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ケーススタディー: 松屋様 (2016年11月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。
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松屋
人事部人事企画課 専任係長
福島清訓氏

松屋グループ、20年ぶりに社内運動会を復活
社員や家族、取引先から1450人
一致団結して「創業150周年へ」
今年6月、両国国技館を借り切って20年ぶりに社内運動会を復活させた百貨店の松屋。銀座店の設備点検に伴う休業日を活用したもので、秋田正紀社長をはじめ役員のほか、従業員や家族、取引先など約1450人が汗を流した。同社は今期を創業150周年に向けた本格始動の1年目と位置づけている。「会社や部署という枠を越え、“チーム松屋”として一体となれるのが社内運動会の魅力」だという。
社内運動会を20年ぶりに開催し、話題になりました。復活の理由から教えてください。

創立150周年に当たる2019年が間近に迫っています。弊社では150周年に向け社内プロジェクトをいくつか立ち上げました。その中で社員だけでなく、お取引先を含めて一致団結して行えるものとして社内運動会というアイデアが出てきました。グループ企業やお取引先とのコミュニケーションを深め、一体感を醸成するのが目的です。

当初は150周年に合わせての開催を考えていましたが、たまたま今年、銀座店の設備工事の関係で1日休業しなければならなくなったので、人が集まりやすいこの日に合わせたのと、かつて運動会を経験したベテラン社員から「早くやりたい」という声が相次いだことから、前倒しの開催になりました。

自由参加ではありましたが、銀座店を中心に社員やその家族、お取引先など約1450人が参加しました。社員の約8割が集まってくれ、予想を上回る数に驚きました。

福島さんご自身、20年前の運動会を経験されていないと伺いましたが、企画から実行までご苦労もあったかと思います。

ただ、子供の頃の運動会の経験や親の会社の運動会を見に行ったことがあったので、実行委員会事務局としてすんなり企画・運営に入っていけましたね。「運動会をやりたい」という社員から、どんな競技があったら盛り上がるかなど、意見を聞くことから準備を始めました。

以前行われていた運動会は自社のみだったそうですが、今回取引先など社外からも参加を募ったのはどうしてですか?

自社環境の変化もあります。20年前は社員だけで1000人を超えていました。社員数の減少に加え、現在の売り場は、お取引先の方とコミュニケーションを図りながら、チームとして運営するケースが多くなりました。社員だけで固まらずに、普段一緒に働いている仲間との触れ合いを深めようという狙いがありました。

運動会後、社内のコミュニケーションについて変化はありましたか?

そもそも社員全員が集まる機会は、初売りなどに限られています。店舗では定休日を特に設けておりませんので、なおさら休みの日に全社員が集まるということはありません。

運動会では社長も役員もチームに入って競技に参加したので、特に新入社員など若手社員にはトップを近しく感じる良いきっかけになったようです。運動会当日、国技館の2階客席部分に役員席を設けたのですが、誰も席に座らずにずっとチームの中で一緒になって盛り上がっていました。

売り場の上司も家族連れで参加していることも多かったので、参加者から「普段と違う表情を見ることができた」という声が多く、心理的な距離が縮まったと思います。

運動会未経験者と経験者の間で温度差があったとお聞きしました。それをどうやって乗り越えたのでしょうか?

社員に運動会の実施を周知した際、経験者は「懐かしい」と盛り上がっていったものの、未経験である若手の中には当初はあまり乗り気でない意見もありました。準備や練習などで「運動会は大変なイベントだ」というイメージを持っている人が多かったように思いました。

そこで、ハードルを下げて気軽に参加できるような工夫をしました。種目については練習しなくても参加できるものを選んだのはそんな理由からです。

それに加え、運動会が職場でのコミュニケーションのきっかけになってもらいたいという思いがあったので、社内イントラネットを使って、競技の紹介やチーム分けなどの運動会情報を約半年で十数回発信し、本番に向けて雰囲気づくりに努めました。

種目選びや進行などで工夫された点はあったのでしょうか?

日常業務に支障をきたすことのないよう社内説明会も行わず、事前準備も最小限に留めたのがよかったと思います。

チームは赤、黄、青、緑、白の5つに分けましたが、ランダムだと会話もなかなか続かないだろうと思い、婦人や紳士、食品など所属単位を中心にチームを編成しました。

競技については既にお話ししたように事前の練習をしなくてもできることと、けがをしないということに重点を置いて選び、定番の綱引きやリレーなど8種目に加え、子ども向けイベントを3種目設けました。一番最初に全員参加の大玉送りを入れ、各チームが得点を競いながら最後リレーで締めるという段取りでした。

競技が進むにつれ会場がヒートアップしていったのでそこは狙い通りでしたね。何よりも参加者に大きなけがもなく終えることができたことに満足しています。

また、元陸上選手の為末大さんや、大嶽部屋の力士の皆さんをゲストに招きました。為末さんにはリレーに、力士の皆さんには綱引きに加わっていただき、大いに盛り上げてもらいました。

そのほかにも競技に参加していなくても体を動かしてもらえる機会をつくろうと、ストレッチや体幹を鍛えるプログラムを用意しました。平日に開催したので「力士に挑戦」など未就学児も楽しめるイベントも取り入れました。

全国紙や専門紙などで取りあげられました。メディア誘致はされたのでしょうか?

社内イベントということもあり、リリースは打ちませんでした。ここ最近、社会的に社内運動会復活のニュースが出てきてメディアの関心を集めています。問い合わせのあった媒体には個別に対応しました。以前と違い、インナーコミュニケーションの中にもメディアの話題となることがある、そういう時代となったのだという認識を新たにしました。

少子高齢化社会を迎え、百貨店業界だけでなく多くの企業が人材確保や従業員の満足度向上に力を入れている中で、企業アピールがより一層求められているように感じます。

社内外のコミュニケーションに好影響を与えた社内運動会ですが、今後、2019年の創業150周年にどうつなげていきたいとお考えですか?

ご家族との時間、会社の皆さん、それぞれの時間が交わる機会だったと思います。親睦が深まり、一致団結して創業150周年に向けて進んでいく、その一助になれたとしたら、これほどうれしいことはありません。

「実は足が速い」といった、その人の意外な一面が発見できたり、普段は接することのない職場とも触れ合えたりして、特に若手の社員にとって横のつながりと縦のつながりがより強固になりましたし、会社に対するロイヤリティーも高まったことは確かですね。

今回、運動会という社内行事に対してメディアや他社から多くの問い合わせをいただきました。正直こんなに反響があるとは思いませんでした。弊社は銀座に本店を構える唯一の百貨店として「GINZAスペシャリティストア」を掲げています。インナーコミュニケーションと社外への発信とを上手くつないで、一人でも多くの松屋ファンを増やしたいと思っています。

<株式会社松屋> 創業:1869年11月3日
準備期間は約半年。「忘れられない一日になりました」と福島さん。「盛り上がるかどうか不安もありましたが、自発的に仮装する参加者もいて、みんな楽しんでいましたね」と話す。