ケーススタディー: 船橋屋様 (2013年8月号掲載)
株式会社船橋屋
営業部 企画・広報担当
田島麗子氏
メディア戦略も企業経営の視点で
創業200年に当たる2005年に入社しました。現在の代表である8代目の渡辺は家業を継ぐまで銀行マンだったこともあって、企業経営の視点から合理化を進め、新しいことにも取り組んでおり、その姿勢に魅力を感じました。広報もその一環として置かれたのです。
これまで取材対応は本店の店長が主に行っていました。創業200年を記念したカフェ「こよみ」のオープン後、雑誌を中心に取りあげていただくことも増えてきました。
店長業務の中での対応はややもすると片手間になってしまいます。これを機会に広報担当者を置こうということになり、本店の販売業務についていた私に声が掛かりました。ですが私は入社して1年経ったばかり、広報は一体何をすればいいのか全くわからない……というところから始まりました。
上/元祖『くず餅』。こだわりの原材料で絶妙な味わい
左/天草を煮出し固めて作る寒天が特徴の『あんみつ』
右/カフェ「こよみ」一番人気の『くず餅プリン』
本店の店長に同席して取材対応について学びました。取材にどう応じるのか、そのことだけしか頭にありませんでした。
それに馴れてきたある日、社長からこう声が掛かったのです。「広報はこのままでいいのか」と。この言葉の意味が初めは分かりませんでしたが、よくよく考えていくうちにもっと自分から仕掛けていくことが大切だと気づきました。
取材していただくということは、船橋屋のことをもっと多くの人に知ってもらえる機会であって、自分から仕掛けることとPRがつながるのではないかと社長の言葉で気づいたんです。そのためには取材の数を増やしていこうと思いました。
そこで以前取材していただいた方にあらためてご連絡しました。「こんな商品があります。また機会があれば取材をお願いします」とお電話を差し上げました。そこから記事化につながることもあり、身を持ってメディアとの関係づくりの大切さを実感しました。
そのころから広報に関する本を読んだり、広報セミナーや勉強会に参加したりするようになり、PRのノウハウなどを吸収しました。
広報として強い思いを持ち、的をしぼってPRしたことがよい結果につながったのでしょうか。2009年12月に日本経済新聞さんの「200年企業――成長と持続の条件」という連載記事に取りあげていただいたことがありました。
船橋屋も所属している東都のれん会という組合がございますが、「200年企業」の中にその東都のれん会の老舗仲間が掲載されていたんです。その会社に「書いた記者さんを紹介してくださいませんか」とすぐ電話をしました。それから話が進んで記事になりました。
その記者さんとは今でもお付き合いが続いていて今年1月には日本経済新聞特集面で「愛される会社」というテーマで大きく取りあげていただきました。
亀戸天神とともに歴史を重ねてきた本店
雑誌、ウェブ、テレビを全部入れると100件くらいになります。「こよみ」がオープンして『くず餅プリン』がヒットしたことも大きいですね。
商品取材が多いですが、亀戸の街特集の中で取りあげていただくケースもあります。近年は8代目へのトップインタビューも増えてきました。社長自身、外部との交流や人脈も多く、ぜひ経営革新について語ってほしいという依頼をよく受けております。
ウェブ担当を置き、SNSの活用に力を入れています。2011年にフェイスブックページを開設しました。お客さまとのコミュニティーサイト「船橋屋コミュニティー」も今年できました。
SNS等のウェブ戦略と広報・PRのメディア戦略があいまって今効果が出てきているのかなと思います。SNSは口コミ戦略の1つとして重視して取り組んでいます。ブロガーさんとのコラボイベントも行いました。
現在はパブリシティやSNSを中心に取り組んでいますが、まだできることはいろいろあると考えています。
SNSと広報がもっと連動していくことも課題の1つですね。例えば、工場見学や体験教室などを通じ“地域密着”や“食育”などを打ち出していけたらと思っています。
知ってもらうだけでなく、「理解」や「共感」につなげていく。こうした取り組みはすぐ効果が出るものではないですが、長い目で見てファンをつくっていくことが信頼につながりますし、信頼を積み重ねていくことが船橋屋の新しい伝統にもなっていくのだと思います。