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ケーススタディー: 第一園芸様 (2018年7月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。
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第一園芸
管理本部 広報部長
香取邦枝氏

第一園芸「BIANCA BARNET BY OASEEDS」、
広報がアクセサリーデザイナーデビュー
生花素材のボタニカルアクセサリー
インターナルブランディングで新商品開発
東京ミッドタウン日比谷にある第一園芸の「ビアンカ バーネット バイ オアシーズ」(以下、ビアンカ)。SNSで拡散し瞬く間に人気商品となったのが、花や葉を使ったアクセサリー。発案者は広報部長の香取邦枝さんだ。香取さんは、広報とアクセサリーデザイナーの“二刀流”をこなす。自然を身にまとうアクセサリーは、部門横断的なインターナルブランディングによって生まれた。組織を活性化させ新しい価値の創造へ。社員を動かすインターナルコミュニケーションとは――。
3月にオープンした新店舗のビアンカでは、ボタニカルアクセサリーが人気です。

ビアンカは、フラワーショップというだけでなく、オフィス環境や商空間における装飾緑化のショールームとしての機能も持っています。日比谷という立地を意識し、当社の環境緑化事業をメインに手掛けているオアシーズ事業部が初めてプロデュースしました。

また、自宅で気軽に花や植物を楽しみたいという方が増えており、そのような「自宅需要」の取り込みにも力を入れています。ギフトだけではなく自分のために花や緑を楽しめるよう、生花や観葉植物に加えて、花や緑に関連した商品の一つとしてボタニカルアクセサリーを販売しています。

どんな経緯でアクセサリーが誕生したのですか?

新商品は開発部門から出てくるのが通常です。それなのに、どうして広報の私がアクセサリーを企画したのかというと、それは部門横断的なインターナルブランディングのプロジェクトから生まれたものだからです。

ある時、プリザーブドフラワー(特殊液に漬け、長期保存できるように加工)の商材を見る機会があり、もともとアクセサリーづくりが趣味なので「端材を活用できないものか」と考えたのがアイデアの発端です。

当社の事業は、個人向けとしてウェディングの会場装花やブーケなどの販売のほか、フラワーショップの運営、法人向けにはお祝い花の販売やオフィスの空間装飾やノベルティーを扱う部門など細分化され、かつ多岐にわたっています。

創業120周年を控え、新しい価値を生み出すためには部門のしがらみを超えた全社員の挑戦が必要と、インターナルブランディング活動が昨年にスタートしました。広報も主体となってインターナルブランディング活動立ち上げに携わりながら、分科会のメンバーとしてもアクセサリーのアイデアを練り上げていきました。

プロジェクトでは、企業理念の「プラスONEの感動を」を具現化するため、全社員から新商品の企画提案や、よりよい働き方の実現などアイデアを募るとともに、全員で企業のビジョンを共有するイベントを昨年9月に開催しました。

翌10月には「WAKUDOKIプロジェクト」を立ち上げ、集まったアイデアを7つの分科会に振り分け、具体的な検討を始めました。その分科会の一つ「商品・サービス プランニングラボ」で提案したのが、オリジナルアクセサリーです。

以後、経営陣への2回のプレゼンを経て、商品化に至りました。たまたま、ビアンカのオープンと重なり、何とか間に合ったという感じですね。

アクセサリーデザイナーを兼業で行うことは大変難しいと思います。会社からのサポートがあったのでしょうか?

一人だけではなく、分科会としてチームで取り組んでいます。分科会活動は、勤務時間の2割を本業務以外に使えるという社内制度があり、「この案件に本気で取り組みたい」と手を挙げた社員を中心に、メンバーが集まるという仕組みになっています。

「商品・サービス プランニングラボ」は私のほか、6人のメンバーと企画から製作まで行っています。アクセサリーの台紙の設計は、空間デザインを業務とするメンバーが担当したりするなど本業務に関係なく、新しいことにチャレンジしています。

また、広報という仕事柄、外出することも多いですし、急な取材対応もあります。他部署からPRの相談を受けることもあるので、毎日決まった時間を、分科会に割けるわけではありません。

両立のコツと言えるかわかりませんが、ある程度時間を決めて、集中して作業するようにしています。また、会社の行き帰りや自宅でアイデアを練ったり、気になるものがあればスマホで写真を撮ったりしていますね。

実物に触ってみると、とても柔らかいことに驚きました。今流行しているレジン(樹脂)を使って固めたアクセサリーとは違いますね。

最近の花や植物を使ったアクセサリーは、樹脂で厚くコーティングしてしまうものがほとんどです。樹脂を塗って固めるレジンのアクセサリーは頑丈で多く流通していますが、それだと自然の風合いがどうしても出ません。

当社のアクセサリーは樹脂を塗っていますが、固めず柔らかくマットな質感が出るように仕上げているのが特長です。強度や質感については、社内で実験も繰り返し行いました。何種類もの試作品をつくり、自由に着けてもらって、女性社員から幅広く意見を聞きました。

春でしたらカスミソウやアジサイといったように、アクセサリーはその季節に合ったお花や葉を使って、それに樹脂を薄く塗って仕上げています。花びら1枚でも本来の形が美しく見えるようなデザインを心掛けています。

今はピアスとイヤリングだけですが、14種類の植物を使っており、しかも同じ植物でもデザインは一つとして同じものはありません。

デリケートな商品ゆえ、商品化には社内でも異論があったそうですね。

当社が扱っている商品は従来から品質管理を徹底し、鮮度・品質を常によい状態に保ってお客様にお届けしています。それは、工業製品ではないものの、一定の形状で提供することに使命感を持っているからです。

生花素材のアクセサリーは、ぶつけたり落としたりすれば壊れてしまうかもしれません。花き業界のパイオニアとして、そのようなデリケートな商品を販売することは課題が多く、ハードルの高いものでした。

しかしながら、本物の花を使ったアクセサリーは、同じ植物を使っていても一つ一つ表情が違います。世界で一つだけしかなくて、しかも自然を気軽に身に着けることができます。この魅力をぜひ伝えたいという想いで、お客様には店頭で実際に触っていただき、デリケートな商品であることを理解してもらった上で購入していただいています。

全国紙で、社内改革や女性の働き方といった視点からアクセサリーが大きく取りあげられました。

オープンイベントには、日頃お付き合いのある雑誌社さんや新聞社さん、そのお知り合いの方も多くお越しいただきました。

当社のPRとしてはお店を見ていただくことがメインでしたが、たまたまアクセサリーを気に入ってくださった漫画家さんやモデルさんがSNSで発信されたことも大きかったですね。

 ある全国紙の記者さんにもオープンイベントのご案内をしたところ、アクセサリーのブランド名が私の名前であることに驚かれ、「面白いですね」と興味をもっていただけました。お店のオープンだけではなかなか記事になりにくいと思いますが、地域面のトップで大きく取りあげていただきました。

アクセサリーがこのような反響を呼ぶことはあまり想定していなかったということでしょうか?

プレスリリースでも一番にお伝えしたかったのは、新ブランドのショップオープンやオアシーズ事業部初のショールームということで、アクセサリーはあくまでも「その中の一つ」という位置づけでした。ただ、生花素材のアクセサリーというもの自体が珍しいこともあって、多くの媒体からお問い合わせをいただきました。こうした反響は全く想定していませんでした。

6月末現在で出荷数は200個を超えました。供給が間に合わない状態で、現在生産体制を見直している最中です。お客様から新商品への期待やワークショップ開催のご要望をいただいており、当社としても全力でお応えしていきたいと思っています。

今後の展開についてお聞きしたいと思います。まず、インターナルブランディングの取り組みについてはいかがですか?

事業部間のコラボレーションや社員同士をつなぐことで新しいことができないかを常に検討しています。これも分科会活動の一つになりますが、インナーコミュニケーションサイト(社内ポータルサイト)を7月に立ち上げました。

これまでも各部門から発信された情報を共有してきましたが、今回、新たに編集部を設けて社内の発信に力を入れていきたいと思っています。週に2回から3回は更新していきたいですね。その中でそれぞれの分科会の活動報告もしていきたいですし、経営陣からのメッセージや社長ブログも計画しています。

分科会活動ではそのほかにも、多くの種が芽を出して、これから実りを迎えます。まず、社内でそうした成果を伝えていくと同時に、今一度、社内外に向けて企業理念の再浸透を図っていきます。

最後に、香取さんがアクセサリーで実現したいことや意気込みについてお聞かせください。

もともと、石や金属を使ったアクセサリーづくりが趣味だとはいえ、素材として難しい生花を使うアクセサリーは、私にとっても大きなチャレンジでした。インターナルブランディングプロジェクトがなければ、アクセサリーは世に出なかったかもしれません。誕生の経緯も発売後の人気も本当に“偶然の賜物”だと感謝しています。

今後はネックレスやブローチなどバリエーションを増やしながら、その季節に合った商品展開を考えています。「自然を気軽に身に着けられるアクセサリー」というコンセプトを深化させ、メンバーとともに挑戦していくという姿勢で取り組んでいきたいと思っています。

<第一園芸株式会社> 創業:1898年
香取さんは、販売促進、商品開発を経て2年前から広報に携わる。今年4月1日付で広報部長に就任した。「アクセサリーは男性受けを全く狙っていません(笑)」と香取さん。想定するシーンは女子会で、「それ何?」「本物のお花だよ」と会話が盛り上がること請け合いだ。香取さんは「一つとして同じものはないので、絶対、他人とかぶりません」と話す。価格はお求めやすい4000円代(税込)から。