ケーススタディー: 朝日新聞社様 (2018年3月号掲載)
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朝日新聞社
メディアビジネス局営業推進部
「広告朝日」編集長
平井信太郎氏(写真右)
メディアビジネス局
メディアビジネス第2部
小林篤弘氏
メディアの立場から―朝日新聞社メディアビジネス局
グループで企業の課題解決を目指す
平井: 新聞は習慣性のあるメディアで、同じ読者のもとに毎日届きます。中でもリンテックさんが出稿されている一面は接触率が高いので、定期的に出稿すれば企業ブランディング、企業メッセージの浸透効果がより高まると思います。
小スペースなので、情報を盛り込みすぎるとメッセージ性が散漫になってしまうこともありますが、メッセージをシンプルにし、クリエーティブを工夫することで、読者の目を引き付けています。
企業ではありませんが、以前、国士舘大学さんが朝刊社会面での小型広告を繰り返し出稿し注目を集めた事例や、東京都美術館で「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」の開催に合わせて、同じく朝刊に掲載された小型のカウントダウン広告も、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」がつぶやくユニークなクリエーティブで話題になりました。
平井: お話に出ましたリンテックさんは「天声人語左」と呼ぶスペースをご利用いただいていますが、こちらは2008年3月にこれまでの15段から12段に紙面リニューアルされた際に生まれた広告枠です。
ご存知の通り、「天声人語」は朝日の看板コラムですので、その横の広告は注目度の高いスペースになり、色々なクライアント様にご利用いただいています。
近年、新しい広告スペースへの要望も増えており、紙面改革ごとに新しい商品ができることが多くなっています。平昌五輪期間中にも一面で特殊変形広告を掲載しました。
朝刊一面の下にある本の広告欄を「サンヤツ」と呼んでいますが――縦が3段分あって横に8分割されているのがその名の由来で、この形式は朝日新聞社が1949年より始めて定着しました――この「サンヤツ」の一部と「天声人語」左と右のスペースと合わせて、「天声人語」横から紙面最下段まで伸ばした特殊変形広告を今回初めて作りました。
平井: 新聞広告のスペースの大小で変化するのは、広告の接触率と提供情報量です。大きいスペースの方が注目度が高くなり、提供できる情報量も大きくなるので、より多くの読者の目を引きつけます。
全15段広告では企業のブランディング広告、各業種の商品告知のほか、通信販売、意見広告、イベントやシンポジウムの採録などで使われることが多いです。
全15段を使ったブランディングとしては、エールフランス航空さんが14年に展開したシリーズも注目を集めました。昔の名作映画のポスターをほうふつとさせるような洗練されたクリエーティブは多くの読者の心をとらえたのではないでしょうか。
また、全15段よりも大きい見開き2ページにわたるのが二連版全30段広告です。紙面をワイドに使い、圧倒的なビジュアルで訴求力があります。
クボタさんが17年から展開するシリーズ広告は、世界各地で取り組む事業を紹介し大きな反響を呼びました。毎回メッセージ性の高いユニークなクリエーティブで話題を呼ぶ宝島社さんの企業広告や、元素周期表を鮮やかなビジュアルで表現した東京エレクトロンさんの広告特集など二連版ならではの展開も可能です。
平井: 新聞が発火点となってSNSで爆発的に拡散するケースも珍しくなくなりました。新聞は広く深く浸透するメディアですので、企業イメージを上げるブランディングへの活用もある一方で、世論を喚起する力もあります。
新聞を開けば、もともと関心のないテーマでも自然と目に入ってきますので、新たな気づきが生まれます。
小林: 調査の仕様が統一されて、第三者機関が管理・実査を行っているのでデータに信頼性、客観性があると、活用される企業も増えています。
私は提案段階だけではなく、掲載後の広告効果のフィードバック、PDCA支援の一環としても使うことが多いですね。広告評価はもちろん、重宝するのがフリーアンサーです。
平井: 読者からのフリーアンサー、つまり生の声が得られます。読者からのご意見は、関連部署と共有して今後の提案や企画立案などに役立てています。
それまで各紙が独自に行っていた広告接触率調査や反響調査が、全国紙や地方紙などが参加し、共通プラットフォームになったことで、より客観的なデータとして広告主から受け止められるようになったと思います。
広告主にとっても新聞広告を出して終わりでなく、掲載前と後で企業の好感度や認知度がどのくらい上がったのか、効果を測定できるという意味で大変有効だと考えます。
小林: 日々企業を回っていて、個人的に思うのは、日本の企業のほとんどがBtoB企業ではないかということです。今、そのBtoB企業による一般の方に向けたコミュニケーション活動が活発化してきており、企業の目指すところや意識が変わってきたという印象を持っています。
機械メーカーのナブテスコさんの広告事例(13年〜)が参考になるかと思います。BtoB企業は皆さん自社技術に誇りを持っていらっしゃいます。ナブテスコさんの製品は、産業用ロボットの関節として使われる精密減速機が世界シェアトップを誇り、鉄道用ブレーキシステム、船舶の制御装置など様々な事業分野でも、多くの市場シェアを獲得しています。
それを一般紙で堅苦しい内容で紹介しても一般の読者に届きません。そこで提案したのが漫画を使った発信でした。漫画家の見ル野栄司さんにナブテスコの工場や拠点を実際に取材していただき広告用に描き下ろしてもらいました。
例えば「海の日」など記念日にちなんだ製品や技術を徹底した読者目線で分かりやすく伝え、学校での教材としても高い評価を受けています。
BtoB企業に対して私たちは今、アプローチを強めています。多くの企業の課題はリクルーティングです。いくら優れた技術があっても継承されなければ意味がありません。採用広報を行うにしても知名度が低く、人材が集まらないという共通の課題を抱えています。
朝日新聞では、小型や全5段、全15段など様々な広告を取り揃えています。それらを使って「就活中の学生さんやその親御さん、幅広い層に向けて企業の認知度を上げていきましょう」という提案に、耳を傾けてくれる企業が増えてきました。
平井: その年の12月中旬に3人のSMAPファンから弊社に届いた1本のメールから始まりました。「SMAPを応援するメッセージを全国紙で届けたい」という思いに、朝日新聞社として提案したのが、当社が取り組んでいるクラウドファンディング「A-port」です。
この仕組みを活用し、わずか1週間で1万3103人の支援が集まりました。掲載日には各地で朝日新聞が完売になるコンビニも出たほか、他紙やテレビをはじめSNSでも取りあげられ、過去にないほどの反響を呼びました。
平井: 広告局時代から「新聞のスペースを売る」というだけでなく、広告主の様々な課題に向き合ってきました。私たちの強みは、新聞や出版、電波、イベントやインターネットといった各種メディア、全国に張りめぐらせた販売網などを通じて、情報やサービスを届けることができる、という点にあります。
また、最近では、配布エリアを選択し、ターゲットに応じた情報が提供できるエリア広告や朝日新聞出版の『AERAムック』にも注目が集まっています。実に多彩なこれらのメディアを活用しながら、イベントを実施したりエリア広告を打ったりするなどクロスメディア提案が可能になっています。
繰り返しになりますが、紙の新聞だけでも数多くのバリエーションがあり、朝日新聞デジタルをはじめとしてネットコンテンツも充実しています。
環境問題や社会貢献などの取り組みを、新聞を使って訴求したいというニーズはもちろん、企業の抱える様々な課題に対して朝日新聞社がリソースを提供することにより、課題解決のサポートができるのではないかと考えています。ぜひ、朝日新聞社をご活用いただきたいと思っています。