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ケーススタディー: ゼブラ様 (2015年7月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。
※文章や画像の転載・転用はご遠慮ください。

ゼブラ
広報室 担当課長
池田智雄氏

ヒット商品相次ぐゼブラ、メディアに取りあげられるPR
社内を徹底取材、リリースに活かす
「開発者・企画者の言葉を大切に」
「記事は足で書け」とは記者に向けた言葉であるが、広報も同じである。「リリースは足で書け」。社内情報は待っていても集まらない。現場に足を運び、商品の背景となる開発者の言葉に耳を傾ける。芯が折れない新機構を搭載したシャープペン『デルガード』をはじめ、ヒット商品のメディア露出が相次ぐゼブラ。2015年5月発売のラメ入り蛍光ペン『キラリッチ』では開発者の入社のエピソードも紹介するなど、工夫を凝らしたプレスリリースが光る。情報発信力は情報収集力でもある。
ラメ入り蛍光ペン『キラリッチ』のリリースでは開発者の横顔を紹介しています。

『キラリッチ』2015年4月24日発表のリリースの一部

『キラリッチ』のリリースを作るのために社内で情報を集めていた時でした。開発者の女性が「子どもの時から作りたかったペンだった」という話が耳に入ってきました。

そこで研究所に足を運び、直接本人から話を聞きました。とても面白く、ストーリーとして多くの人に受け入れられるのではと思い、紹介しました。

実はこれまで社員情報や開発に関することはあまり積極的には外部に出していませんでした。それがきれいな線が引ける蛍光ペン『ジャストフィット』(14年8月発売)、芯が折れないシャープペン『デルガード』(14年11月発売)のヒットで積極的に情報発信していこうと社内の機運が高まり、『キラリッチ』のリリースが開発者の写真を載せた初めてのケースになりました。

『キラリッチ』の記事では商品だけでなく開発者にも触れたものも多く見られ手応えを感じました。

具体的にどのようにリリースを作成しているのですか?

ラメ入り蛍光ペン『キラリッチ』

社内取材では商品ごとに自分でワークシート(取材メモ)を作り、リリースに活用しています。商品に合わせて「市場背景」「生活者の要望」「技術」「苦労」「競合」などの項目を作り、それに沿ってインタビューをします。

『キラリッチ』のリリースで「ペンよりも化粧品を意識したもの」と商品の特徴を説明しました。これは企画担当から聞いた「ターゲットである中高生は、見た目は大人っぽいものを好む」といった話の中で印象に残った言葉がもとになっています。

開発者や企画者から出てきた言葉をなるべくリリースでも使うようにしていますね。ただ、専門用語など世の中的に分かりにくいと思ったら私の方で言い換えるケースもあります。

最近のリリースでは開発者に限らず、商品開発の背景を盛り込むようにしていますね。

■『ジャストフィット』
ペン先がしなり紙面に密着することで、きれいな線が引ける蛍光ペン。
2014年8月発売

広報を担当して2年半になります。広報は初めてで社内に広報の手法やノウハウもなく、手探りで取り組んできました。その間、取材を受けながら気付いたのは開発の経緯や背景といったところを、記者の方から聞かれることが多いということです。

最近の筆記具は機能性のあるものも少なくありません。商品がどんな背景で開発されたのか、その機能や技術はどのようにして生まれたのかについて関心が高いようです。

メディアに聞かれることは読者や視聴者の方が興味のあることだと思います。商品そのものだけでなく、商品の背景に対して一般の方が関心があるということに、私も含め社内全体が気付いたわけです。

『ジャストフィット』のリリースには、開発に関する記載はありませんが、「ジャストフィットの技術」という項目を立てて、「ペン先を軽い力でしならせるために、柔らかい素材であるナイロンを使用」するなど、どんなふうに作られているかについて触れました。これをご覧になった記者の方から取材を受け、産経新聞の「人気商品 開発ヒストリー」で取りあげていただきました(15年1月18日)。

さらに記事は「Yahoo! トピックス」にも掲載され、販売店様やお客様からの問い合わせが相次ぎました。商品も一時、品薄になるくらい売れ行きが伸びました。「Yahoo! トピックス」への掲載は初めてで、これをきっかけに商品背景を含めた情報を積極的に発信していくことになりました。

メディア対応ではどんな点に気を配っていますか?

記者の方とお話する機会をなるべく多く持つようにしています。商品説明をする際に、記者の方がどのポイントで反応するのか、話しながらでもなるべくメモを取るなどして把握するよう努めています。

後でメモを見ながら、そのポイントを確認するとともに、どの辺の話が十分でなかったのか反すうするようにしています。というのも自分が考えるアピールポイントと記者の方のポイントがずれている場合もあるからです。

広報として先入観を持たずにどのポイントがメディアに響くか、判断していくことが大事だと考えています。

2015年上期のヒット商品番付(日経MJ)に『デルガード』が入るなど、ヒット商品がメディアに頻繁に取りあげられています。

■『デルガード』
筆圧や書く角度に合わせて芯をガードする新機構を搭載。芯が折れないシャープペン。2014年11月発売

商品発表会はほとんどしていません。リリースで注目を浴びたいと考えています。

14年6月発売の『水拭きで消せるマッキー』から始めたのがPR動画です。主に使用シーンを分かりやすく説明するために作成しました。これをご覧になったテレビ局の方がこの動画をもとにVTRを編集され、情報番組で使われました。

ここ数年、文具ブームと言われ、文具評論家の存在もクローズアップされています。最近では若い女性の評論家も増えてきました。

こういった文具評論家の方に当社の商品をメディアやブログで紹介していただくために、リリースをお送りするだけでなく、実際にお会いして説明させていただくこともあります。

ユーザーとの交流も盛んです。

筆記具はお客様にとって大変身近なものゆえ、強いこだわりを感じるものとなっています。お客様と交流する中での発見は広報としても貴重です。お客様から声をいただき、こちらからもお客様にお伝えすることはとても大切なことだと思います。

例えば、こちらが想定していない使い方や楽しみ方をされているお客様に学ぶことが多いですね。それを他のお客様やメディアの方にお伝えするようにしています。

私自身、店頭に足を運びお客様がどう商品を使われているか観察したり、時にはお客様の会話に耳をそばだてたりして情報収集することもあります。こうして集めた情報が取材に役立つことも多いのです。

手書きのよさをPRしたりイラスト教室を積極的に開催したりしています。どんな狙いがあるのですか?

『サラサクリップ』を使い、しおりやカードにイラストを描く「ボールペンでかんたんイラスト教室」

イラスト教室は手書きのよさを知ってもらうため、14年9月から始めてこれまで5回開催しました。当社のジェルボールペン『サラサクリップ』を使い、イラストレーターのカモ先生の手ほどきを受けながら、ポストカードやしおりにお好きな絵を描いてもらっています。もちろん作品はお持ち帰りいただけます。

親子連れだけでなく社会人の姿も目立ちます。社会人の方は「自分の手帳を飾りたい」「社内のメモにイラストを添えたい」と参加されているようです。

■『サラサクリップ』
鮮やかな発色でサラサラとした書き心地のジェルボールペン。2003年発売以来、12年間で累計販売本数は約4億本

『サラサクリップ』はサラサラとした書き味が特長で、色数も豊富で全37色あります。イベント後の売れ行きが大変よく販売面でも効果が出ています。

デジタル化の進展で手書きの機会も減ってきたように思われていますが、近年、手書きの良さが再認識されており筆記具の市場も微増傾向にあります。この点はメディアの方にもよくご質問を受けるので、当社の手書きに関する調査や文部科学省の調査などデータを挙げて説明できるようにしています。

最後に広報・PR活動の課題と展望について教えてください。

情報収集がまだ足りません。お客様と接する機会が少ないのもありますが、商品をどのように使われているか、商品をどう思っているのか、そういった情報を取り入れていく必要があると考えています。

当社の折れないシャープペン『デルガード』は中高生向けの商品ですが、ある時「最近では大人の方の購入が増えているのではないか」と記者の方に指摘されました。これに対してデータを示せず忸怩たる思いに駆られました。広報はメディアのさまざまな切り口に対応できるようにしていかなければいけません。

ヒット商品をきっかけに、積極的に情報発信していこうと社内の雰囲気も変わってきました。以前は社内での広報室の存在感は薄かったのですが、今は社内の各部署から「どうしたら記事化されるのか」と相談を受けることもあります。

情報が広報に集まってくるようになりましたが、これからも社内取材に駆け回るスタイルは変えないようにしたいですね。

<ゼブラ株式会社 > 創業:明治30年3月8日
「1人広報」として取材対応からリリース作成、ツイッターとフェイスブックの運営まで担当する池田さん。「SNSはファンを長期的に育成すること、ファンとコミュニケーションを取ることが目的です。商品の紹介というよりはファンと“一緒になって文具を楽しみましょう”という意図で行っています」と話す。