ケーススタディー: メットライフ生命様 (2014年6月号掲載)
メットライフ生命
ブランドマーケティング部
栗原美歩氏
ブランド認知・親しみやすさ広がる
飛行船は言ってみれば「動く看板」ですが、単なる広告媒体を超えて「生き物」ですね。運航スタッフ(クルー)がよく「ヘリウムガスを入れた瞬間、生き物になる」と言います。
24時間365日、3交代で面倒をみています。係留中は風や雪などに注意しなければならず、風が強ければ飛ばない、飛行しても雷雲があればすぐ帰ってきてしまう、本当に手のかかる子どものようです。
米本社では30年以上、飛行船を運航しています。「メットライフ」というブランド認知において大変効果が上がっており、日本でも2010年11月から飛行船の運航を始めました。
皆さまからは飛行船を見るとワクワクする、元気になるという声をいただきます。今後も、さらに多くの方にご覧いただけるよう日本全国を飛行させていく予定です。
私たちは、生命保険を飛行船と同じように前向きなものと位置づけています。生命保険は病気など万が一の際に経済的保障を提供するものですが、最適な保障を備えていただくことでお客さまに安心してより自分らしい人生を歩んでいただけると考えています。
東京上空をふわり(2010.11)
飛行船は全長約40メートルあり風向きに合わせて離着陸します。おおよそ200メートル四方の平坦な土地で、電線がないというのが係留地の条件です。
日本は元々山がちな地形で飛行船が係留できる土地が少なく、最近では係留できる広い土地を確保することが難しくなってきました。運航や移動コストに加え、燃料のヘリウムガスの高騰もあって、飛行船の運航が少なくなってしまいました。ヘリウムガスは天然資源なので減った分を補充したり、空気が混じり純度が下がった場合には浄化したりして、エコを意識してできる限り長く使う工夫をしています。
飛行船パイロットは特殊な免許が必要で、飛行船自体少なくなったこともあり、世界でも30人弱しかいません。宇宙飛行士よりも数が少ないと言われています。
全部で1275件の応募をいただきました。まず1次選考で15点を選びました。その後、一般投票を経て5点にしぼり、いま最終選考中です。7月にある耐空検査のタイミングで新しいデザインへ変更し、8月から飛行を開始する予定です。
長崎の夜間飛行(2014.2)
ホームページで翌々月くらいまでの飛行スケジュールを公開していますが、天候に左右されるためツイッターで毎日の運航状況をお伝えしています。ツイッターでは、運航情報以外にも、飛んでいない地域の方がご覧になっても楽しめるように、飛行船に親しみを持っていただけるような内容を心掛けています。
昨年の秋からタロウがクルーの仲間入りをしました。移動用のトラックに迷い込んだのがきっかけです。
今年、長崎でタロウが一時行方不明になる“事件”がありました。クルーは山口まで移動しなければならず、ツイッターのフォロワーさんにお願いして探していただき、後日クルーが引き取りに戻りました。タロウ人気はクルーが嫉妬するほどです(笑)。
ツイッターを通じクルーとフォロワーさん、さらにはフォロワーさん同士の交流も生まれているようです。
長崎での公開イベント(2014.2)
今までに、北は北海道、南は長崎で公開イベントを行いました。週末に開催しているのでご家族で遊びに来られる方が多いです。ゴンドラの中にも入れますし、操縦席に座って写真撮影もできます。お子さまが目をキラキラさせていますね。パイロットやクルーと直接交流しながら飛行船について知っていただく機会になっています。
広告としての接触時間や深さという点で、テレビ・新聞広告よりもイベントの方が効果があると感じています。企業に親しみを持っていただくという点で飛行船は大変価値があると思っています。
近年、スポーツイベントへの協賛という形で「メットライフ」というグローバルブランドの浸透に力を入れています。メットライフは、昨年の「WORLD BASEBALL CLASSIC」や、今年のバドミントン「BWF ワールド・スーパーシリーズ」のグローバルスポンサーになっています。
ブランド浸透に向けては、主にテレビ・新聞広告による「メットライフ」の認知度向上を目指した取り組みと、イベントや飛行船等を通じたファンづくり、という2つのアプローチを行っています。
7月から「メットライフ アリコ」から「メットライフ生命」にブランド名が変わりました。飛行船やスヌーピーを通じて好感をもっていただきつつ、これまで以上に認知度を上げていくことが直近の課題ですね。
飛行船の耐空検査後のスケジュールは現在調整中ですが、まだ飛行していない日本海側などの地域での運航を検討しています。飛行船も新デザインになるので、多くの地域の皆さまに見ていただけるようにスケジュールを組んでいきたいと考えています。