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ケーススタディー: ミズノ様 (2018年6月号掲載)

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ミズノ
コーポレートコミュニケーション部
メディアコミュニケーション課
アシスタントマネジャー
山本美香子氏

ミズノ初、ニット素材の『WAVEKNIT R1』
体験型メディアイベントでSNS拡散
新作ランニングシューズを最大限PR
3月1日、皇居近くで行われた「夜ラン」に参加したのは、ミズノの新作ランニングシューズを履いたメディア関係者やSNSに影響力を持つインフルエンサーたち。ミズノ初のニット素材を使った『WAVEKNIT R1』の発表イベントだ。ニット素材のシューズで後発だった同社は、発表後に試走会を組み込み、新作シューズの魅力を最大限PRした。「百聞は一見に如かず、百見は一体験に敵わず」――。SNSを中心にリアルな体験記事が相次いだ。
初めに『WAVEKNIT R1』の発表会を体験型メディアイベントにした理由から教えてください。

『WAVEKNIT R1』(以下、『WAVEKNIT』)はミズノ初となるニット素材を使ったランニングシューズです。

一般的にニット素材はデザイン性に優れていますが、フィット性を良くするために柔らかくし過ぎてホールド性が足りなかったり、ホールド性を出すために硬い素材を使ってフィット性が損なわれていることが課題でした。靴下を履いているようなフィット性と、ほどよいホールド性を両立させたのが『WAVEKNIT』です。

ただ、ニット素材のシューズでは当社は後発で、他社との違いを打ち出す必要がありました。そのため、記者さんやインフルエンサーさんらが試し履きできる体験型のランイベントを企画しました。

実は、メディア向けのランニングイベントは初めてではありません。一昨年の『WAVE RIDER』20周年をはじめ、昨年6月の『WAVE SHADOW』でも行いました。ここ数年、メディアの方のランニング熱が高まっているのをひしひしと感じています。

『WAVE SHADOW』の発表会では小雨にもかかわらず、メディア関係者の皆さんが楽しんで走ってくださったのが印象的でした。この経験からも今回のイベントでは体験ランをメインに据えて、新作シューズをアピールしようと考えたのです。

「夜ラン」にしたのはどうしてですか?

イベントは通常、昼間に行うことが多いと思いますが、「夜ラン」にしたのは、日差しがなく走りやすいということと、一般の方であるインフルエンサーさんにも多数参加していただきたかったので、「夜」の設定にしました。

専門性の強いゴルフや野球と比べて、よりライフスタイルに近いランニングでは、インフルエンサーさんやフリーライターさんの口コミ力は大変大きく、まず、こういった方々に『WAVEKNIT』の魅力をお伝えしたいと考えました。

幻冬舎さんの雑誌から生まれた「GINGERランチーム」のインフルエンサーさんなどにご協力をいただき、インスタグラムやブログで発信していただきました。

ネットを中心に多くの露出がありました。

日ごろからお付き合いのあるメディアの方に広くお声掛けし、来場者は雑誌やウェブを中心に、新聞など約100人に上りました。

ウェブ媒体は比較的、発表直後というタイミングでの記事化が多かったように思いますが、朝日新聞さんはイベント後に再度、大阪で取材され記事にしていただきました(3月23日経済面「ミズノのシューズ、おしゃれに加速」)。今回の発表イベントがきっかけとなり、取材を重ねていただいたということであれば、広報冥利に尽きますね。

取りあげていただいた媒体は5月22日現在で、新聞(業界紙含む)15、ウェブ45、雑誌6になります。露出数にはカウントしていませんが、「GINGERランチーム」の皆さんをはじめ、フリーライターの方にSNSなどで紹介していただいたことが効果的だったと思っています。「フィット感が高く、走りやすい」「普段でも履けるようなデザイン」など、ありがたいお言葉をいただきました。

試走会のメニューは、シューズの特性に合わせて変えているそうですね。

昨年に行った『WAVE SHADOW』の体験ランではジョギングに短距離走も織り交ぜながら、履き心地を確かめてもらいました。『WAVE SHADOW』は、足の裏全体で着地する「ミッドフット走法」を身に付けるためのトレーニングに適しており、そこを体感していただくために、短い距離も走っていただきました。

『WAVEKNIT』の場合は、ニットの履き心地と、ニットでもしっかり走れるということを体感していただくことが目的なので、ジョギングのみのメニューになりました。試走は、発表会場からランニングステーション「ランキューブ」への移動を含めると約1時間ほどになりました。

発表会当日まで、商品内容を伏せての誘致になりました。

商品についての情報を当日までお出ししなかったので、どのくらい集まってくださるか不安でした。案内状に「ニット素材を身につけてご参加ください」というような一文を入れたこともあり、事前にお問い合わせをいただくなど、発表イベントに関心を持ってもらうことができたと思います。

ランニングに関する発表会は山ほどあると思いますが、その中で、記者さんに「聞いてみよう」「行ってみよう」と思ってもらえるような工夫や仕掛けが求められています。

イベントは社員のみで企画・運営する点にこだわったとお聞きしました。

メディア誘致をすべて外部に任せてしまうと、記者の方との「顔の見える」コミュニケーションがとりにくくなってしまうのではないかと思います。「この商品を取りあげてほしい」という思いを直接お伝えすることが大切です。私は、これまで培ってきた人脈を活かすという意味でも、自分たちで取材誘致をしたいという思いが強いですね。

試走前には、ランニングコーチの指導もありました。

最近、気になっていたのがシューズの紐の結び方です。例えば、前足部はきつく締めすぎないように中足部から徐々に締め込んでいきます。皆さん、あまりご存知ではありませんが、紐の結び方一つでフィット感が全く違うのです。

『WAVEKNIT』では、フィット感をアピールしているので、いい機会だと思い、当社のコーチからアドバイスさせていただきました。今後も発表会ではこれまでの経験と、気づきをアイデアにして盛り込めたらと思っています。

今回のイベントで工夫された点はどこでしょうか?

『WAVEKNIT』はグローバルモデルとして、世界各国で同時販売しました。発表会では、国内の企画担当による商品プレゼンだけでなく、グローバルフットウエアプロダクト本部の副本部長から当社のビジネスの説明も行いました。

試走後には初めての試みとして懇親会をセッティングしました。記者の方々に、登壇者である役員や担当者とコミュニケーションを深めていただきながら、時間をかけてご説明することができ、商品の感想もすぐにお聞きすることができました。

また、会場にもこだわりました。『WAVEKNIT』はおしゃれなシューズで、そのイメージに合わせ、カフェで行いました。『WAVEKNIT』の世界観を感じていただけるように、商品イメージの青色を基調に会場を装飾したり、お料理にもブルーの小旗を立てたりするなど、細かな点にまで気を配りました。

発表後の手応えや反省などはありますか?

今回、会場の都合やインフルエンサーの方の誘致に注力したこともあって、発表会と試走会を分けずに夕方から一遍に行いました。これは反省になりますが、お忙しいメディアの皆さんのスケジュールを考え、昼間に事業説明などのビジネス寄りの内容をお伝えし、夜は簡単な商品説明を行った後に試走会というように、2部制に分けた方がよかったかもしれません。

当社の事業について、あるいは商品そのものについて、どこを拾われるのかは様々です。発表会は、メディアの関心事に合わせた内容づくりが第一だと思います。

ユーザーの方々からは、広告・宣伝よりもメディアの記事の方が客観性があり、信頼できるという声をよく聞きます。記事にしていただければ、幅広い層に向けて商品をお伝えし、浸透させることができます。メディアへの働き掛けは引き続き広報の最重要課題です。

ランニング熱が高まるなか、ミズノのランニングシューズをどうアピールしていきますか?

大阪での広報時代、一度ランニングを担当したことがありますが、現在のランニングブームを見ると隔世の感がありますね。かつては大会にエントリーしようというランナーが多かったように思いますが、今は健康やライフスタイルという側面から走る方が増え、ランニング人口のすそ野が広がっています。

当社のシューズはトップランナー向けというイメージが強いのですが、まさに「GINGERランチーム」のような一般のランナーに向けて、どうアピールしていくかが課題となっています。そういった意味で『WAVEKNIT』は戦略的商品の一つに位置づけており、初心者にも履きやすいシューズの魅力をさらにお伝えしていきたいと思っています。

<ミズノ株式会社> 創業:1906年4月1日
発表会に加え、新商品の情報提供で欠かせないのがプレスリリースだ。ゴルフなどでは、リリースを2種類作成することがあるという。「専門誌には細かいスペックまで記載したリリース、東商記者クラブの会員様にはそこまで詳しく書かずに簡潔なリリースを配信することがあります。ランニングシューズは皆さんに身近な商品なので、『WAVEKNIT』では統合したリリースになりました。リリースと発表会を通じて、しっかりと商品についてお伝えできたのではないかと思っています」と、山本さんは手応えを感じている様子だ。