。打ち合わせもなければ、よほど咬み咬みで聞き取れないという状況でなければ取り直しもしません。

YouTubeですと5~8分の動画が一番多く視聴されているといわれています。その点、弊社の動画は少々尺が長いのですが、15分以内に収めるようにしています。また、サムネイルについては、付けた方が再生回数が多くなっています。

小澤: 和田から最近「テンションは高めで」とよく言われます。撮影が始まればスイッチオンというのが難しくて、これも心掛けていることの一つです。

和田: 私は普段「ウェーイ」という感じではないのですが、動画では気持ちを上げていきます。ですので、みんなで頑張っていきましょう。

三和交通といえば、ユニークな企画です。その多くが吉川社長の発案だと聞きました。

小関: 8割が吉川のアイデアですね。

和田: 月に1度、広報も参加する新サービスの開発会議を開き、毎月1つは企画のプレスリリースを出そうと取り組んでいます。会議で出たアイデアに対してはあまり否定的な意見は出ないですね。「とりあえずやってみようか」と見切り発車ながら、ありがたいことに、ネットで話題になったり、メディア露出につながったりしています。

10月1日に配信された、埼玉県入間郡三芳町の観光名所を巡る『芋泥棒討伐ツアー』のリリースでは、冒険者のようなコスプレをしたモデルが写っていました。これはお三方とお見受けしましたが。

和田: ご覧になりましたか?吉川自身、相当力を入れている企画です。三芳町の観光ツアーはいいんです。でも、何で私たちがコスプレをするのか、必然性がないと思ったので、ささやかな抵抗をしたのですが……。

小澤: 取材も今のところほとんどありません。ダダ滑りのような状況でして……。

和田: とはいえ、吉川はアイデアマンです。『芋泥棒』もこのままで終わるとは思えません。きっと何か仕掛けてくるはず。

昨年6月に始めた、ドライバーが「SP」「黒子」「忍者」に扮する『SP風TAXI』『忍者でタクシー』は多くのメディアで話題になりました。いずれも小関さんが主導された企画とお聞きしました。

小関: 『忍者』では実際に伊賀(三重県)に忍者修行に行きました。メディアで取りあげられたときに、自己流だと恰好がつかないことに気づき、急遽1泊2日で、後輩1人を連れて行ったんです。後で調べてみると、横浜近郊にも修行の場があったのにはガックリきました。それでも、本場で修行したということに意味があると自分に言い聞かせています(笑)。

修行の様子は動画にアップしていますね。「タモリ倶楽部」で「語りが怪しい」と話題になった広報の「みぞ部長」(溝口孝英氏)による撮影でした。

小関: せっかく修行するのならば動画も撮ろうと、カメラマンとして溝口が同行したのですが……。

和田: 滝修行ですので山に登らざるをえず、動画では溝口の息切れの様子ばかりが目立ってしまい、これまでの動画で一番頭を抱えたものといえば、この忍者修行の動画になります(笑)。

小関: 修行後、社内で1日研修会を開き、忍者の術や心得を伝授しました。「忍者」「SP」「黒子」がセットで各営業所の約30人を養成することができました。どの役でも恥ずかしさが少しでもあるとダメです。その役になりきること、これにつきます。

ラグビーW杯が三和交通さんのおひざ元である横浜で開かれました。『忍者でタクシー』は外国人に大人気だったのでは?

小関: それが、『忍者』は電話予約のみの受け付けでしたので、外国人のお客様にはハードルが高かったようです。不発に終わりました。

小澤: でも、浅草でメディア取材を受けた際に、外国人の方が「ニンジャ」「ニンジャ」とたくさん集まってきて写真を撮っていかれましたよ。

和田: 外国人に向けてのアピールがまだまだです。弊社のホームページも今後、多言語化対応を含め検討課題です。

2020年は東京オリンピックが開催されます。発信の好機が続きますが、最後に意気込みをお聞かせください。

小澤: 五輪イヤーですので、スポーツ関連のサービスを打ち出していけたらと思っています。引き続き、弊社の企画と合わせて三和交通の認知度アップも図っていきたいと考えています。

小関: やはり、訪日外国人への対応ですね。社内では英会話教室を週2回開いています。乗務員の参加は多いのですが、管理職の意識がまだ足りません。全社的な取り組みにしていきたいと思っています。

和田: タクシー業界に限らず、いろんな業界で、オリンピック関連のサービスがリリースされると思います。三和交通ならではの面白企画も現在検討中です。新規顧客獲得のチャンスでもあります。企画だけではなく、タクシーだからこそできるサービス、きめ細かな接客を積極的に発信していきたいですね。

<三和交通> 設立:1965年11月20日
タクシー業界の中で存在感を高める三和交通。2014年、安全にゆっくり走る『タートルタクシー』でグッドデザイン賞特別賞を受賞。翌15年にスタートした人気企画『心霊スポット巡礼ツアー』のメディア露出とともに、大卒新卒のドライバー希望者が急増した。和田さんは「新卒は毎年数人しか採用できなかったのが一気に2ケタになりました。企画タクシーを運転したいという中途入社も増えました」と話す。広報動画を通じ、さらなる認知度アップと人材獲得を狙う。
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