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ケーススタディー: 日本マクドナルド様 (2015年8月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。
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日本マクドナルド PR部マネージャー
長谷川崇氏

「ママズ・アイ・プロジェクト」――母親目線で厳しくチェック
食材産地や生産現場を“見える化”
安心・安全なマクドナルドを実現
クルーの真っ赤なTシャツに描かれているのはスマイルロゴだ。日本マクドナルドは2015年5月25日を「マックスマイルの日」と定め、期間限定ユニフォームをはじめ、“スマイル0円”表記の完全復活、新セットメニューなど新施策を次々と打ち出し、変わるマクドナルドを印象づけている。中でも食の安全・安心への取り組みとして話題を集めているのが「ママズ・アイ・プロジェクト」。母親の目で店舗や生産現場をチェックしてもらう試みだ。
8月に発売した『アボカドバーガー』シリーズと『アボカドマフィン』が好調ですね。

昨年4月に期間限定で発売し、予定よりも早く完売した人気商品です。販売終了後もメニューの復活を望む声がマクドナルドに多く寄せられ、ご要望にお応えしての復活となりました。

アボカドは「森のバター」と呼ばれ非常に栄養価の高い食材です。夏バテ予防にも効果があるといわれており、夏の暑い季節にぴったりの商品だと思います。

同じく8月にはスライスしたトマトを1枚40円(税込)でトッピングできる全国初の新サービスも始まりました。

「もっと野菜を使ったメニューが食べたい」というお客様の声にお応えしたいと、5月から『ベジタブルチキンバーガー』(朝マックの時間帯では『ベジタブルチキンマフィン』)といった野菜を使った商品も販売しています。

実はこの「トマトトッピング」はあるFCオーナーの発案がきっかけで、みずみずしいフレッシュなトマトを加えることで新しい味をお楽しみいただきたいとの思いから8月から新サービスとして始めました。

マクドナルドではその時期に一番品質のいいものを国産・外国産問わず、確保しお届けしています。この点はもっとアピールしていかなければいけないと思っています。

「見える、マクドナルド品質」としてスタートした「ママズ・アイ・プロジェクト」が話題です。母親の視点を活用される理由は何でしょうか?

「ママズ・アイ・プロジェクト」(第1期)のメンバーは放送作家の鈴木おさむさんをリーダーに計6人で構成

お母様というのは家族の健康を守るために誰よりも“厳しい目”をお持ちです。そのお母様の目でもって私たちの商品や店舗を改めて見ていただきたいという意図があります。

マクドナルドの品質やお客様と向き合う姿勢、会社の信頼感などの大きな課題に昨年の夏から私たちは全社員一丸となって取り組んでいます。国内外の全サプライヤーに対して品質管理体制の再徹底と強化を行いましたが、マクドナルドの品質についてお客様にお伝えできていなかった部分も多かったのではないかと思い至りました。

『ハンバーガー』のビーフがどこで加工されたものなのか、どこで育ったお肉なのかという食に関する情報をお客様にもっとお伝えしなければならないと考え、ウェブサイトに「『最終加工国』および『主要原料原産国』一覧」として公開しました。今後も情報公開を積極的に進めていきたいと思っています。

当社社長兼CEOのサラ・カサノバが2014年末から2015年中に47都道府県の店舗を訪問する中で、全国のお母様からマクドナルドに対するご意見を直接お聞きする場を設けています。

そうした場や報道などでカサノバ自身が品質向上策や情報公開についてお伝えしていますが、当社のメッセージがお客様に十分に届いているとは思っていません。

お母様方に私たちの取り組みをもっと知っていただきたい、実際にマクドナルドの店舗に入っていただき、ママの目で見て、意見を出していただきたいと始めたのが「ママズ・アイ・プロジェクト」です。

具体的にどんな活動をするのですか?

「ママズ・アイ・プロジェクト」は大きく2期に分かれています。

第1期は放送作家の鈴木おさむさんをリーダーに、食や栄養に関心が高い料理評論家やフードコーディネーターなどの肩書でメディアにも登場される現役ママ5人で「ママズ・アイ・テーブル」というミーティングを2回開きました。

鈴木さんは以前、ご自身のブログで当社を取りあげてくださり厳しくも温かいエールに私たちも勇気づけられ、プロジェクトへのご参加をお願いしました。ミーティングでは全国の一般の方々から寄せられたご要望やご質問にメンバーが目を通しながら、「マクドナルドのここを見に行こう」と活動内容を決めていきました。

第1期では店舗でどのように商品が作られているのかをチェックしていただきました。例えば「シェイクマシンは清潔さが保たれているのか」という疑問が多く寄せられたことから実際にシェイクマシンの清掃の様子を見学していただきました。

この日は私も同行したのですがマシンが分解洗浄され、溶液を機械の中に通し殺菌を行うなどのメンテナンス作業をご覧いただくと、ママから「中に何か入る余地はないですね」という感想をいただきました。調理器具や用具を普段から清潔にしていることを皆様にお伝えできる大変いい機会にもなりました。

第2期は一般のママを7月末から公募し、8月から国内外の加工工場や原材料の生産農場にお招きするプロジェクトを展開しています。

一連の活動は、当社の店舗や関連施設を見学して終わりではなく、多くの皆様にご覧になっていただきたいと特設サイトで逐次、その様子を動画で公開しています。7月31日には、一般のママ100人を公募することと第1期の活動報告で記者会見を開きました。

トップ自ら活動の意味や思いを語る場として記者会見は重要だととらえています。反響はとても大きく、質問の募集には約4000件が寄せられました。

各店舗ではお子様向け職業体験プログラム「マックアドベンチャー」も積極的に行われていますね。

「マックアドベンチャー」についても各店舗で注力しているところです。

キッチンに入り、クルーと楽しく会話しながら『ハンバーガー』の作り方を教わり、マクドナルドをより深く知ることができます。店舗と地域の結びつきを高めていくための手助けになればと考えています。

ハード面でも「見える化」を進めています。埼玉と大阪の2店でも“オープンキッチン型”店舗を導入しました。

オープンキッチン型店舗は既に12店舗ありますが、新たに今年7月に2店舗で導入しました。

キッチンの外壁の一部をガラス張りにし、クルーが調理する様子をお客様にご覧いただけるようにしたもので、食の安心・安全をアピールする当社の取り組みの一つとして記事に取りあげていただけたと思っています。

お客様視点としての取り組みでは、2014年の「みんなのとんかつソース開発プロジェクト」もメディアに大きく取りあげられました。


一般公募で選ばれたメンバーのアイデアと人気投票から誕生した「ごまかつソース」を、『とんかつマックバーガー』に正式採用

お客様と一緒になって商品を作るというマクドナルド初めての試みでした。私も広報として参加し、メニュー開発やソースサプライヤー、そしてお客様と『とんかつマックバーガー』のオリジナルソースを“共に創る”というユニークな体験ができました。

開発プロジェクトでは3つのキーワードがありました。幅広いお客様に選ばれるもの、飽きがこなくてリピートしたいもの、マクドナルドにしか出せないものです。これをすべてクリアしようと、一般公募で集まったメンバー15人が2回にわたり活発な意見交換を行いました。

そうして生まれたのが「ごまかつソース」です。エッジが効いていながら安心感のある、これこそマクドナルドらしいソースだったと思います。

商品開発ではテストマーケティングやグループインタビューなどいろいろな手法がありますが、お客様と対話をするということのプラス面を改めて認識することになりました。

お客様の「何かもの足りない」という声をその場で突きつめていくと、足りないものが酸味なのか歯ごたえなのかが明確になっていきます。お客様視点と簡単に言葉にしがちですが、お客様の感じているところに近づくにはどうしたらいいのか、私自身、大きな学びになりました。

最後に広報・PRの課題と今後の展望をお聞かせください。

マクドナルドでは、お客様からの信頼をより高めていくことを最優先課題としてさまざまな取り組みを進めています。

まずは食の品質・安全のための活動をはじめ、活動のひとつひとつを途切れることなくしっかりお伝えしていきたいと考えています。その上で商品やキャンペーン、イベントを通じて、マクドナルドの魅力や「ワクワク」「ドキドキ」感を、すべてのお客様に伝えていきたいと思っています。

■マクドナルドの信頼回復に向けた取り組み

2014年7月の使用期限切れ鶏肉問題と2015年1月の異物混入問題を受け、第三者機関による店舗の抜き打ち検査のほか、全店員に対し異物混入への対応策の研修を実施。また、国内外の全サプライヤー62社に対し品質管理体制の再徹底と連携強化を図るなど、信頼回復を最優先課題としてさまざまな対策を講じている。
<日本マクドナルド株式会社 > 設立:2002年7月1日(持株会社制移行時に新設)
PR部は部長を含め総勢5人で、社外広報・PRを担っている。「みんなのとんかつソース開発プロジェクト」では「元気と勇気をもらいました」と長谷川マネージャー。「お客様視点ということを肌感覚で学んだプロジェクトでした」と話す。