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ケーススタディー: はとバス様 (2016年2月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。
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はとバス
広報室 主任
古井戸麻衣氏

はとバスの企画力・発想力にメディアも注目
顧客視点で見慣れた名所も一新
2020年に向けて「TOKYO」盛り上げ
「東京観光の代名詞」はとバスは、観光地・東京を半世紀以上にわたり国内外にアピールしている。インバウンドの“風”にも乗り快走中だが、好調の理由は外的要因だけではない。東京の魅力を掘り起こす企画力と、顧客の声を全社で受け止める「お客様第一主義」の両輪が上手く回り、利用者は年間88万人に上る。「バスツアーで東京再発見を」という広報・PRの現場を紹介する。
メディアへの露出が増えています。1月に行われた恒例の「はとバスガイド成人式」が各紙で取りあげられました。

国土交通省と都庁の記者クラブへのリリースの投げ込みに加え、通信社にもリリースを送りました。

毎年の恒例行事となっているのでメディアの皆様も予定に入れてくださっているようで、12月になると「今年はいつですか」とお問い合わせをいただきます。季節感のある行事ということに加え、一足早い成人式となっていて、取りあげやすいのかもしれません。

弊社のガイドは地方出身者が多く、成人の日は仕事のため故郷の式典に参加できないことから、会社で成人式を行うようになりました。多くの報道陣に囲まれ、ガイドにとって思い出深い一日になっています。

毎年、通信社を通じて多くの地方紙でも取りあげられます。記事は「元気で頑張っている」という故郷への便りです。弊社としてもガイドを目指す方へのPRにもなりますし、地方の方に、はとバスをアピールできる絶好の機会にもなっており、広報として1年の中で最も力が入る行事となっています。

★1 2012年度の東京観光バス利用者が20年ぶりに90万人を突破。東京スカイツリーの開業などが寄与した。その後も好調を維持し年間90万人水準で推移している。
★2 恒例となった「はとバスガイド成人式」は今年で55回目。ひと足早い「成人式」としてメディアの注目度も高く、今年は全国紙3紙が記事化した=写真左

新商品広報にどのように取り組まれていますか?

商品は大きく「東京観光」「日帰りツアー」「宿泊ツアー」「外国語ツアー」の4つのツアーに分けられます。

リリースはそれぞれ新商品のパンフレットが改訂される春、夏、秋、冬の季節ごとに「春 宿泊バスツアー新商品」のように各ツアーごとに出しています。リリースは毎回、目玉のコースがあるので、それを大きく扱いながら作成していきます。

テレビのバスツアー特集などに多いのですが、新商品リリースを取っ掛かりとして、他のコースも含めて「今、話題のコース」などと、まとめて取りあげていただくケースが多いですね。

はとバスの“企画力”に着目するメディアも多いようです。テレビのドキュメンタリーにツアープランナーの江沢伸一氏が相次ぎ登場しました。

おかげさまで弊社の“企画力”に注目をいただき、最近では「どうやって新しいコースがつくるのか」といった取材をよく受けます。

「東京観光」の企画担当者は3人いて、江沢(定期観光部副部長・企画課長)が統括しています。弊社では少数精鋭でコース企画を行っています。

ユニークなツアーを生み出す企画会議は「企画千本ノック」と呼ばれています。どのように行われているのですか?

担当者がそれぞれ案を持ち寄り、企画会議で発表します。意見をぶつけ合う場が「千本ノック」と呼ばれています。ボツになる企画の方が多いですが、採用されたアイデアは江沢や他の企画担当者のアドバイスをもらいながら、商品として練り上げていきます。

提供する側の都合ではなく、「お客様の目線に立ったものだけが売れる」と徹底して鍛えられます。

古井戸さんは、コース企画のご経験もあるとお聞きしました。

広報に来る前に、私も企画課で郊外の「日帰りツアー」「宿泊ツアー」のプランニングをしていました。

自分が作ったコースの中で思い入れがあるのが、女子力アップをテーマにした女性限定の「日帰りツアー」です。アウトレットで買い物をしたり、箱根神社で恋愛成就を祈願したりして女子力アップを図るコースとなっています。

広報から見て、はとバスの魅力は?

まず、第一に挙げられるのは、やはり“企画力”でしょうか。年間発表するコースは1000以上になり、そのうち3割が新しいコースなので、常に最新のトレンドを取り入れたラインナップになっています。コース会議という場を設け、お客様のご意見やご要望を反映することはもちろん、日々、お客様に接しているガイドや運転士の意見も取り入れるなど、現場の声を大事にしています。

次に、ほとんどのコースでガイドが付くので、安心してバスツアーをお楽しみいただけます。

それと、忘れてならないのが食事です。「お客さまの声はがき」でもほとんどが食事に関する内容です。お客様が一番楽しみにされており、食へのこだわりは譲れませんね。

「お客さまの声はがき」は、社内の掲示板に貼り出すなど全社で顧客志向を徹底されています。

ツアーに参加してくださったお客様に「お客さまの声はがき」をお配りして感想やご意見を集めていますが、毎月500通くらいいただきます。

これを社長はじめ、関係部署で目を通すようにして、お客様の声を取り入れたコースづくりに努めています。外国人のお客様へのアンケートも昨年から始めました。

外国人向けのコースも好調です。インバウンドではどのような取り組みをされていますか?

8カ国語対応自動ガイドが利用できる2階建てオープンバス

創業間もない1953年に英語ツアーが本格スタートし、2005年から中国語ツアーが加わりました。いずれも通訳案内士がガイドをしています。

多言語対応では、2階建てオープンバス「オー・ソラ・ミオ」で運行するツアーにおいて、12年に英語・中国語など4カ国語に対応した自動ガイド「TOMODACHI」システムを導入しました。昨年には、より多くの外国人のお客様に東京観光を楽しんでいただけるよう、急増しているアジア圏の言語を中心に、対応言語を8カ国語に広げました。

英語ツアーは都内の定番観光地が人気

英語ツアーに関しては都内の定番観光地が人気があります。中国語ツアーでは富士山や箱根に行くコースが人気が高いですね。

14年の外国語ツアー参加者数は計8万3000人に上り、弊社では「20年までに20万人」という目標を掲げ、現在、外国人のお客様を増やす取り組みに力を入れています。

外国人のお客様にはこれまで専用コースをご案内していましたが、最近では外国人のお客様から「日本人向けのバスツアーに参加したい」との声も多くなってきました。外国語コースは都内近郊が中心でコースラインナップが少なく、外国人のお客様の選択肢か限られていました。そこで昨年から日本人向けコースの一部に、外国人のお客様にも安心してご乗車いただけるような新しいサービスを始めました。

日本人のバスガイドの他に、英語・中国語の対応可能な係員が同行するほか、乗車前には外国語対応の案内文をお渡ししています。また、予約時や緊急時に対応できる連絡先も設置し、万全を期しています。

東京を訪れる人だけでなく、東京に住んでいる人やや東京で働く人が「東京は面白い」と言うようなコース企画を心掛けているそうですね。

都内に住んでいるお客様が東京を再発見できるようなコース企画にも力を入れています。『はとバス劇場』というカテゴリーで、はとバスならではのオリジナルツアーをご用意しています。

例えば、『東京ステーションホテルで過ごす特別な日』というコースでは、普段宿泊者しかご利用できないレストランで、昼食にフランス料理のフルコースをご堪能いただけます。最近は「街歩き」も好評ですね。築地や日本橋をその土地の歴史や老舗を知り尽くした案内人と巡るコースもあります。

広報の課題や今後の展望をお聞かせください。

海外メディアからのお問い合わせも増えてきました。これからは海外のメディアに向けて、はとバスをアピールしていく必要があると考えています。リリースも国内配信にとどまっているので、海外への発信が課題となっています。

昨年12月にフェイスブックとツイッターの公式ページを設けました。2月から「微信」をはじめ「新浪微博」の活用も検討しているところです。国内外のお客様のご意見を取り入れ、より魅力的な商品を企画し、はとバスという会社を広くアピールしていきたいと思っています。

<株式会社はとバス> 設立:1948年8月14日
「企画課と違い、広報は会社全体を見る必要があり、毎日が勉強」と古井戸さん。広報は広報室長含め3人体制。はとバスでは、会社を挙げお客様目線での取り組みを進めている。「はとバスでは、繁忙期にはどの部署にいても添乗員としてバスツアーに乗っています。企画担当者の場合は繁忙期に限らず、お客様の様子や反応を知ろうと普段からコースに乗り、企画づくりに活かしています」と話す。