ケーススタディー: 電通パブリックリレーションズ様
<さいたま市議会広報> (2012年3月号掲載)
電通パブリックリレーションズ
コミュニケーションデザイン局長 花上憲司氏
親しみやすい双方向メディアへ
地方議会はみなさんにとって身近でしょうか? 地方議会は市民に最も身近な政治の場のはずですが、テレビや新聞で取りあげられる機会が少ないため、むしろ国会の方が身近に感じられる人も少なくありません。
地方議会の情報は自治体が発行する広報紙で伝えられますが、実際にはあまり読まれていないようです。さいたま市のアンケートでも、広報紙を「いつも読んでいる」という人は60代で3割、50代以下は1割を切っていました。
広報紙を読んでもらえない原因はどこにあるのか。私たちは、用語が難しいこと、文字が多く紙面の印象が堅いこと、自分たちの生活とのつながりが見えにくいことなどが課題だと考えました。改革に着手したのは2008年12月のことです。
まず、ターゲットの読者層を30〜40代の女性に設定しました。子育て世代の女性から子ども世代、親世代への広がりを期待したからです。一方、中心的な読者層である60代以上の方にも読みやすいように、文字のサイズが小さくならないよう配慮しました。
リニューアルのポイントは次の4点です。
@第一印象を変える A難しい内容も読みやすく、分かりやすくする B双方向性を持たせる Cさらに興味を持ってもらうための「気づき」の媒体にする。
@第一印象を変える
手にとりたくなる冊子にするために、まず表紙を女性の目を意識した優しいタッチのイラストに変えました。タイトルも『市議会だより』から『ロクヨン』にしました。これは議員数の64人にちなんだもので、「何だろう?」と思ってもらうのが狙いでした。現在は議員数が60人になったので『ロクマル』に改名しています。
A内容を読みやすく、分かりやすくする
読みにくくとっつきにくい原因の一つである議会用語の解説や、議題に関係するデータを紹介するコーナーを設けました。また、タレントのボビー・オロゴンさんや「なでしこジャパン」監督の佐々木則夫さんなど、市内在住の著名人の議会傍聴記を掲載したり、イラストやアイコン、キャラクターの活用によるビジュアル化を進めるなど、随所に親しみやすくする工夫をしました。
B双方向性を持たせる
PR(パブリック・リレーションズ)というのは関係づくりで、情報の伝え手と受け手の間にキャッチボールのような双方向の関係をつくるのが役目だと考えています。インタビューなどで市民にご登場いただくコーナーを企画し、その中には議会から伝えたい情報を盛り込むなどの工夫をしました。
C「気づき」の媒体にする
さいたま市議会は誰でも傍聴が可能で、ライブ中継や議事録もインターネットで見ることができます。全12ページの広報紙で議会のすべてを伝えることはかなり難しいので、質疑のやり取りは「質問の見出し」を口語体で表現し要約を記述するなどして内容を簡潔に伝え、さらに詳しく知りたい方には何を見ればよいかのガイドを掲載しています。
なでしこジャパン・佐々木監督の
議会傍聴記
「表紙に身近な場所が紹介されていた」「インタビューを読んだ」「分かりやすくなった」などのご意見をいただいています。
とても好評なようなので、リニューアル後、どれくらいの方に読まれるようになったかの調査をしたいと考えています。
タイトル、表紙、紙面構成、文章に至る全体的なイノベーションで大変な作業でしたが、その苦労が報われたとでもいいましょうか。受賞できたのも「多くの市民の方々に広報紙を読んでいただき、市議会への関心を深めていただきたい」というさいたま市議会議員と議会局の方々の熱意があったからだと思っています。
広報紙を通しての市民との「関係づくり」は現在も継続中です。アワードを取ったことで問い合わせも増えています。広報紙改革が他の自治体にも広がって市民と議会の距離を縮める一助になればと思っています。