ケーススタディー: リンテック様 (2018年2月号掲載)
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リンテック
広報・IR室 室長代理
吉田知人氏(写真右)
広報・IR室
野中千嘉氏
出稿側の立場から――リンテック 広報・IR室
多彩な事業を様々な切り口で訴求
吉田: 朝日新聞朝刊には月2回、コラム「天声人語」横のスペースに突き出し広告(※)を出稿しています。ここ数年はコラムの左側のみに掲載し、右側に比べて広告のサイズが大きいためレイアウトがしやすくなりました。
当社はシール・ラベル用の粘着紙・粘着フィルムをはじめとする粘着製品の総合メーカーです。そのほか特殊紙なども手掛けています。当社の製品は私たちの身近なところで使われていますが、その多くが中間素材で、しかも事業領域が多岐にわたるため、一般の方がどんな会社かイメージすることが難しいと思います。どうすれば当社のことを分かりやすくお伝えできるかと常に考えています。
新聞広告では、暮らしに密着している製品をつくる会社だということを一貫して訴求しています。
吉田: 以前は、経済紙を中心に全5段や全3段広告を定期的に出稿していました。大きいと目立つだろうと思いましたが、中面に展開していたこともあり、意外と「気づかなかった」「目立たない」と言われることの方が多かったですね。
突き出しとの併用をしばらく続けましたが、2011年に全3段・全5段をやめ、閲覧率の高い一面などの突き出し一本に絞りました。コストパフォーマンスのよい小型広告を頻繁に出稿した方がより効果的だと考えたからです。
吉田: これまではテキスト・イラストベースで展開してきましたが、16年度から新たな試みとして、タレントの小山莉奈さんを起用しています。暮らしに身近な製品を紹介しているため、より親しみやすさを感じていただけていると思います。
企業広告では、まず読者の目に入ってくるような工夫が求められます。16、17年度と続けて、小山さんが当社製品を紹介するシリーズを展開していますが、17年度は社名を大きく配したレイアウトにしたのが前年度と違う点です。製品の認知と合わせて、社名を今一度浸透させたいという狙いがあります。
野中: また、17年度に取り組んだことの一つとして、当社製品の採用実績を広告でご紹介しました電車などの車体を彩る広告用シートは富士急行さんからご了承いただき、実績写真を初めて広告に掲載しました。
また、はがすと「開封済」という文字が浮き出るセキュリティーラベルも、ただ製品を紹介するのではなく、皆さんに親しまれている佐久間製菓さんの『サクマ式ドロップス』の写真を使用させていただきました。当社製品の活用例をひと目で知ることができ、なおかつ皆さんの安心を支えていることもアピールできたと思います。
吉田: いつも同じ味付けにならないよう違った切り口で、と考えますが、12カ月続けられるかどうかが悩みどころです。
15年度は、恋する女性の気持ちと製品の特性を合わせたシリーズで毎月悩みました(笑)。このシリーズではホワイトスペースを活かし、1年間を通してストーリー性のあるコピーを展開するとともにサラリーマンの皆さんに見てもらえるようなシリーズにしました。
野中: 同じ製品を取りあげるにしても、その年のテーマに合ったコピーで製品を訴求しています。例えば同じ封筒用紙でも16年度は「大好きにつながっている」ですが、17年度は「雨の日も水をはじいて中身を守る」というダイレクトな性能の訴求に変えています。
後ほどお話しするウェブサイトを含めて、広報・IR室と広告制作会社で月に2回くらい打ち合わせをしています。ウェブサイトでは新聞広告と連動して、製品の詳細を月ごとに紹介しています。新聞広告・ウェブサイトともに制作会社との綿密な連携が欠かせません。
野中: 新聞広告をご覧になった方がすぐ分かるように、当社のコーポレートサイトのトップページに「新聞広告シリーズ展開中」という大きなバナーを掲載しています。
バナーをクリックすれば「DREAM FACTORY」に飛び、その月の新聞広告で紹介しきれなかった製品の詳細などをご覧いただけるようになっています。
「DREAM FACTORY」は10年6月に開設し、16年4月にデザインリニューアルを行いました。コーポレートサイトでももちろん製品の紹介はしていますが、「DREAM FACTORY」ではイラストや写真、動画などを使って、一般の方にもより分かりやすく解説しています。
研究員の開発ストーリーをはじめ、シールとラベルの歴史や違いなど「豆知識」について学べるコーナーも設けており、コンテンツは充実してきました。
最近では動画配信にも力を入れ、小山さんのメーキングムービーや製品体験ムービーも制作しました。
吉田: 株主・投資家向け広報誌「WAVE」で定期的に読者アンケートを取っています。「当社新聞広告をご覧になったことがありますか?」という質問に対して、現在では「見たことがある」が約50%となっています。
当社の製造拠点のある地域には、OB・OGを含め多くの株主の方がおりますので、IR活動の一環として、またインナー効果を高める意味で、その地域の地方紙にも広告を出稿しています。
小型広告に切り替え、地方紙にも出稿先を広げることで、当社の広告に触れる回数が増えて、認知も少しずつ上がってきたのではないかと思っています。
吉田: 企業ブランディングは一朝一夕にできるものではありません。当社は地道に「リンテックはこんな会社です」と日頃から訴えていきたいと考えています。
限られた予算の中では、単発の派手なPRではなく、リンテックという社名を皆さんに知っていただくための継続したPRが何よりも必要です。新聞広告を出して、それを読者の方が楽しみにしてくださる、こうしたコミュニケーションを今後も大事にしていきたいですね。
吉田: 今あるマス広告の中で考えた場合、新聞とウェブサイトがまず挙がります。
新聞離れが進んだという話も聞きますが、新聞は「一家に一紙」という、多くの方が手に取る頻度の高いメディアであることに変わりはないと思います。限定的ですが保存性もありますし、企業が継続的にPRする上で、今あるメディアの中では有用な媒体だと考えています。
株主の方をはじめ、当社の株に関心のある方や学生など幅広い層に向けて、一番効果的に訴求できるのは、現在のところ、新聞以外に見当たりません。
昨年の「ふれあいコンサート」。地元の大学生も出演し、大盛況だった
吉田: 「ふれあいコンサート」は、本社のある板橋区に在住の障がい者の方とその介助者、区内の方々をご招待する音楽イベントです。地域に根ざしたコミュニケーション活動の一環として、毎年実施しており、昨年の開催で7回になりました。
今回は当社の製品を使い小山さんと一緒に何かできないかと考え、当社のラベル素材を使用したリストバンドをデザインしていただきました。
リストバンドを来場者の皆さんに着けていただくことで、会場が一体となる素晴らしいコンサートになったと思います。
野中: 信頼性の高さはいうまでもありませんが、小さい枠ながら存在感があるのは、新聞ならではですね。「広告を見た」とわざわざお電話をくださる方もいらっしゃいます。
吉田: 繰り返しになりますが、当社の製品が私たちの身近なところで使われていることを幅広く、継続して訴求できるという点で、新聞は当社に最適なメディアだと思っています。
一つ提案になりますが、私たちのようなBtoB企業が広告を活用しアピールする場が新聞にもっとあってもいいのではないかと思っています。記事として取りあげられることが少なく、知名度が高いとは言えない企業でもユニークで素晴らしい技術を持った会社は数多くあります。
例えば、中小メーカーを集めた広告コーナーを設けて定期的に紹介していただけたなら、「ものづくり日本」の発信にもなり、就活生の会社選びにも大いに役立つのではないでしょうか。