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ケーススタディー: 東急不動産様 (2014年10月号掲載)

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東急不動産
経営管理本部
広報・CSR推進部
広報グループ
大久保崇氏

東急プラザ 蒲田 地元の声に応え「ランドマーク」復活
「都内で唯一の屋上観覧車」フックに
25年ぶり大規模リニューアルPR
駅ビルや百貨店の屋上遊園地が閉鎖されていく。東急プラザ 蒲田は2014年3月、商業施設の改装に伴い屋上遊園地の営業を休止。遊園地には「蒲田のランドマーク」として46年間、親しまれてきた観覧車があり、事業者の東急不動産は存続の是非を検討した。続々寄せられる「残して」の声に企業が動いた。
「都内で唯一の屋上観覧車」として親しまれてきました。復活を決めた一番の理由は何ですか?

2代目観覧車に別れを惜しむファン

3月2日の営業休止の時点では最終的に観覧車をどうするのかはまだ決まっていませんでした。

2月24日から3月2日までの間、屋上遊園地を無料開放したところ、約1万2000人の方に来ていただきました。最終日は雨にもかかわらず、観覧車に乗るための行列が屋上から2階の階段にまで伸びていました。その光景が今でも目に焼き付いています。

思い出が書き込めるメッセージボートには「観覧車がなくなったら寂しい」「昔、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に来ました。観覧車を残してほしい」といった声が数多く寄せられました。

遊園地を運営するナムコさんとも一緒に観覧車の今後について話し合いました。

「蒲田のランドマーク」として観覧車を残すべきではないかという結論に至ったのは、目新しいものをつくるよりも今までずっと愛されてきたものを残した方が地域にとっても施設にとってもいいのではないかという判断からでした。

メディアにも大きく報じられました。

休園前にこれだけの多くのお客様に来ていただき、メディアも一般紙からテレビまで大きく取りあげてもらいました。私たちも反響の大きさにあらためて屋上遊園地や観覧車の価値について考えさせられました。

リニューアルオープンに向けてどんな広報を展開されたのでしょうか?

観覧車を残すことが決まり、リニューアルオープンまでに新しい観覧車の認知度を高めていくことが広報に課せられた重要課題でした。

まず8月に観覧車が残るということをリリースを出してお知らせしました。同時に地域の方々と一緒になって盛り上げることができればと考えたのが、観覧車の新しい名称を募集するというアイデアでした。

1カ月後、9月に約3000通の中から選んだのが「幸せの観覧車」です。10月オープンに向けて徐々に盛り上がっていくように段階的に布石を打っていったのです。

復活した「幸せの観覧車」

8月のリリース以降、一般紙や専門紙で記事化されていって、新しい蒲田の観覧車に対する認知度が深まっていったのではないかと思います。

10月7日に内覧会、9日にオープンセレモニーをしました。内覧会・オープンともに来場されたメディアの数はそれぞれ30媒体に及びました。

東急プラザ 蒲田は全国からの集客を期待しているわけではなく地域密着型の商業施設なので、リニューアルオープンがメディアの注目を大きく集めたことは非常にうれしかったです。

リニューアルオープンでは店舗のテープカットより先に、屋上遊園地でのセレモニーを行いましたね。

テープカットのテープにも観覧車のイラストがある

9日のリニューアルオープンでは観覧車への注目度が高いということがわかっていたので、メディアの方にゆっくり観覧車を見ていただけるよう一般のお客様が来場する前に屋上観覧車前でオープンセレモニーを開いたのです。

屋上セレモニーでは弊社社長の挨拶の後、CMキャラクターを務めるSHELLYさんとゲストのLiLiCoさんの観覧車トークもありました。それから1階広場(施設入口)に移りテープカットをしました。カット時には3000人のお客様に並んでいただき、カットが終わるとお客様がどっと館内に流れる様子も取材していただきました。

屋上セレモニーは観覧車をバックに行うなど、絵になるカットを撮影していただけるようにセッティングしました。観覧車をフックにして25年ぶりになる全館リニューアルについてもしっかりアピールしました。

リニューアルされた屋上遊園地「かまたえん」をどのような場所にしていきたいとお考えですか?

屋上遊園地に新たに設置されたEVキッチンカー

観覧車をただ残すだけではなくて何かプラスの価値を加えたいと思いました。

屋上広場にはお子様が喜ぶような大型のトランポリンを入れたり、東急電車を模した乗り物「エコライド」を入れたりしました。

お子様だけでなく大人も楽しめるようにキッチンカーが提供する飲食スペースも設置しました。

リニューアルオープンして1カ月が経ちましたが、屋上遊園地にはリニューアル前の倍くらいのお客様に来ていただき、ベビーカーを押したファミリー層の姿が目立ちます。お年寄りや親子の3世代が楽しめる空間を提供していきたいと考えています。

「おじいちゃん、おばあちゃんも乗った観覧車がまだあるね。乗ってみようか」「キッチンカーで食べたランチがおいしかったね」と思い出をつくってもらえるように、引き続きウルトラマンショーや夏にはビアガーデンも計画するなどさまざまなイベントをどんどん仕掛けていく予定です。

今後、まちづくりやSC事業をどう展開されていくのでしょうか?

蒲田のケースでは観覧車を活用して商業施設の新しい魅力を訴求しました。今までの財産をどう活かしていくのかがポイントでした。

この手法がそのまま他の商業施設でも使えるかといえばそれは違います。その土地土地にあった一番地域性のあるものを最大限に活かしていくというのが東急不動産の基本的なスタンスです。

東急プラザ 表参道原宿では「おもはらの森」という広場をつくり、周囲のケヤキ並木と緑の調和を図っています。また、大阪・森ノ宮に来春オープン予定の商業施設、もりのみやキューズモールBASEでは球場跡地ということもありスポーツの要素を取り入れ、屋上でランニングできる「エアトラック」を導入します。

私たちが目指しているのは、それぞれの立地に一番ふさわしく地域に長く愛されるような商業施設をつくることなのです。

<東急不動産株式会社> 設立:1953年12月17日
「観覧車を残すと決まってから8月から10月までのPRプランの設定が難しかったですね。観覧車だけでなく初出店となるテナントや屋上のキッチンカーなど新しい蒲田の魅力をメディアに取りあげていただけるよう誘導したりお声掛けをしたりしました」と大久保さん。