ケーススタディー: タニタ様 (2018年12月号掲載)
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株式会社タニタ
ツイッター運用担当
タニタ公式 氏
「ツイートは広告ではなくコミュニケーション」
担当して8年になりますが、今やライフワークとして習慣化しています。継続は力なりというか、慣れてしまえばいいんです。「休日もツイッターをしないといけない」と思う人がいるかもしれませんが、無理は禁物です。
土日にネタがないとき、私が最近しているのは平日自分がつぶやいたことをリツイートするということです。「笑っていいとも!増刊号」みたいに、平日見ていない人にも伝えることができます。何よりつぶやく私も、これなら負荷がかかりません。
基本的に顔は出していません。分かってしまうとがっかりさせてしまうので(笑)。イメージはフォロワーひとりひとり違いますから。最近、ツイッターの運用を始める企業が増えています。私がメディアに出ていくのは、その担当される方に向けて何か力になれればいいなという気持ちからです。
私のキャリアを簡単に説明すると、私が入社し、営業を担当していたのは現社長の谷田千里が社長に就任したばかりの頃なのですが、当時は社長室という部署で新しいことに取り組もうとしていました。その一つとして、ニコニコ動画にタニタ公式チャンネル「ComeSta Channel」(コメスタチャンネル)を2008年に立ち上げました。
動画はある女性社員が立ち上げて担当していましたが、彼女が営業に異動する時に、その後任に選ばれたのが入社2年目の私だったのです。動画制作については、編集はもちろん、カメラで撮ったことすらありませんでした。ただ「君、若いから大丈夫だろう」と。
どうしたら受けるのか、どんな要素を入れれば見てもらえるのだろうかと考えて、見よう見まねで自分が見たいと思う動画を作り始めました。営業にいる前任者を引っ張り出して、ツンデレっぽい感じのキャラづけをして登場させていました。
動画は当初、制作会社の協力を受けていましたが、私が引き継いだ時はすべて自社で、ということになりました。例の彼女、山下(真弓氏)は私の同期ということもあり、存分に活躍してもらおうと思いまして。そこで、彼女のキャラをツンデレに思いっきり振ったんです❷。
彼女が動画で「量販店やホームセンターで店頭販売します」と告知すると、行列ができるようになりました。社員が商品を紹介して実際にモノを売る。一社員の動画を通じ人を集め、一般の消費者にタニタを知ってもらい、「こんな面白いことをする会社なのか」と身近に感じてもらえたと思います。
堅い、真面目という企業イメージの強いタニタがこうした動画に取り組むことで「ギャップ」や「違和感」が生まれます。そこが人を引き付けるのだということを学んだのが動画でした。
ニコニコ動画はコメントがリアルタイムで流れてくるので、こちらも反応がすぐ分かります。例えば、説明もなく小道具を置いておくと、見ている人は気になりますよね。同じようにツイッターでは、突然脈絡のないつぶやきでも「なになに」と気になるようです。私はツイッターでよく「伏線」を張るということをしますが、これは動画づくりで覚えたことです。
ツイッターを始めたのが11年1月。当時、NHKさんをはじめ、企業がツイッターを活用していたのを見て「誰もやらないのなら自分がやってもいいか」と手を挙げました。何しろ0円ですしね。
「皆様、はじめまして。今日からタニタの公式ツイッターがスタートしました!」とごく普通に始まりました。動画よりもライトに発信できるものという認識はありましたが、今のように盛り上がるとは思いませんでした。
スタート当初のツイートは3つに分かれます。「タニタ」「体重」「フォロワーへのアプロ―チ」というテーマでつぶやいていました。
ある時、「タニタの体組成計が何かおかしい」と投稿されたフォロワーがいて、私が「どうしました」とコンタクトを取りました。分類でいうところの「フォロワーへのアプローチ」ですね。ツイッターで会話してみると、どうやら他社製品であることが判明しましたが、分かる範囲でアドバイスしました。するとフォロワーに「他社のことなのに対応してくれて」とお礼を言われまして。
お客様が困っていらっしゃったので、私としてはごく自然に出てきたコミュニケーションでした。お客様対応についても気軽にできるのがツイッターのいいところかもしれません。
社内では割と自由にやらせてもらっています。みんな関心がないというか……。「おたくのツイッター話題だけど大丈夫」みたいに先方から言われて初めてその存在に気づくみたいです(笑)。
広報や販促はいいんですが、例えば商品企画から「いついつこんな商品が出ます」と話が来ることが少ないんですよ。そこは私の方から取りにいかないといけなくて。いい意味で言えば、ツイッターはあまり、広告広告しないほうがいいのではないかと思っています。何よりやりたいようにできますしね。
そうですね。「タイガー&バニー」については全く知りませんでした。フォロワーに教えてもらっていくうちに「これはいいな」と思うようになりました。
そんな時、サンライズさんが絡んでくれて、「ぜひコラボしましょう」というお話になりました。個人のフォロワーに教えられることは多いです。ユーザーからのニーズをツイッターで知ることができるんです。
シャープさんと絡み始めたのが、12年だったと思います。私が「コラボしてくれるところないかな…ツイッターで」とつぶやいたら、シャープさんから「お友だちからでよければ…よろしくお願いします」と返ってきたのが始まりです。
今考えると、企業アカウント同士のコミュニケーションが成立するのは必然だった気がしますね。というのも、平日の日中という時間帯は個人のフォロワーは働いていらっしゃる方が多いですし、オンライン上では“ヒマ”なんですね。
当時、企業アカウントでありながら柔らかい感じでつぶやく「軟式アカウント」が出始めていましたが、企業アカウント間のコミュニケーションというのはあんまりなかったんです。企業同士の関係性が見えるやり取りがユーザーに新鮮に映ったのだと思います。
今、新しい動きというか、「中の人」がリアルでも集まって「自分たちで何かやろう」と共同でイベントや企画をつくるケースも増えてきました。
いま思い返してみると、なんでプリクラしてるんですかね(笑)。すごく頑張りました。だってプリクラ撮った時、私以外、みな女性でしたから。
これは元ネタがありました。シンガーソングライターの清水翔太さんが、ツイッターで「10万回リツイートされたら一人でプリクラとる」と宣言されて、実際に1人でプリクラを撮影し、大きな反響を呼んだんですね。
15年6月に、私も「5万回RTされたらタニタ公式1人でプリクラ撮ります」とツイートしました。これは5万回RTされなくても、私がプリクラを撮ったとしても誰も傷つかない、私だけが恥ずかしい思いをすればいい企画なので、上司も「別にやればいいじゃない」と反対もせず……。こうした手づくりの企画が受けるということをこの一件で知ってしまいました。
他社さんでもしっかりとしたアカウントは代理店さんが入ったり、いい画像を撮ったり、しっかり予算を取っていらっしゃいますが、私は全部1人でやっていて基本お金も使えません。画像もスマートフォンで撮ったブレブレのもので平気で上げますしね。「中の人」の外出の際に使っている「タニタ公式、出る…!」の画像も実はいただきものです。ほんと手作り感は大事ですよ。
イベントの中継をツイッターでしますよね、これが結構大変です。というのも、「1万歩」では、歩きながらツイートしなければなりません。体と頭をフル回転しながらのツイートは結構難しいんです。
17年2月に、私が呼び掛けてシャープさん、キングジムさん、セガさんの「中の人」で群馬県四万温泉へ旅行しました。ご飯を食べながらどうやってお伝えするのかを見てみると、「中の人」それぞれなんですね。その都度ツイートするのではなく、後でまとめてPCから発信する方もいました。
私はメモは取らずスマホからさっと投稿し、リアルタイムでつぶやいています。「1万歩」では、カシオさんや花王ヘルシアさんが実況してくれたので、私はあまりツイートしませんでした。打ち合わせをしなくても自然と役割分担ができてしまうということも面白いですね。
うーん、どうでしょうか。私たち「中の人」は「広告」というより、コミュニケーションではないかと。私はもともと営業だったこともあり、一般のユーザーと触れ合う機会がありましたが、開発や生産畑の人間からすると、なかなかエンドユーザーとの接点がありません。SNSはそこにいなくても、エンドユーザーに会えるのが一番いいところかもしれません。
国内の話題がどうしても多くなりがちなので、海外案件に取り組んでみたいです。タニタは海外に現地法人がありますが、まだあまり知られていないので、そこをPRできたら面白いですね。後はツイッターをもう少し頑張りたいです。
現在、新規事業の仕事も兼務しています。「タイガー&バニー」の体組成計も通常の体組成計の生産ラインとは別に立てる必要があり、ここ数年こういった新規事業の仕組みづくりに奔走していて、ツイート数が減ってしまいました。もう少しツイッターに時間を使いたいと思っています。
「ツインスティック・プロジェクト」では、ツイッターでの発信に加え、社長のメッセージ動画も作りました。複数のツールを組み合わせた発信という意味では集大成といっていいかもしれませんね。
うーん……。ユーチューバーなどの動画はツイッターより時間がかかりそうですよね。これは身に染みています。テキストで完結するツイッターがいいです。確かに動画は後で編集できますが。動画を作っていた時も他人を撮っていたわけで、自分ではなかったからなぁ。私は、自分があまり好きではないんで(笑)。やっぱりツイッターを一生懸命、頑張ります。