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ケーススタディー: 永谷園ホールディングス様
 (2016年12月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。
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永谷園ホールディングス
広報部 広報室長
石井智子氏

永谷園『お茶づけ海苔』名物企画が20年ぶり復活
ウェブ媒体中心に露出を狙う
「日本文化を今こそ伝えていきたい」
「私も集めていた」「懐かしい」――。永谷園の『お茶づけ海苔』などの主要商品に入っていた「東海道五拾三次」カードが復活し、SNSを中心に話題が沸騰している。「五拾三次」カードは、江戸時代の浮世絵師・歌川広重による連作を刷り込んだ絵札で名刺サイズほどの大きさだ。約20年ぶりの復活はコレクターだけでなく、幅広い年代に話題になっているという。広報として、名物企画の休止と復活の両方に関わった石井智子・広報室長。「今こそ、日本文化を伝えていきたい」と意気込んでいる。
「名物企画が、約20年ぶりについに蘇る」というリリースで、「始まりは、“検印紙”」とカードの歴史から説明しています。名画カードの始まりが「検印紙」だったことを初めて知りました。

1965年から「東西名画選カード」シリーズとして、お茶づけ商品などの主要商品に浮世絵などの名画を印刷したカード1枚を封入していました。

52年から販売している『お茶づけ海苔』は、今では生産工程の大部分が機械化されていますが、当時は人手をかけて生産しており、検品作業後、良品であるという確認印を押した検印紙を商品に入れていました。その検印紙を有効利用して、全国のお客様に少しでも文化や芸術を手軽に楽しんでいただきたいという思いを込め、検印紙に名画を印刷したのが始まりです。

開始当初は商品の確認のための検印紙、その後は応募券の役割を果たしました。応募者には、東西名画選セットをプレゼントしており、32年間の応募総数は500万口以上と大変ご好評をいただきました。

プレゼントキャンペーンは永谷園のファン作りや日本の伝統文化の発信といった使命を担ってきましたが、90年代に入ると環境問題がクローズアップされペーパーレス化が求められるようになりました。永谷園のブランド認知も進み、キャンペーンは一定の役割を果たしたと判断し、97年に休止しました。

■「東西名画選カード」・・・1965年〜1997年の32年間、永谷園のファン作りなどを目的に、カード1枚をお茶づけ商品などに封入。東西名画選シリーズは、「歌川広重・東海道五十三次」「ルノワール」「竹久夢二」など全10種類に及ぶ。
それがどうして復活となったのでしょうか?

キャンペーン休止後、最近までお客様からキャンペーン復活のご要望をいただいていました。海外で日本文化を教えている先生から「浮世絵のカードを授業で使いたいので貸してほしい」といったご依頼をいただいたこともあります。

近年、「クールジャパン」として日本文化を海外に発信する動きも活発になってきました。昨年墨田区に「すみだ北斎美術館」が開館されるなど、浮世絵がこれまで以上にブームです。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴って、国内外で日本文化に対して注目が集まっています。

そんななか、永谷園が持っているコンテンツの中で「和」というものを何か発信できないかと考えた時、想起されたのがこの「東海道五拾三次」カード復活だったのです。

カードキャンペーンは2012年に一時的に復活したという記憶があります。

『お茶づけ海苔』発売60周年の2012年に一度、インストアキャンペーンの景品として一部のお客様に向けて復活したことがありました。この時は大々的にすべてのお客様に向けてという形ではありませんでした。今回は言ってみれば「完全復活」になります。

「東西名画選カード」は10シリーズありました。中でも「東海道五拾三次」を選んだ理由は?

一番人気があり、一番最初に手がけたシリーズだからですね。日本の観光名所の魅力が最もつまっているものと言えば「五拾三次」ではないでしょうか。大きさや質感は以前の「東海道五十三次」カードと変わりませんが、名称を「五十三次」から「五拾三次」に変え、以前のものよりも江戸期における浮世絵本来の美しい色合いや名称をより意識しました。

以前はカードの隅の応募券を切り取って集めて送ると抽選でお好きなカードのセットが当たるという形式でしたが、今回は浮世絵をしっかり見ていただきたいと、商品パッケージに応募マークを印刷しています。

カードの認知度についての調査データもリリースしましたが、意図はどんなところにあったのですか?

カード封入が復活するという話題は、通常通りのリリースでも40代以上といった一定の層にはある程度届くであろうと考えました。でも今回、それだけではダメだと思ったのです。

お茶づけを20代から30代前半の若年層があまり召し上がっていないというデータがあります。若い世代に向けてお茶づけをもっと知ってもらいたい、お茶づけ商品を通じてこんなことをしますというPRが必要だと思いました。

そこで、復活のリリースと同時に「永谷園の『東海道五拾三次』カード知っている?」というタイトルの調査リリースを出しました。例えば、40代では「カードを知っている」が約70%ですが、20代となると約40%にとどまっています。

今回のキャンペーン復活のターゲットは若年層です。ネットニュースの記事ではこのデータも引用していただき、カードの認知度におけるジェネレーションギャップも合わせて報じられました。これまでカードを知らなかったお客様にも、今回のキャンペーン復活をきっかけに、永谷園が日本文化を大切にして、その発信に努めていることを知っていただければうれしいです。

世代間のギャップについて石井さんご自身、感じることがありますか?

今回の復活に当たって、広報や販促、商品企画、宣伝からの6人でチームとして取り組みました。私はキャンペーン休止と復活、両方の広報に携わりましたが、メンバー内でもカードへの思い入れがある世代とそうでない世代とのギャップが顕著でしたね。

私自身、カードが「これが広重の絵なのか」「五拾三次の日本橋はこう描かれているのか」と知るきっかけとなりました。私はカードの持つ価値を体感している世代です。カードによって、教科書でしか見たことがなかった浮世絵を身近に感じることができました。

浮世絵は世界から見てもクールで、コレクション性もあります。若い世代にもこれを機会にぜひカードを集めて、素晴らしい日本の文化に触れてほしいですね。

ネットニュースから火がつき話題が広がっていきました。メディア誘致もウェブを中心に展開されたのですか?

今回はネットでの記事化を狙ってウェブ媒体へのプロモートを強化しました。「最初に上げる花火はネットで」という思いがありました。先ほどお話ししたように、課題の一つに若年層の掘り起こしがあったので、その年代と親和性の高いネットにターゲットを定めたのです。

11月10日にリリースを発信し、その日のうちに「ねとらぼ」に記事が掲載されました。これをきっかけに、「Yahoo!ニュース」、さらに「Yahoo!トピックス」に取りあげられました。発表日の10日だけでもカード復活に関するリツイートは約3300から3400件に上りました。

リリースの中で、大相撲の遠藤関を起用したキャンペーン復活のCM放映も告知したので相撲ファンの方の間でも話題になって、SNSを通じて情報が拡散していきました。弊社の中でもこんなに大きな反響をいただいたケースはほとんどありません。

永谷園は大相撲の懸賞旗をはじめ、歌舞伎などの日本文化の発信にも積極的です。2020年に向けて日本文化をどうPRしていきたいとお考えでしょうか?

11月に私どもの本社があります新橋と、虎ノ門を結ぶ新虎通りで「東京 新虎まつり」が開催され、弊社も地元企業として参加しました。

出店ブースで、カードを一覧表にしてパネル展示したところ、多くのお客様が足を止められ「これ知っている」「懐かしい」というお声を直接いただきました。皆さんの反応がいいものばかりで、手応えを感じています。

お茶づけ自体、ご飯とお茶、海苔、あられでできています。「日本=和」を象徴するものばかりです。パッケージのデザインも江戸の粋や情緒をイメージし、歌舞伎の定式幕になぞらえた「黄・赤・黒・緑」の縞模様となっています。

弊社ではお茶づけをはじめ、ふりかけやお味噌汁などを通して、日本の文化発信に努めています。引き続き、日本の素晴らしい文化を身近なところから実感していただくための一助になれるよう取り組んでいきたいと思っています。

<株式会社永谷園ホールディングス> 創立:1953年4月
広報部は広報室と環境推進室に分かれ、計7人体制。2014年から展開する「日本の上に何のせる?」プロジェクトでは、ご当地トッピング茶づけを提案する「お茶づけカー」が全国キャラバン中だ。広報メンバーも地方を巡りPR活動に力を入れるなど積極的に関わっている。石井室長は「お茶づけを日本に見立てたプロジェクトです。お茶づけに合う名産品やおいしいお米との相性を地域ごとにご提案することで、自由に楽しくお茶づけを召し上がっていただければ」と話す。