ケーススタディー: キユーピー様 (2014年9月号掲載)
(写真左から)
キユーピー
広報部 メディアコミュニケーションチーム
田中友紀氏
広報部 広報企画チーム(マヨテラス企画担当) 佐藤香奈子氏
広報部 食育推進チーム(マヨテラスコミュニケーター) 村居綾子氏
経歴異なる社員がフルアテンド
佐藤: 仙川工場は2011年に生産を終了しました。その跡地にグループの研究開発部門やオフィス機能を集め仙川キユーポートを開設しました。
仙川工場では1961年から工場見学を実施してきました。地元の方々から工場がなくなったことを惜しむ声があり、キユーピーとしても工場見学がお客様と触れ合える貴重な場でもあったので、工場がなくなってもその代わりになる施設をつくり引き続きお客様とダイレクトにつながりたい、その思いを形にしたのがマヨテラスです。
キユーピーでは家庭の台所の延長が工場であるととらえ工場見学を「オープンキッチン」と呼んでいます。「オープンキッチン」を通じてお客様とのコミュニケーションを積み重ねてきました。
キユーピーの工場見学はお客様とコミュニケーションを図りながら進めていくのが特長です。こうした姿勢に「楽しかった」とお客様から評価をいただいてきました。マヨテラスでもこうしたコミュニケーションを重視したいと考えました。
マヨテラスも工場見学と同じように、幸せな食卓に貢献したいという思いは共通しています。日々の食卓をより楽しいものにするにはどうしたらいいのか。そのきっかけをどうしたら与えることができるのだろうかと一から組み立てていきました。
「キユーピーと言えばマヨネーズ」というイメージは大変ありがたいと思っています。そこでマヨネーズをテーマに楽しくマヨネーズのことを知っていただくとともに、キユーピーのものづくりの姿勢などをお伝えできるような施設づくりを目指しました。
工場で実際に行っているエアシャワーは子どもたちに人気
見学施設をつくることが決まり、どんな中身にしていくのかというところから話がスタートしたわけですが、マヨネーズのいろんな情報をお伝えする場合に、展示物を多くつくって、それをご覧いただくという方法もあったと思います。
しかし、そうではなく工場見学と同じようにお客様とコミュニケーションを取りながらお伝えするという形をとりたいと思いました。その役割を担うのがコミュニケーターになります。
「原料を入れ間違えたかも」と考え始めたら不安で夜も眠れない……(上)。そんな不安を払拭するために開発されたのが二次元コードを使った確認システム(下)
村居: コミュニケーターは全部で7人います。女性が多く6人で男性が1人です。
私は研究所でマヨネーズの開発を6年やりました。コミュニケーターの多くはお客様と直接接する仕事をしていたわけではなかったので、コミュニケーターとして働きながら日々学んでいるところです。
工場見学の思いを引き継いでいきたいと、工場見学の経験のある同僚や全国の工場見学の担当者にも「どんな思いでやっているのか」など話を聞きました。マヨテラスではお客様それぞれに合った、お客様が一番知りたい情報をお伝えできるように心掛けています。
田中: コミュニケーターが複数いるのでそれぞれバッググラウンドが違い、説明にも個性が出ますね。
マニュアル通りに説明できればそれでいいのではなく、説明する内容はお客様に合わせて適宜変えられるようにしています。何度でも来てみたいと思ってもらえるような工夫の一つです。
村居: お客様には「前はこんな仕事をしていました」という話をよくします。私自身開発に携わった『キユーピー ライト』についてお話しさせていただくことが多いですね。思い入れが強いので、ついつい力が入ってしまいます(笑)。
この前、2回来ていただいたお客様から「1回目と2回目で内容が違ったので新しいことを知ることができて楽しかった」と感想をいただきました。
小学生とお年寄りの方では話し方ももちろんですが、内容自体も変えます。例えば、コレステロールの話は大人の方は興味があると思いますが小学生は違いますよね。小学生にはキユーピー人形の話にするなど、お客様に合わせて話す内容を変えています。
私だけでなくコミュニケーターの多くが話したいことがたくさんあるので90分では足りないと思っているのではないでしょうか。
よく見てみると……隠れキユーピー人形が
佐藤: 施設の設計・施工は乃村工藝社さんにお願いしました。先ほどお話しした食卓につながる場にしたいということや、楽しい時間が過ごせることなどこちらの思いをしっかり伝えて、構想から約2年半、パートナーとして一緒に作り上げていきました。
田中: 乃村工藝社さんはとても時間をかけてさまざまなセクションの社員からヒアリングをされましたね。品質保証や海外部門の社員とも話し合いを持ちましたし、工場を実際に見ていただきました。
佐藤: 社員同士の会話や雰囲気などからキユーピーはこんな会社だというイメージやキーワードを組み立てていかれたようです。
マヨネーズの容器を横にした「マヨネーズドーム」や施設に掲示した品質へのこだわりや従業員の思いを表現したイラストがあるのですが、そういったアイデアはいずれも話し合いから生まれました。
工場では体験できない空間づくりを目指して、従業員の思いをお伝えできればと細かいところまで作り込みました。
田中: マヨテラスの広報活動は通常の新商品などのリリースとは異なり、地域の媒体にも取りあげていただきたいと考え、新聞社の支局や地域のラジオ局などにも積極的にお声掛けしました。
まずマヨテラスができるというリリースを今年2月に施設のパースやロゴを入れて出しました。4月には予約を受け付ける専用サイトを5月に開設することをお伝えし、この段階で施設の写真も合わせて公開したところ、多くの媒体で取りあげていただきました。
5月のメディア内覧会の来場者は120人以上になりました。内覧会では短縮版ではありますが記者の方にコミュニケーターによるアテンドを体感していだたきました。オープンに向けて露出を図ろうと内覧会の資料としてオープン当日に近隣の小学生を招いて開催する「割卵式」の告知チラシを同封しました。
田中: 仙川工場は調布市内、世田谷区の小学校からも社会科見学に活用していただきました。
工場がなくなるという話を知った地元の小学校の先生方から「これから子どもたちをどこに連れて行けばいいのか」という声が上がったと聞きました。私たちキユーピーは地域なくしては成り立たない、という思いを新たにしました。
オープン当日には近隣の小学5年生50人ほどが来てくださって盛り上げてくれました。「心に残るオープニングだったね」と好評でした。
佐藤: 後日、小学校にお礼に伺ったのですが、オープニングの様子を壁新聞にしてくださって職員室の前に掲示してありました。とても感激しました。
田中: 1日にお受けする人数が限られており、心苦しく思っています。
完全予約制ということもありますが、来場者数が何人に達したということよりも、キユーピーのものづくりへの熱意やどういった思いで商品を作っているのかなど、コミュニケーターを通じてどれだけ感じ取っていただけるかということの方を大事にしています。
佐藤: 「キユーピー キッチン」を使用した通常の見学に加え10月には「ハロウィンティータイム」というイベントを4回開いています。ハロウィンの雰囲気を楽しみながらマヨネーズの裏技を使い、ふんわりサクっとしたホットケーキを焼いてティータイムを過ごそうという試みです。
マヨネーズを使って色々な食の楽しさをお伝えできるイベントを今後も企画していきたいと思っています。