ケーススタディー: アシックス様 (2015年4月号掲載)
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(左) 株式会社アシックス
グローバルプロダクトマーケティング統括部ライフスタイル部長 兼 アシックスジャパン株式会社 ライフスタイル事業部長
庄田良二氏
(右) 株式会社アシックス
グローバル広報室 東京広報チーム
マネジャー 長谷川雅代氏
3ブランドできめ細かいマーケティング
庄田: アシックスのこだわってきた技術がいま「クール」だと言われるようになってきました。特に欧米において、「オニツカタイガー」ブランドは「スタイリッシュでクール」であるという認知をいただいています。
2011年にオニツカタイガー事業部(現・ライフスタイル事業部)が発足し、「オニツカタイガー」と「アシックスタイガー」の2ブランドの商品企画、広告宣伝、販売などを一貫して行い、ブランディングを展開しています。
■「オニツカタイガー」
創業者の鬼塚喜八郎氏が1949年から77年まで製造していたスポーツブランドで、2002年に復刻。新たにファッションブランドとして国内外で本格的に展開している。シューズやアパレル、アクセサリーを提案し、世界中の若者を中心に人気を集めている。■「アシックスタイガー」
1980年代から90年ごろに人気を集めた各競技用のシューズを、カジュアルなデザインを取り入れるなどアレンジを加えて復刻。国内外のスポーツライフスタイル市場に向け、2015年1月から本格展開している。中でも90年に発売した衝撃緩衝材を搭載し靴底を厚くした『GEL−LYTE』シリーズの復刻は話題になった。商品発表会で復刻された「アシックスタイガー」をアピールする尾山基社長CEO
パフォーマンスの「アシックス」とファッションの「オニツカタイガー」との2ブランドで補えない部分が出てきたのを感じていました。
スポーティーテイストの強いマーケットが以前に比べ拡大しています。この部分を積極的に獲得していくためのブランドが今回復刻した「アシックスタイガー」です。
立ち上がりは海外で支持されている『GEL−LYTE』シリーズを軸に展開していますが、今後エボリューション的なものを加えたラインナップを考えています。「アシックスタイガー」についてはリローンチして初めての展示会を6月に国内で開く予定です。
3つのブランドを擁することによって、きめ細かいマーケティングを行うことができるとともに、ターゲットも明確になってきました。
「オニツカタイガー」は、コーディネートとしてスポーツテイストを1つ組み入れるというケースが多いのに対し、全身スポーツスタイルの中に取り入れるというのが「アシックスタイガー」だと思います。
「アシックスタイガー」では「この商品のこの色が欲しい」とプロダクトを指名でお買い求めになるケースが多いので、ターゲットはスニーカーフリークのお客様を想定しています。「オニツカタイガー」はブランド全体に関心のあるお客様が多く、ショップで実際に商品をご覧になって気に入ったものをご購入されるようですね。
ファッション・ライフスタイルを中心とした幅広い媒体向けに開いたリローンチパーティー
一般のお客様にとって「アシックスタイガー」というブランドがどういうものなのか分かりにくい面があったのではないかと思います。
1月23日に都内で商品発表会とリローンチのパーティーを開いたところ、「こんなにおしゃれなのか」という驚きの声がたくさん聞かれました。
パフォーマンスの「アシックス」との違いなどを感じていただき、「アシックスタイガー」というブランドを明確に理解していただくという狙いは成功したと言えると思います。
『オニツカタイガー EDR 78』
コート系シューズがすぐ完売するなど、定番以外の人気も高いですね。相乗効果で定番である『MEXICO 66』も好調を維持しています。
また、紐を用いずに履くスリッポンが女性に受けています。欧米では『MEXICO 66』の紐をゆるくして履く方が多いですね。スリッポンはゆったりとしたスタイルを好む方にお買い求めいただいているのではないかと思います。
国内でも「オニツカタイガー」の認知度が上がってきました。それは旗艦店である「オニツカタイガー表参道」の成功が大きいですね。
近年は広告以上に口コミによって認知が広がっていきます。「表参道のショップにこんな商品がある」とSNSなどで発信され、それをご覧になって、アジアからも大勢のお客様がいらっしゃいます。
3月にオープンした大型路面店
「オニツカタイガー渋谷」
「オニツカタイガー」ではプロダクトではなくショップを主軸にしたマーケティングを行っています。ショップマーケティングは単純にショップの数を増やしたり拡大したりすればいいのではありません。都内のショップでは内装にある程度統一感を持たせるなど魅せるショップづくりに力を入れていますが、どれだけそのショップの魅力を掘り下げることができるかどうかが、ショップマーケティングのカギになるとみています。
グローバル企業として時流やトレンドからのお取りあげが多くなっています。一つの記事が次の取材を生むような印象を持っています。
メディア戦略としては話題性をつくることがポイントだと考えています。やはりマーケティングの基本でもある「他でやらないこと」をするということは大事です。そこに「アシックスらしさ」を常に忘れないでアピールしていきたいですね。
一言で言えば技術の高さ、クラフトマンシップです。
「オニツカタイガー」のヨーロピアンな要素は日本の技術を基にしたもので、日本の高い技術が海外で受け入れられて日本に“逆輸入”されました。アシックスの技術やものづくりをいつも念頭に置いてブランディングしないといけないと思っています。
長谷川: 一般紙の掲載が増えているのを実感しています。さまざまな媒体からのお問い合わせも増えています。
背景にあるのは当社が好業績を出しているということもあるかと思います。世界を舞台に業績を伸ばす企業としての記事を多く拝見します。ファッションもそうですが、スポーツや健康といった話題は多くの方の関心を引き、記事として取りあげられやすいのではないでしょうか。
メディア向けのリリースはグローバル広報室で作成していますが、事業部門と密に連携しながら情報発信をしています。
グローバル広報室は神戸本社と東京に分かれており計8人体制で業務を行っています。神戸本社では企業広報がメインで、東京は商品寄りの広報になりますね。広報担当者はそれぞれランニングや「オニツカタイガー」といったカテゴリーを受け持っています。
庄田: ブランド認知において広報室のサポートは大きいですね。最近ではテレビの取材も多くなってきました。
インバウンド関連での取材を頻繁に受けます。海外からのお客様が買い物で何を求めているのかアンケートを取ったところ、「オニツカタイガー」を挙げられるお客様も多いと聞きます。都内のショップでもアジアから来られるお客様の増加が目立っています。
「オニツカタイガー」「アシックスタイガー」では、それぞれのブランドの方向性を整理して明確化していく必要があると考えています。「オニツカタイガー」ではファッションを、「アシックスタイガー」はスポーツスタイルをより前面に出していきたいと思っています。
秋から来年に向けて皆様があっと驚く商品をご用意しています。ご期待ください。
長谷川: 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と当社は4月6日、「東京2020 ゴールドパートナー」に関する契約を結び、メディア発表しました。製品・サービスの提供を通じて、自国開催の東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が、世界に誇れるものとなっていくように貢献していきたいと思います。
スポーツへの関心もますます高まることが予想され、コア事業であるランニングや他のスポーツにも興味を持ってもらえる好機ととらえています。多くの競技をサポートしながら幅広く発信していきたいと考えています。