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株式会社デスクワン お問い合わせ

ケーススタディー: 大林組様(2012年7月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。

大林組 CSR室広報部
広報第一課 副課長
小林三四郎氏
大林組 CSR室広報部
広報第二課 副課長
佐藤竜介氏

大林組の「東京スカイツリー®建設プロジェクト」広報
技術者の人物像や思いを掘り下げ
専門的な建設技術を魅力的にPR
2012年5月22日に開業し、多くの来場者で賑わっている「東京スカイツリー」。その施工を受注した大林組は08〜11年度にかけて換算値を大きく伸ばした。建設段階から注目を集めた前例のないプロジェクトで、受注直後から問い合わせや取材依頼が殺到。広報部では従来伝える機会の少なかった建設技術を広く伝える好機と捉え、一般の人々の目線を意識した積極的な広報活動を展開した。
建設会社の広報とは。

小林: CSR室は社内・外広報、IR、社会貢献活動など、広範な業務に取り組んでいます。そのうち、広報部では主に社外広報を担当しています。

日常的な広報活動としては、広報第一課で社外向けリリースの作成・発信、問い合わせ対応、ウェブサイトの管理等を行っています。

建設業を含めたBtoB企業の傾向だと思うのですが、BtoC企業とは違い、一般の方に向けた広報活動の機会はそれほど多くありませんでした。ところが、東京スカイツリーの施工を手がけることになり、メディアの方からも一般の方からも問い合わせが殺到しました。注目度の高さに非常に驚きました。

佐藤: 広報第二課は、スカイツリーに関する広報活動を中心に行っています。08年以降、スカイツリーに関する取材依頼・問い合わせが増加したため、専門に担当する部署となりました。

事業者である東武鉄道様と東武タワースカイツリー様、設計者の日建設計様と密接に連携を取りながら、3者各々の分野においてスカイツリーのPRを進めてきました。

活動に際して何か目標は立てましたか?


2009.8.24 118m

2010.5.21 379m

2012.4.29 634m

佐藤: まずは多くの方にスカイツリーを建設しているのが大林組であること、大林組がどのような会社なのかを知って頂くこと、そして問い合わせにはできる限り応えることを社内での了解事項として、広報活動に臨むことにしました。

今までスカイツリーのように工事中から注目を集めるような経験はありませんでした。こんなに多くの問い合わせを受けるとは思わなかったので、数値目標等は設定しませんでした。

広報の際に工夫したことはありますか?

小林: スカイツリーは建設技術の粋を集めた建築物で多くの技術者が関わっています。技術のことを紹介するときに専門用語ばかり使用すると、一般の方には難しく感じられるかもしれません。

広報担当としては技術者と一般の方の間に立って、専門技術をいかにわかりやすくお伝えするかということを常に考えていました。例えば、多くの問い合わせに対応するためスカイツリーの特設サイトを設置し、スカイツリーの作り方を紹介しています。一般の方も理解できることを目指して作成したところ、大変好評です。

佐藤: 当社にはその道のプロみたいな専門家がたくさんいます。まずはどのような専門家がいるのかを把握すること、そしてどの専門家に登場してもらうのがPRとして効果的なのかということを考えました。

例えば、家庭では主婦である人が建設現場では部門のリーダーであるとか、一般の方に身近な視点を意識したりもしました。

小林: 技術を単純に言葉で説明すると難しくなりがちなのですが、実際に関わっている人の思いやスピリッツに焦点を当てて一般の人が共感できるような部分を掘り下げていくと伝わりやすい感じがしました。

佐藤: 現場の仕事は、安全に、定められた品質のものを工期内に作ってお客様にお引き渡しすることです。そのために毎日が張りつめた緊張の連続で多忙を極めていることは分かっています。

ですが、こんなに注目を集める機会はまたとありません。現場にも可能な限り協力してもらい、誰をクローズアップするのかということに心を砕いたので、一つ一つの記事や放映素材が魅力的なものになったと感じています。

苦労されたことはありましたか?

佐藤: 建設現場での取材には気を使いました。事故があってはいけないので、ヘルメットはもちろんのこと高所から物を落とさないようにすべてストラップで固定してもらうなど、記者やTVクルーにも作業員と同じ装備をしてもらいました。

広報活動が一段落していかがですか?

佐藤: スカイツリーをきっかけに大林組という会社について、名前や仕事の内容をある程度知って頂けたのではないかと思います。

また、社内的にも効果があったように思います。新聞やテレビなどに同僚が登場したのを見て自分も頑張ろうというように、社員のモチべーションアップに寄与したのではないでしょうか。

小林: スカイツリーは全国から建設過程が注目される希な建築物でしたが、活動が一過性で終わらないように今後も建設会社ならではの話題作りを続けていきます。

当社の技術の裾野は広く、宇宙エレベーター構想や生物多様性の調査など、他にも引き出しがたくさんあります。今回はスカイツリーでしたが、各現場には同じように物語があり、魅力的なエンジニアがいることを広く伝えていけたらと思います。

<株式会社大林組> 創業:1892年1月 資本金:577億5200万円
「工場マニアが話題ですが、スカイツリーをきっかけに工事現場に注目する現場マニアみたいな人が増えているようです。スカイツリー以前は完成後の建造物が話題になりがちでしたが、ものづくりの過程を感じて頂けるように極力現場からの発信をこれからも続けていきたい」と小林さん。