ケーススタディー: LIXILグループ様 (2018年8月号掲載)
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株式会社LIXIL
Public Affairs部門
コミュニケーションズ&CR部
インターナルコミュニケーショ
ンズグループ
グループリーダー
八雲弥生氏
デジタルで従業員つなぎ社内活性化
けでなくワークスタイルも変えていく。
LIXILグループは2011年にトステム、INAX、新日軽、東洋エクステリア、サンウエーブ工業の5社が統合し誕生しました。また13年には米国のアメリカンスタンダード ブランズを、15年にはドイツのグローエを子会社化するなど、積極的にグローバル戦略を推進しています。
現在、7万人超の従業員で構成されるLIXILグループは、約150の国と地域で事業を展開しています。数多くのブランドを傘下に持ち、国内だけでも旧5社の異なる企業文化がありました。
16年6月、CEOに現在の瀬戸(欣哉氏)が就任しました。瀬戸がまず掲げたのは従業員のコミュニケーションやエンゲージメントの向上でした。LIXILでは、各ブランドや部署を超えオープンなコミュニケーションを図りながら、従業員一人一人が、積極的に新しい企業文化づくりに取り組んでいます。
アメリカンスタンダードにはアメリカンスタンダードのイントラがあり、グローエにはグローエのイントラがあるといった具合に、統一されていませんでした。そこで新たにグローバルイントラ「LIXIL LINK」を15年4月に立ち上げました。
日本語・英語の2カ国語版があり、従業員は登録すれば全世界で誰でも利用できます。LIXILでは、このグローバルイントラに投稿できたり、「いいね」を付けたりできるSNS的な機能を付けて運用していました。
『Workplace』は、デジタル技術に関するシステムの導入や運用をサポートするデジタルテクノロジーセンターのセンター長が部内で使用したのが始まりでした。口コミで利用が広がり半年で200人ほどの社内メンバーを集めたことから、「正式に社内でローンチしてはどうか」ということになったのです。
すでに「LIXIL LINK」がSNS的な役割を持っているので、イントラのSNS的な機能と『Workplace』と、どちらがシステムを構築する上で費用対効果が高いのか社内で検討しました。
『Workplace』は、投稿やライブ配信といった社内SNSとしての機能がすべて備わっている汎用性の高いツールです。イントラを今後カスタマイズしていくよりも、初めから完成された『Workplace』を使った方がリーズナブルであると判断し、今年1月に社内へローンチしました。
社内では『Workplace』と、そのほかのSNS、イントラのSNS機能を併用しながら、現在、それぞれの使用率などを検証しています。
従業員の頭越しに「これを使いなさい」というのでなく、社内の納得感を得ることが最優先されるべきだと思います。
会社が選ぶのではなく、従業員が実際に使ってみて、「使い勝手がいいね」と口コミで広がっていく、そういうツールが最後に選ばれます。今のところ、『Workplace』が優勢だと聞いています。
導入に際して社内説明会を開催することはありませんでしたが、トップから「どんどん使ってほしい」というメッセージを出してもらいました。そうすることで上長がまず率先して使うようになりました。
イントラや社内報、社内の業務連絡を通じて登録を呼びかけ、自然発生的に利用者が増えていきました。新しい試みはまずはトップダウン、それからボトムアップで社内に浸透させていくことが大切だとあらためて感じました。
『Workplace』はコミュニケーションの活性化だけではなく、業務の効率化と生産性の向上を目指して取り入れたものですが、業務以外にも趣味のグループで活発に活動しています。
導入直後は、業務外での使用について疑問視する声もありましたが、オンライン上の「タバコ部屋」と考えたらどうでしょうと伝えてきました。息抜きであっても仕事につながるヒントを得たり、部署を超えて関係が深まったりすることの効用があり、否定的な意見に対しては、業務に役立つツールであることを根気強く丁寧に説明しています。今では、大方の理解を得られているのではないかと思っています。
CEOの瀬戸が社内向けに、コスト削減のメッセージと動画を発信したことがきっかけとなり、社内での使用率が上がりました。
従業員からアイデアを募ろうとCEO自らのアカウントで投稿したところ、15,000view、コメントも600件に上りました。瀬戸が主要なコメントに返信したこともあって大きな反響を呼びました。トップの声を直接聞くことができるということは従業員にとって新鮮だったと思います。
現在、『Workplace』で幹部会議をライブ配信していることも効果があるようです。全従業員に公開することで経営の透明性が図れるとともに、一般の従業員と幹部の距離感が縮まったという声を聞きます。
サイネージは12年に導入しました。工場では紙ベースの社内報や業務連絡が主流でした。
タイムリーに本社や営業部署と同じタイミングで情報を伝える方法がないだろうかと、総務が導入していたサイネージの活用方法を、あらためてブランドチーム、人事、社内広報で部門横断的に議論し、新しい運用体制を整えました。
導入当初は総務が管理していましたが、サイネージで流すコンテンツに統一性を持たせようと、ブランドチームと社内広報の共同管理となりました。
グローバルでみれば、米国ではほとんどの生産拠点にサイネージが設置されています。アフリカの工場では識字率や言語の問題もあり、サイネージに代わりラジオを使った社内放送で社内コミュニケーションを図っているといいます。
「英会話」は人事部門よるコンテンツで、英会話のワンポイントレッスンという形で流しています。サイネージは社内で「自分たちの取り組みを知ってもらう」手段の一つとして活用しています。その際、コンテンツのフォントやロゴの色といった細かな点まで、社内広報とブランドチームがブランドガイドラインと照らし合わせてチェックしています。
コンテンツ管理を社内広報も行っていることは、社内ブランディングの一環でもあります。ブランドカラーはオレンジがメインで、オレンジに合ったサブカラーも数色用意し、それぞれ指定のフォントもあります。ただブランドカラーを策定したものの、周知活動が進んでいませんでした。今その徹底を図っているところです。
インターナルブランディングは従業員の一体感を醸成することが目的です。従業員が使いやすいような書式やデザインなど、インターナル向けのブランドガイドの制作についてもブランドチームと協議中です。
弊社では冊子版の社内報「りんく」を年4回発行しています。社内報のデジタル化については、最近「紙の社内報は必要か」というテーマでアンケートを取りました。まだ集計中ですが、経費削減を進める上で「紙の無駄ではないか」という声が根強いのも事実です。
とはいえ、社内報は工場など普段イントラネットを見る機会の少ない従業員にグループの動きや社長メッセージを届ける手段として大変有効です。社内報を持ち帰り、家族に社内の活動や職場の様子を伝える従業員も少なくありません。
個人的には社内報をすべてデジタル化し、紙の社内報をなくす方向ではなく、欲しい部署が気軽に印刷できるようなPDF版を提供する方向に進んでいくのではないかと思います。
デジタルツールを活用しながら、会社に誇りを持って一人一人が高い生産性を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。『Workplace』を通じて、従業員同士のネットワークが広がってきました。
『Workplace』を導入しデジタル化が進んだと安心するのではなく、従業員のデジタルリテラシーをより一層高めていくことが課題です。デジタル技術でつながっていても、組織内の各部署やチームのコミュニケーションが取れなければ、生産性は落ちてしまいます。LIXILでは、フリーアドレスなど執務スペースを固定しない働き方も進め、部門間の壁をなくし風通しのよい職場を目指しています。
インターナルコミュニケーションにおいて、多くの企業が直面しているのは働き方改革にどうつなげるかということではないでしょうか。
働き方改革は人事の施策と思う方も多いかもしれません。確かに、制度をつくるのは人事ですが、制度をどう活用すれば柔軟な働き方が実現できるのか、働き方を変えることが生産性向上につながる――こうした点を組織の隅々にまで浸透させるのは、私たちコミュニケーション部門のミッションです。人事との連携を強化しながら、さらに一歩前へ改革を進めていきたいと考えています。