早朝新聞クリッピング 広報効果測定・報道分析

(社)日本パブリックリレーションズ協会加盟

株式会社デスクワン お問い合わせ

ケーススタディー: 大塚食品様 (2018年5月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。
※文章や画像の転載・転用はご遠慮ください。

      大塚食品
      製品部 ボンカレー担当
      アシスタントプロダクト
      マネージャー(APM)
      中島千旭氏

大塚食品『ボンカレー』、“お母さんの味”を進化させ100年ブランドへ
異業種コラボ活発、開発秘話にも光
発売50周年、「懐かしくも新しい」
レトルトカレーの元祖『ボンカレー』。カレーのみならず、世界で初めての市販用レトルト食品だ。取り扱い店舗へのホーロー看板の設置や、有名人を起用したテレビCMなど広告・宣伝においてもパイオニアである。発売50周年を迎えた2018年、大塚食品は100年ブランドを目指し、“お母さんの味”を追求し進化させている。市販用のレトルトカレーの購入額がルー市場を上回るなど、ますます過熱するレトルトカレー市場にあって、
「懐かしくも新しい」元祖の看板は揺るがない。
『ボンカレー』が発売から50周年を迎え、その開発秘話や広告・宣伝手法にも光が当たっています。まず、大塚食品と『ボンカレー』の成り立ちについて教えてください。

世界初の市販用レトルトカレーとして『ボンカレー』が誕生したのは1968年で、開発は64年にさかのぼります。カレー粉や即席固形カレーを製造販売していた関西の会社を大塚グループが引き継いだのが大塚食品の始まりです。

当時、カレーといえばカレー粉や缶詰での販売が主流。既に国民食として競争が激しく、「他社と同じものを作っても生き残れない」と考えていました。

そんな時、アメリカの雑誌「モダン・パッケージ」に掲載されていた記事が開発者の目に留まりました。ソーセージの真空パックの話題で、缶詰に変わる軍用の携帯食として研究されていたものでした。この軽量で保存が効く技術とカレーを組み合わせたら何か作れないかと考えた結果、お湯で温めて食べるカレーを思いついたそうです。

また当時、袋に入れたカレーの量り売りが市場などで行われていたこともヒントになったようです。

コンセプトは「一人前でお湯で温めて食べられるカレー、誰でも失敗しないカレー」。そして美味しくて、簡単・便利で、常温で長期保存が可能であること、保存料を使わないことが絶対条件でした。

その時、唯一グループで持っていたのが点滴液の殺菌技術で、これを応用してレトルト釜を作るなど、様々な工夫で完成に漕ぎつけました。『ボンカレー』に至るまでの先輩方の苦労には頭が下がる思いです。

発売50周年を迎え、異業種コラボに積極的ですね。

1+1が2でなく、3になるコラボは大変効果的です。これまでご愛顧いただいた皆様への感謝をお伝えし、この先100年、「ボンカレーブランド」が愛され、若い世代にも認知を広げていくためにも、普段リーチできない層にもPRしていきたいと思っています。

今年30周年を迎えるエースコックさんの『スーパーカップ』とコラボ商品を1月に発売しました。また、カレーにはお米と野菜が必須です。日本の農業を応援しようと、今年田植え機誕生50周年を迎えるクボタさんと共同キャンペーンを展開しています。

2月の朝日新聞朝刊にブラック・ジャックとのコラボ全面広告が掲載され話題になりました。

『ボンカレー』が50周年、ブラック・ジャックが45周年と、双方が周年を迎えるということでコラボレーション広告を作り、『ボンカレー』の誕生日に当たる2月12日、朝日新聞朝刊に全面広告を掲載し、渋谷駅等で号外広告を配布しました。

「ブラック・ジャック」の中に「ボンカレーはどうつくってもうまいのだ」という台詞が出てくるのはよく知られていますが、朝日新聞社の方にその話をしたところ、朝日新聞さんと手塚プロダクションさんとがお付き合いがあるということで企画が進みました。弊社にとって「ついに念願がかなった」コラボになりました。

50年目の商品提案や周年イベントも活発です。

レトルトカレーを出すと「手抜きをした」「罪悪感を感じる」というお母さん方の声をよく聞きます。『ボンカレー GRAN』は、自然が育んだ食材を贅沢に使ったワンランク上のカレーで、素材の持つ健康感や食感を味わえます。パッケージもこれまでとは全く違う、50年目の新提案としてチャレンジしました。

4月には千鳥ヶ淵公園でクラシックの調べを聞きながら、『GRAN』を味わうイベント、グランピングお花見を開催しました。

今年はメモリアルイヤーなので、1年を通して様々なイベントを組み込んでいます。同じく4月には西武鉄道さんにご協力いただき、レストラン列車を貸し切り、結婚50年を迎えられたご夫婦とそのご家族を3組お招きし金婚式を開催しました。これは秩父線が来年開業50周年ということで、50周年のバトンを渡したいということと、親子三世代の家族のバトンをつなぐという意味も込めて企画しました。

観光電車の中で、「元祖」の味をバージョンアップした『ボンカレー50』を有田焼の器に盛り付けて提供させていただきました。50年歩んでこられたご夫婦の姿に『ボンカレー』の歩みを重ねて、私たちもこれまでの感謝を皆様にお伝えできたと思います。

今や認知度9割を超える『ボンカレー』ですが、発売後の世間の反応はいかがでしたか?

発売当時は、半透明パウチに入っていために、光と酸素によって風味が失われてしまい、賞味期限は夏場で2カ月、冬場で3カ月でした。当時としては常温でこれだけ保つこと自体、画期的なことでしたが、「長期保存ができるのは防腐剤が入っているからではないか」といった誤解も多かったといいます。

1年後には、アルミ箔を使用したパウチに変わり、長期保存が可能になりましたが、当時はレトルト食品を知らない方がほとんどで、パウチの中にはルーしか入っておらず、別に野菜を買って煮込んで食べるものと、勘違いをされた方もいたそうです。

なかなか進まない商品理解を打開するために登場したのが、あのアイテムだったのですね。

発売当時、『ボンカレー』がどういう商品なのかを分かりやすくアピールするために用意したのが「牛肉 野菜入り」と書かれた、あのホーロー看板だったのです。

当時20人ほどいた営業マンが店先で実演販売を繰り返し、『ボンカレー』を置いてくださるというお店の軒下に、持参した金鎚で看板を一つ一つ打ち付けていったそうです。1枚の重さが約2キロのホーロー看板を15枚ほど自転車に載せて、1日60件以上も回ったとか……。

そして誰もが知る『ボンカレー』へと認知度アップに貢献したのが、テレビCMでした。いうなれば『ボンカレー』はマス広告の象徴のような存在です。

「お母さんの手作りカレー」というコンセプトは発売当初から変えていません。

一番初めのテレビCMは、お母さんが出かけて留守を任されたおじいさんとお孫さんが『ボンカレー』を食べて、「嫁の手作りよりも美味いな」と感心するといったものでした。お母さんがいなくても小さい子どもでも誰でも作れて、しかも美味しいということを訴求したかったのです。

72年には笑福亭仁鶴さんが出演した、時代劇「子連れ狼」のパロディーCMが一世を風靡しました。「3分間待つのだぞ」という台詞が流行し、『ボンカレー』の認知は、このCMで一気に浸透して、その翌年には年間販売数量1億食を達成しました。

『ボンカレーゴールド』が「箱ごと電子レンジ」に対応したのを機に、CMから撤退しました。消費者とのコミュニケーションはどう変わったのでしょうか?

2013年に、「箱ごと電子レンジ」が可能になった『ボンカレーゴールド』を発売しました。その際にも、CMを打ったのですが、せっかくの機能があまり認知されませんでした。15〜30秒では伝えきれないことが多かったのです。

そこで原点に返り、営業マンがスーパーの店頭で電子レンジを使ってデモンストレーションを行うと、「しばらくぶりに食べたけど随分おいしくなった」といった声が多く聞かれました。電子レンジで調理することで、簡単・便利なだけでなく、湯せん特有のにおいが消え、スパイスが香り立つようになり、おいしくなるのです。

とはいえ、「箱ごと電子レンジ」機能の認知率は約5割程度にとどまっています。この点は、まだまだお伝えしきれていません。そこで、楽しんでもらいながら機能を知っていただけるキャンペーンを5月から6月末まで展開しています(『ボンカレーゴールド』『ボンカレーネオ』対象)。

シールをレンジで箱ごと温めることで、示温インキで隠されていた二次元バーコードが浮き出ます。それをスマートフォンで読み取り、限定ムービーが視聴できるという仕組みです。お湯で温めても残念ながらバーコードは3分たっても出てきません(笑)。

『ボンカレー』で今、注力している訴求ポイントは?

力を入れているのは大きく3点、パッケージにも明記している「保存料・合成着色料不使用」が1つ。2番目は先ほどお話した「箱ごと電子レンジ」機能。3番目は具材の「国産野菜使用」です。

16年に、『ボンカレーゴールド』の具材に使用する野菜をすべて国産に切り替え、今では『ボンカレー』の主要商品すべてが「国産野菜使用」になりました。レトルト食品のパイオニアとして、安心・安全は何物にも代えられませんし、引き続き商品を進化させていくことは私たちの使命でもあります。

「100年ブランド」を目指し、『ボンカレー』をどのようにPRしていきたいですか?

発売50周年を迎え、多くの取材をいただき、あらためて『ボンカレー』のブランド力の大きさを感じています。

今後50年を見すえたキーワードは、健康需要への対応です。カロリーや塩分をかなり抑えた『マイサイズ いいね!プラス』を16年からドラッグストアや調剤薬局向けに販売し、現在好調に推移しています。

高齢の方々、特に調理をあまりしない男性にも、火を使わなくて済み、常温保存ができる『ボンカレー』はもともと「安心・安全」な食品であるといえます。高齢化社会に優しいレトルト商品の可能性をさらにお伝えしていきたいと考えています。

おかげさまで『ボンカレー』に対する認知率は9割を超えていますが、かつて『ボンカレー』に親しんでいたけど今はご無沙汰になってしまった、そういった層を掘り起こしたいですね。

『ボンカレー50』には若い方から「新鮮」「ほっとする味」と、こちらが想定していなかった感想も寄せられています。公式ページで『ボンカレー』を使ったアレンジレシピ「ぼんごはん」を提供しています。世代を問わず、ご家庭でカレーに触れる機会がもっともっと増えていくようなご提案をしていきたいと思っています。

<大塚食品株式会社> 設立:1955年5月19日
徳島工場駐在の研究員を経て、現在は製品部で『ボンカレー』のマーケティングを担当する中島さん。「どうやって商品をアウトプットしていくのか、まだまだ勉強中です。グランピングという豪華な場面を想定した『GRAN』のイベントのように、利用シーンが浮かぶような提案を心掛けています」。