ケーススタディー: フィリップス エレクトロニクスジャパン様 (2013年12月号掲載)
株式会社フィリップス エレクトロニクスジャパン
ブランドコミュニケーション部 スペシャリスト
土屋美寿々氏
消費者の心つかみ販売目標を4倍に
4月の発売から年末まで、おかげさまで年間を通してコンスタントに露出がありました。テレビでも同じ番組に何度も取りあげていただいたこともあります。
実機も約30台ほど用意していますが、ずっと貸し出しが続いている状態です。
中にバスケットが入っており食材を載せて調理するだけ
発売時以外にリリースも出していませんし、とりわけこちらからの広報的な仕掛けもほとんどしていません。
メディアの方がおっしゃるのは「分かりやすさが魅力」ということです。これまで世の中になかった商品ですので、メディアでもさまざまな切り口から取りあげられるようですね。
いま海外家電が面白いとか、最近では後発薬にあやかって「ジェネリック家電」という表現もありますが、そうしたカテゴリーで『ノンフライヤー』が後発製品と比較されることもあります。露出が露出を呼んで、それが途切れないということに驚いています。
使い方だけでなくデザインもシンプル
グローバルでは『エアーフライヤー』という名称で販売されヒットした商品です。海外ではオーブン的な使い方も訴求していますが、日本向けには「油を使わないで簡単に揚げ物ができます」とあえて機能を絞り込んでPRしました。ヘルシー志向という時流にも合っていたんだと思います。
空揚げやとんかつなど揚げ物のレシピは海外に比べて日本は多いですよね。潜在的なニーズがあったと言えるのではないでしょうか。
日本では画期的な単機能家電であるということを前面に出して差別化を図ったことがやはり大きなヒット要因かもしれません。
それと商品がシンプルな設計であること、主婦だけでなくシニア層でも使いやすいことは大きなメリットだと思います。
社内では「コンセプトを絞り込みすぎでは」という声もありましたね。
国内市場では多機能のオーブンレンジが話題となっていましたが、発売前に行った弊社の市場調査で、その機能を使い切れていないという声が多かったんです。裏付けとなるデータがあったとはいえ、受け入れられるかどうか一か八かの賭けみたいなところがありました。
揚げ物以外にもカップケーキなどいろいろできるんですよ。それを削ぎ落して「引き算」でメッセージがシャープになり、結果的に分かりやすくなったというのはあります。
量販店さんを中心に非常に多くの引き合いがありました。発売後の安定供給を優先するため、発売日をずらしたほどでした。
販売目標については当初5万台を想定していましたが、ものすごい反響で6月には上方修正し、昨年1年間で20万台を超える勢いで推移しました。
発売直後の販売スピードは世界一で、垂直立ち上げとなった日本の事例は成功モデルとして他国からも注目されています。
商品発表会での試食コーナー。空揚げが一番人気だった
調理家電として少しサイズが気にはなりましたが、発売前に私も『ノンフライヤー』を使ってみたところ、パサパサではなくどれもおいしくできて、しかも簡単なのでこれは大きな評価をいただける商品だと手応えを感じました。
発表会の試食では空揚げが一番人気でした。鶏肉の量や調理時間など工夫を重ね、一番おいしい状態で記者の方にお出しするなど見せ方にはこだわりました。
現在のレシピサイトの一部。「スモークサーモンのキッシュ」や「ラスク」など約100種類を公開している
製品には日本オリジナルレシピを同梱しています。最近では各出版社さんからレシピ本も出ています。
現在は普及の段階と位置付けて、HPに洗い方など細かい説明も載せるようにしました。特設サイトのレシピも拡充して「揚げ物以外にもこんなものが作れます」とアピールしているところです。
2013年は女性用の美容家電にも再参入し、家電事業のポートフォリオが増えました。『ノンフライヤー』のおかげでフィリップスのブランド認知も上がっています。
11月に新ブランドライン“innovation and you”を発表しました。この言葉の通り、私たちフィリップスはイノベーションを通して人々の暮らしをよくしていきたいと考えています。
今後も生活に密着した製品を出していきたいですし、PRでもこの商品によって暮らしがどう変わっていくのかについてきっちりお伝えしていきたいと思っています。