ケーススタディー: 東京急行電鉄様 (2013年4月号掲載)
東京急行電鉄株式会社
社長室 広報部 広報課
課長補佐
矢澤史郎氏
東急グループ一体で情報を発信
2012年4月に、渋谷再開発のリーディングプロジェクトである渋谷ヒカリエが開業しました。
2010年以降、経営層からの強い要請もあり、渋谷ヒカリエを中心としたPRに本格的に取り組んできました。なかでも渋谷ヒカリエについては、単なる複合商業施設の開業ではなく、2027年まで続く渋谷再開発のリーディングプロジェクトと位置付け、広報活動を展開しました。
複数の施設で構成される渋谷ヒカリエの特徴を「渋谷が大人の街に変わる」というワーディングを開発し、話題性を創出しました。
渋谷ヒカリエの開業、相互直通の運転開始、その後の新たな渋谷の街づくりという一連の流れの中で、メインプレーヤーである当社が、渋谷の街の魅力を常に発信し続けることが大切だと確信しながらの広報活動でした。
東急東横線渋谷駅地上ホーム最終日。別れを惜しむ利用者らで混雑した
東横線地上駅としては最終日となる3月15日は、通常の駅員に加え、警備員を250人増員して対応しました。
最終となる上り電車のお客さまの降車を2分間で行う必要があったため、警備員が一つ一つ全てのドアを注視し、スムーズにお客さまに降車していただくシミュレーションを何度も繰り返すなど、さまざまな準備を重ねて本番を迎えました。
メディアの方々が撮影される場所を集約し、当日いらっしゃれないメディアの方のためにオフィシャルのカメラを入れて撮影し、その映像素材の提供も行いました。
おかげさまで混乱もなく、最終電車を発車させることができました。広報課も記念式典や記者会見など、早朝からイベントが目白押しでしたので、全課員11人でシフトを組み、各々の持ち場でメディア対応を行いました。
相互直通運転については、2000年に国土交通省の諮問機関である運輸政策審議会の答申を受けて、2002年から渋谷駅の改良工事、2005年から渋谷−代官山間の地下化工事が進められてきました。
終電後から約4時間しかない中で地下化切り替え工事が行われました。「ストラム工法」という技術があってこそ可能となった工事です。工事を施工した東急建設と共同で、密に連携を取りながら広報しました。
2010年から、東急グループ一体となって横断的な広報体制を組んでおり、今後も広報・宣伝においてグループのスケールメリットを発揮していきたいと考えています。
3月16日の東横線・東京メトロ副都心線相互直通運転発車式の後、開かれた鉄道5社の社長会見(左から2人目が野本社長)
まずは、露出を獲得して話題になるということ。
鉄道会社というと皆さまは堅いイメージをお持ちではないでしょうか。相互直通運転ではテレビのバラエティー番組にまで出演しました。広報の口から渋谷再開発事業についてお話をすること、長期ビジョンを持って言葉豊かに伝えることが求められていると思います。
さらには、トップ自らのメディア露出を仕掛けました。それには、トップの理解を得る必要がありますが、トップ発言には重みがあり注目度が高い。積極的に社長インタビュー、社長会見をセッティングしました。
渋谷ヒカリエで言えば、開業までに4回の社長会見を行いました。最初の会見では150人程度だった参加者が、4月24日のプレス内覧会では1000人を超えました。これはトップ自らが分かりやすい言葉でメッセージを発信し続けた結果にほかなりません。
3月16日の相互直通運転の発車式には、当社の野本社長に加え、東京メトロの奥社長、横浜高速鉄道の池田社長、西武鉄道の若林社長、東武鉄道の根津社長が出席され、揃って囲み取材を受けました。これは異例のことです。それぞれ相互直通運転の意義をトップからお話しいただきました。
トップのメッセージは社外に向けたものであっても、社内のモチベーションを高める励ましにも繋がります。
今回の相互直通運転を多くのメディアで取りあげていただけたのは、2010年以降の地道な広報と、その都度トップからメッセージを発信し続けてきたことで、相乗効果を上げてきたからだと分析しています。広報として非常に手応えを感じているところです。
「日本一住みたい沿線 東急沿線」「日本一訪れたい街 渋谷」「日本一働きたい街 二子玉川」。野本社長は分かりやすい言葉で3つの日本一を目指すと、さまざまな場所で発言しています。
社内でも、これまでと雰囲気が変わりました。広報課では、各種のお問い合わせに対し、誰に聞かれても一定の回答ができるような体制づくりを進めています。この事業については担当しか分からないというのではなく、誰に聞かれても同じレベルで回答できるようにしています。そのために、共有データベースを作り、広報課員誰でも見ることができるようにしています。
また、社内・社外広報の区別も取り払いました。具体的には、社外のPRと社内広報の双方を受け持つことで、リリースや社内報、フェイスブックなど、各ツールによる情報発信のタイムラグがなくなりました。
東急線沿線がこれからも選ばれる沿線であり続けるため、当社は投資を惜しみません。広報部門として、街の将来像を含め新しい文化やコンテンツをしっかりと語っていきたいと思います。