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ケーススタディー: 森ビル様 (2013年6月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。

森ビル株式会社
広報室 室長
野村秀樹氏

六本木ヒルズ10周年、「周年事業」を効果的に発信
「ニュースだけでなく企画記事を」
メディア側の視点で素材提供
「周年事業」は企業にとって自社の存在感や価値観をあらためて示すまたとない機会だ。4月25日に開業10周年を迎えた六本木ヒルズ。「文化都心」をコンセプトに情報発信基地として存在感を高めてきた。10周年では「ニュースだけでなく企画記事を」――森ビル広報室の目標設定は明確だった。六本木ヒルズは世の中に何を示してきたのか、そこから浮かび上がる「磁力」が森ビルの考える六本木ヒルズ10年の歩みだという。
絶えず話題を提供してきた10年でした。

フランスのパフォーマンス集団「カンパニーオフ」が六本木ヒルズの街中で、開業10周年を祝う様々なパフォーマンスを繰り広げた。

六本木ヒルズは、森ビルにとって大変大きな意味を持つプロジェクトであるのはもちろんですが、これからの都市はこうあるべきだ、このような都市が必要なのだという、我々から世の中への提案でもありました。

六本木ヒルズの10周年にあたり、単純に施設が10周年を迎えましたというのではなく、六本木ヒルズがこの10年で世の中に何を示し、何を生み出してきたのか。メディア露出の戦略策定において、単なるニュース記事ではなく、企画記事としてしっかり取りあげていただこうと目標を設定しました。

まず、どのようなテーマや切り口があるのか、例えば「街づくり・再開発」や「経済効果」という視点、我々の街づくりのテーマでもある「環境」「安全」「文化」「コミュニティ」、そして「タウンマネジメント」などなど。

テーマごとに望むべき見出しのイメージやキーワードを想定しながら、客観的な数値やデータ等の裏づけ、関連情報、社内だけでなく外部も含めた取材対応者の設定など、メディア側の視点で情報を整理しました。

それらをまとめた一覧資料を手に、昨年12月から、年末のごあいさつも兼ねてメディアの方にご相談を始めたのが最初の動きでした。その後、記者の方々1人1人とコミュニケーションを取りながら、我々の切り口とメディア側の需要(興味)をこまめに、そして丁寧につないでいく。地道ではありますが、まさに広報における基本作業の積み重ねでした。

リリースも積極的に発信しましたね。

プレスリリースは、まず第1弾で六本木ヒルズ10周年の全体テーマとして「LOVE TOKYO」を打ち出し、その後も、10周年関連のイベントやコンテンツ情報など、タイミングを図りながら発信していきました。

「『東京の街』に関する意識調査」は、六本木の街の変化に関する一般の方の評価をまとめたものですが、前述の個別のメディアアプローチによる企画記事の進捗状況も踏まえながら、客観的裏づけとして、リリースを補足的に使う側面もありました。

活動の手応えは?

結果として、各紙でこれだけ大きく取りあげていただいたことは大変ありがたいことだと思っています。単発ではなく連載も多かったのですが、それだけいろいろな切り口があったということです。そして、記事には六本木ヒルズに関わっている方々がたくさん登場しています。

六本木ヒルズを舞台に、住民や地元の皆さん、テナントや街を訪れる皆さんが交流しながら、何か新しいものを生み出していく。そして人と人との絆が深まっていく。まさに六本木ヒルズの「磁力」の証として、そういった方々の生の声が記事の中で生き生きと表現されています。

今回の取材や記事を通じて、改めて私自身も六本木ヒルズが多くの人々に支えられていることを再認識しました。

「逃げ込める街」としても注目されましたが。

来場者数は10年で累計4億人超
「東京の磁力」としての六本木ヒルズ。多くの人を引き寄せて人と人をつないできた。

都市は人々のあらゆる活動の舞台であり、都市づくりにおいて「安全・安心」は最も重要なテーマの1つです。

六本木ヒルズは、かねてから「逃げ出す街」から「逃げ込める街」へを標榜し、ハード、ソフトの両面から積極的に防災対応を進めています。六本木ヒルズは自家発電により日常的に必要電力を賄っているのですが、東日本大震災の際に電力不足が懸念されたなか、その余剰電力を東京電力に提供したことを機に大きくクローズアップされました。

その後、世の中の防災に対する意識の高まりのなかで、メディア向けに通常非公開の発電プラントを公開、最新の耐震技術や備蓄倉庫の見学会を開催するなど、我々の安全に関する取り組みを積極的に発信しています。

防災の取り組みは、いかに生活や事業を通常通りに継続できるかというレベルへと世の中の意識、対応が大きく変わってきています。私どもの情報発信においても、決して単に自社の先端的な取り組みを宣伝するという意識ではなく、世の中の安全レベルの向上に貢献できるよう、その事象が持つ社会的意義を強く意識して、広報に取り組んでいます。

次の10年に向けてどんな取り組みを?

今や、国際的な都市間競争の時代です。熾烈な競争に勝ち抜くには東京の「磁力」をさらに高めていかなくてはいけません。東京に世界中から人や企業や情報を引きつけなければ日本は沈んでしまう。アジアの諸都市の追い上げに強い危機感を持っています。

「東京を世界でいちばんの都市にしよう」。これは、六本木ヒルズが10周年を迎える今年の元旦に掲出した新聞広告のコピーです。森ビルは、創業時から都市と真摯に向き合い、東京に愛情と危機感、責任感を持って歩んできました。これからも、東京の中心に位置する我々の戦略エリアにおいて、「磁力」ある国際新都心づくりを推進していきます。

現在、その新たな核として重要な役割を担う虎ノ門ヒルズの建設が着々と進んでいます。虎ノ門ヒルズを通じて、東京の魅力を国内外に発信していきたいと考えています。

<森ビル株式会社> 設立:1959年6月2日 資本金:670億円
広報室のスタッフは12人。業務は新聞をはじめとする報道メディア対応とPRツールなどの制作に分けられる。広報歴16年になる野村さんは「常に意識しているのは、どの切り口、どのタイミングで情報発信すれば最も世の中に響くのかということ。そのためにもメディアの方とのコミュケーションは大切」と話す。