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ケーススタディー: 横浜DeNAベイスターズ様
 (2015年11月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。
※文章や画像の転載・転用はご遠慮ください。

横浜DeNAベイスターズ
広報・PR部 河村康博氏

横浜DeNAベイスターズ、観客動員数伸び率12球団ナンバーワン
横浜の街に溶け込む球団へ
「野球を、スタジアムをひらいていく」
横浜スタジアムに響く「ヤスアキ」の大合唱とファンのジャンプ。今季新人王を受賞する活躍を見せたクローザー山ア康晃選手の登場は、横浜DeNAベイスターズの勝ちパターンだ。日本一となった1998年以来の前半戦首位ターンに球場は何度も揺れた。横浜スタジアムの今季主催試合の総観客動員数は昨季比16%増の約181万人で、動員数の伸び率は12球団トップ。チームの好調と事業の様々な仕掛けがかみ合い、躍進するDeNAベイスターズ。野球ファンでなくてもハマスタに行きたくなるのはなぜか。
総動員数はこの4年で右肩上がりです。今季は“第2幕”という位置付けで様々な事業を展開しました。まず、本拠地・横浜スタジアムの球場内の取り組みから教えてください。

私たちの取り組みはすべて「野球をひらく」ということにつながります。

球団では球場を野球が好きな人から見たことがない人まで、気軽に集まり楽しめる場にしようという「コミュニティボールパーク」化構想を進めています。今季から内野席に4つのシートを新設したのもその一環です。いずれもグループ観戦向けのシートで、家族同士や会社の同僚たちと一緒に野球を楽しんでいただきたい、観戦しながらコミュニケーションが生まれるような場になってほしいという思いを込めました。

「リビングBOXシート」は、靴を脱いで自宅のリビングにいる感覚で観戦できます。今季新設したシートの中でトップの稼働率でした。新設した4シートとも高価格帯ですが、いずれも売れ行きは好調で他のシートよりも一番早く完売します。

もう一つは「DREAM GATE」という名前を付け、バックスクリーン下の入口がある場所を試合開催日に一般開放しました。横浜公園側からスタジアムのグラウンドが見え、試合前の練習風景を見ることができます。

野球場は外から見たら閉じられた空間です。中に入らないと何が行われているのか分かりませんよね。でも一歩中に入るとそこは魅力的な空間なのです。

プロ野球という非日常的な体験をコアなファンだけでなく、日頃から横浜公園を利用する地域の皆様にもっと身近に感じていただくための“ゲート”となってほしいと思っています。

球場の外でもイベントが盛りだくさんでした。

横浜スタジアムは、横浜公園というパブリックな空間にある球場です。私たちは横浜公園をボールパークととらえ、新しい公共空間のあり方を考えています。

野球観戦のチケットを持っていなくても楽しめるように、球場の外でも様々なイベントを行っています。公園内の芝生エリアで2012年から毎年実施している夏の「ハマスタBAYビアガーデン」は、ビールなど冷たい飲み物を召し上がりながら、試合を大型モニターにて無料でご覧いただけるとあって好評です。

そのほか、5月の連休にはスタジアムの場外に移動水族館「スターAQUAパーク」を開設するなど、試合開催日に、様々な企画をご用意し、皆さまに楽しんでいただいています。

ライフスタイルショップ「プラスビー+B」もオープンしました。「+B」で販売している商品には球団のロゴがなく「WILDPITCH」など野球用語をあしらっているのはなぜですか?

「+B」の「B」はベイスターズではなく、ベースボールの「B」を意味しています。単に球団をアピールするのではなく、野球そのものの魅力を知ってもらいたいからです。グッズに球団名を冠していないというのは、これまでの日本球界では見られなかった新しい試みです。

さらに、野球ファンはもちろんですが、横浜公園を散策する市民の方にも気軽に来ていただけるように、店内にはコーヒースタンド「BALLPARK COFFEE」を併設しました。横浜公園を散歩する途中や出勤途中に「コーヒーを飲みに行ってみよう」ということから始まって、DeNAベイスターズを知っていただければありがたいですね。

「+B」というショップをきっかけに、野球を見に行こうと思ってもらえるようにハードルを少しでも下げていく試みが必要ではないかと思っています。

14年から野球を通して人と人、人と街がつながる「I☆YOKOHAMA」に取り組んでいます。15年1月に開いた「次の、横浜DeNAベイスターズ発表会」は会場の横浜市開港記念会館や新ユニフォームに採用した「横浜ブルー」など、地元愛に溢れていました。

I☆YOKOHAMA: 球団・球場が取り組む「まちづくり」プロジェクト。横浜DeNAベイスターズは「横浜、プロ野球のある街」として、まちづくりの一端を担い続ける。

私たちが目指すのは、野球が好きでなくても横浜に住んでいる方や働いている方が横浜に来ればDeNAベイスターズを感じられる街にしていくということです。例えばメジャーのレッドソックスとボストンのように、私たちも横浜の街に溶け込んでいきたいという強い思いを持っています。

横浜市民を対象にした独自アンケートでは「海・港の街」というイメージがトップだったので、横浜の海のイメージにより近づけようと、今季からユニホームの色をより鮮やかな青色にし「横浜ブルー」と命名しました。球場スタッフや警備員の制服も横浜らしくセーラーをモチーフにしたものに変えました。

このように一つ一つ横浜の街にシンクロしていくことが大事だと考えています。

球団の取り組みは「常識破り」「チャレンジング」と言われ注目を浴びています。

DeNAベイスターズでは、観客データに基づいたマーケティングに力を入れています。

DeNA参入前は、球場に足を運ぶお客様がどういう層が多いのかといったデータを、ほとんど取っていませんでした。参入を機にこうしたデータを分析し、一番多い層として20〜40代の働く男性層が浮かび上がり、その層を「アクティブサラリーマン」と名付けました。

様々な仕掛けが奏功し「アクティブサラリーマン」を呼び込むことができ、最近では「アクティブサラリーマン」からその家族、会社の同僚、女性に広げていくような施策を展開しています。明確なターゲット設定や「アクティブサラリーマン」といったワードを使い、メディアの方には分かりやすくお伝えするように気を配っています。

最近ではターゲットを分かりやすく明確にしたイベントを増やしています。小学生を対象にした『キッズスタジアム 2015』では、場内アナウンスやグラウンドキーパーなど選手たちをサポートする仕事を実際に体験していただきました。

また、女性ファン向けには「YOKOHAMA☆GIRLS FESTIVAL 2015」と銘打ち、初めて女性限定スペシャルユニフォーム付きチケットも発売しました。

公式チアチーム「diana(ディアーナ)」は今季から「サポーティングガールズユニット」に様変わりしました。

オフィシャルサポーティングガールズユニット「diana」:
5回裏終了時に踊る「ハッピースター☆ダンス」は「キレのあるチアダンスとは違い、みんなで踊れるような楽しいものに仕上がっています」と河村さん。

チアチームの「野球を応援する女の子」という位置付けを変え、コアな野球ファンだけでなくライト層にも受け入れられるように、メンバーの個性を前面に出して活動しています。

球場を盛り上げるだけでなく、テレビ出演やCDデビューなど球場の外にも活躍の場が広がったシーズンになりました。

最後に、アレックス・ラミレス新監督のもと、チームは新たなスタートを切りました。来季の事業展開と抱負をお願いします。

来季はDeNAベイスターズ誕生5年目のシーズンになるので5周年というのをキーワードに様々な事業を計画しています。その第1弾企画を12月1日に発表しました。

1つ目は壮大なプレゼント企画です。神奈川県内の小学生や園児など子どもたち約72万人にDeNAベイスターズのキャップを無料配布します。DeNAベイスターズのキャップをかぶった子どもたちが元気にスポーツに取り組んでくれるとうれしいですね。

2つ目は「DREAM GATE CATCHBALL」です。横浜スタジアムの外野でキャッチボールしていただこうと、ナイターの試合がある日の朝7時から8時半まで無料開放します。グローブやボール、運動靴を貸し出すので、横浜スタジアムでキャッチボールをして学校や会社に行くのもいいですね。

最近はキャッチボールする場所が少ないので、普段は野球に触れる機会の少ない子どもたちに喜んでもらえたらうれしいです。

スポーツ広報として大事なことは「情報」を伝えるということよりも「気持ち」を伝えていくということだと考えています。スタジアム周辺の駅では、青いジェット風船が舞い上がるシーンやお客様の笑顔のビジュアルで壁面を埋め尽くしています。これも野球に興味のない方の感情を動かしたいからです。

かつて横浜高校の松坂大輔選手に胸を躍らせた世代を中心にスタジアムに野球ファンが戻り始めているという実感があります。さらに「球場に行ったら面白そうだ」と、新しいお客様も増えてきました。

5年、10年先に横浜の街でDeNAベイスターズがどうあるべきかについて、球団の全職員が日頃から考えています。チームが負けてもお客様に喜んで球場に足を運んでいただけるように、市民の皆様がプロ野球をもっと身近に感じてもらえるように、もっと「野球を、スタジアムをひらいていく」ようにしたいですね。

<株式会社横浜DeNAベイスターズ> 設立:1949年11月22日
球団のアイデンティティーとして「継承と革新」を掲げる。横浜スタジアムの前身の球場は、ベーブ・ルースやルー・ゲーリックらメジャーリーガーが国際試合を行うなど日本の野球史に名を残す伝統ある場所だ。「私たちは『継承』ということも『革新』と同じくらい重要だととらえています。この場所で野球ができるという喜びを感じながら、横浜という街とともにあり続ける球団を目指します」と河村さんは話す。