早朝新聞クリッピング 広報効果測定・報道分析

(社)日本パブリックリレーションズ協会加盟

株式会社デスクワン お問い合わせ

ケーススタディー: 日本航空様
 (2017年4月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。
※文章や画像の転載・転用はご遠慮ください。

日本航空
コーポレートブランド推進部
シニアマネジャー
阿部泰典氏

「無料観光スポット」第1位の
「JAL工場見学〜SKY MUSEUM〜」
空の仕事の疑似体験や格納庫見学
元乗務員や整備士、体験交えガイド
日本航空(JAL)が社会貢献活動の1つとして展開している「空育(そらいく)」。空育の一環として行っているのが「JAL工場見学〜SKY MUSEUM〜」。航空教室や整備中の航空機を間近で見学できるとあって、見学者が後を絶たない人気の工場見学となっている。旅行サイト「トリップアドバイザー」の「行ってよかった!無料観光スポットランキング2016」で第1位を獲得。 工場見学は自社を魅せる、生きたプロモーション。JALの「工場見学」の魅力に迫る。

「工場見学」の会場となる「JALメインテナンスセンター1」は羽田空港の新整備場地区にある。メインテナンスセンターは、格納庫に付随した事務棟で、その建物の3階に航空教室と展示エリアがある。まず目に飛び込んでくるのがボーイング777の模型。今回の案内役は「JAL工場見学」のリニューアルも担当されたコーポレートブランド推進部の阿部泰典シニアマネジャーだ。
機体整備工場見学は1950年代から始まって、2013年に「JAL工場見学〜SKY MUSEUM〜」としてリニューアルされたそうですが、「工場見学」では、どのような体験ができるのですか?

工場見学は航空教室30分、展示エリア30分、格納庫見学40分の計100分の構成で、年末年始を除く毎日1日4回行っています。見学は安全上の理由から小学生以上とさせていただき、1回の見学で100人程度まで対応可能です。

航空教室、展示エリア見学の後、格納庫見学という流れですが、展示エリアはなかなか見ごたえがあるので、受付を早めに済ませて航空教室が始まる前にも見学することをお勧めします。

まずは航空教室からご説明します。ここではスライドを使いながら、「2、3分に1回発着がある日本一忙しい空港」である羽田空港の紹介、飛行機が飛ぶしくみ、飛行機が完成するまでのプロセス映像、JALで働く人々の仕事などについて学んでいきます。

飛行機はなぜ空を飛ぶのかご存知ですか?物理の授業を思い出しますね。それは翼の上を通る空気の流れが下より速くなるため、圧力の差で浮く力(揚力)が発生するのです。

では、飛行機の重さはどのくらいあるのでしょうか?ボーイング777の重量は離陸時には、燃料・搭乗者・貨物なども入れて全部で340トンにもなります。340トンと聞いても小学生はピンと来ませんよね。「象なら85頭分」という言い方をしてイメージを伝えます。

ガイドは実体験や裏話もあって大変好評だとお聞きしました。

案内スタッフはJALグループのOB・OGで構成され、元客室乗務員もいれば整備士、パイロットだった者もいます。総勢40人ほどで、説明には案内スタッフの個性が出ますね。この点は大切にしています。

さまざまな経験を持ったスタッフが、お一人でも家族連れでもどなたでも楽しめるような案内を心掛けています。

案内スタッフはみな飛行機が好きな人間です。多くの人に飛行機や空の仕事の楽しさを伝えたいという思いを強く持っています。子育てや定年で一度リタイアした後、もう一度「空の仕事」に関わりたいと、それぞれの経験を活かしたガイドに努めています。

さまざまな案内スタッフが活躍する姿はJALグループのダイバーシティー(多様性)を体現しているといえるのではないでしょうか。


展示エリアに進む。見学者の人だかりができているのはDC9-81型の実物を使ったコクピットのようだ。壁面には航空機の窓のようなものが見えるが、これは何だろう?
展示エリアにはどのようなものがあるのですか?

展示エリアには、航空会社の仕事紹介エリア、1951年の会社設立以降のJALグループの史料を集めたアーカイブズエリアやサービス紹介エリアなどがあります。

仕事紹介エリアでは、空港スタッフ、客室乗務員、パイロット、グランドハンドリング&貨物スタッフ、航空整備士の5つの仕事についてのブースに壁面のパネル展示あり、体験ありの盛りだくさんのエリアとなっています。

各ブースの壁面には飛行機の窓を模したクイズコーナーもあります。それぞれの仕事の七つ道具の展示やクイズを交え、子どもたちの関心を引くような工夫をしています。 また、DC9型機のコクピットに座ったり、実際にパドルを使って飛行機を誘導するマーシャラー体験ができるシミュレーターも面白いですよ。ゲーム感覚で楽しみながら、仕事への理解が深まります。

パイロットや客室乗務員の制服を着て記念撮影もできるので乗務員気分を楽しめます。航空の楽しさをお伝えすることはもちろんですが、知的好奇心を満足できるような内容となっています。

アーカイブズエリアでは、これまで社内のみの公開だったいろいろな史料を展示しています。航空の歴史について50メートルを超える壁面で紹介する大年表が目を引く存在です。

そのほか、救援チャーター便など特別フライトの歴史をまとめたコーナー、JALや旧日本エアシステムのポスターや記念品、時刻表も展示しています。JALグループ歴代の制服展示も人気がありますね。

お待ちかねの格納庫見学。展示エリアから第1格納庫に通じる扉を開けると、一気に視野が開ける。第2格納庫では間近に整備中の航空機を見学するため、ヘルメットを着用する。
格納庫では、実際に整備作業が行われています。整備状況は刻一刻と変わるので格納庫見学はいつ訪れても新しい発見がありますね。

格納庫に入った瞬間、非日常的な光景に見学の皆さんは歓声を上げられます。

第1格納庫では、航空機の定期整備を行っています。幅170メートル、奥行き105メートルで、通常は767や777の2機が整備に入っています。

整備士が機体のどこにでも近づけるように足場が組まれているので分かりずらいですが、今日は767が入っているのが分かりますか?

例えば1年半ごとのチェックですと、1週間ほどかかります。6〜8年に1回の点検であれば、1カ月ほどかけシートや内装などを外して徹底的にチェックします。足場の上部に見えるカーテンは、機体の塗装をするときにおろします。

第2格納庫はさらに開放的な空間が広がっています。幅195メートル、奥行きは105メートルで、最大5機収容できます。

ここでは主に日々の点検である運航整備を行っています。整備中の飛行機と同じ1階のフロアで見学するので、安全のために赤いヘルメットを着用していただきます。格納庫見学では決められた見学ルートがあるわけではありません。見学者20人に1人案内スタッフがついて安全に配慮しながら、格納庫のいろいろなところを案内しています。

格納庫のすぐ目の前は羽田空港の滑走路です。飛行機は常に風上に向かって離着陸するので、風向きによって離陸・着陸に利用する滑走路と向きが変わります。今は着陸する航空機がご覧になれます。時間帯によっては、2、3分刻みで飛行機が離発着しており、航空教室で「羽田空港は日本一忙しい空港」と説明したこともご理解いただけると思います。

パイロットの目線で気付く地球環境の変化などを紹介する「JALそらエコ教室」も好評ですね。

地球環境に関心を持つパイロットが各地の学校などに伺って講座を開いています。時には海外の日本人学校にまで出向くこともあります。

普段皆さんが見ることのできない「空からの地球」について、スライドを使って話を進めていきます。

北極海の氷で覆われたエリアが、夏には小さくなっていることや、以前は積乱雲のあまり出現しなかったシベリアの夏の空に積乱雲がわき出ているといったなど、パイロットとして日々感じたことをお話しして、地球温暖化について考えてもらう内容となっています。当社のウェブサイトから受け付けていて、月3回程度実施しています。

「工場見学」では、ファン向けイベントやGW中の夕方コースイベントも話題となっています。今後の展開や課題などお聞かせください。

訪日外国人の方にもお楽しみいただけるよう、インバウンド対応についても拡大していくことを考えていかなければいけません。

「JAL工場見学〜SKY MUSEUM〜」は大変ご好評をいただいており、現在、コースや展示エリアの拡充を図っているところです。これからも、ファンイベントといったさまざまな楽しみ方をご提供しながら多くの方にご体験いただきたいと思っています。

JALの空育宣言…16年11月から、子どもたちに「空」を通じて未来を考えてもらう新たな次世代育成プログラム「空育」をスタート。これまでも社会貢献活動の一環として、機長の出前講座など次世代育成「JALそらいく」に取り組んできた。「空育」では、「飛行機を通じて『自分』の未来を考える」という従来のテーマに加え、「交流を通じて『日本・世界』の未来を考える」「環境・宇宙を通じて『地球』の未来を考える」という新たな2テーマを追加し、子どもたちに新たな発見やさらなる学びを感じてもらう場を提供する。
<日本航空株式会社> 設立:1951年8月1日
阿部さんは技術畑の出身。整備をはじめ、パイロットの技術サポート、米ボーイング社の駐在員などを経て広報部に。工場見学は2013年のリニューアルに責任者として関わった。阿部さんは「工場見学への思い入れは大変強いですね。現在は航空業界を志望する大学生に航空に関してお話をさせていただいたり、工場見学でご説明もさせていただいたりすることもあります」と話す。
工場見学の申し込みは特設サイトから→https://www.jal.co.jp/kengaku/