ケーススタディー: 不二家様(2011年9月号掲載)
不二家
CSR推進部 広報室 兼
不二家ファミリー文化研究所
吉岡友紀子氏
「スマイルコンテスト」など多様な活動
創業100周年といえば、100年史を作成したりパーティーを開催したりするのが通例ですが、100周年事業を内向きなセレモニーにはせず、感謝の気持ちをお客様とのコミュニケーションに使おうというのがトップの意向でした。
創業記念日は11月16日ですが、2010年1年間を通じて記念事業を行うこととし、2009年の夏頃から準備を始めました。10年1月には社内横断的な実行委員会を組織し、施策毎にプロジェクトチームを発足して作業を進めました。
アイコンにしたのは、当社のシンボルである「ペコちゃん」です。ペコちゃんは象徴的な存在で、不二家の企業イメージと切り離せません。世代を通じて親しみやすいキャラクターとして愛され、同年、生誕60周年を迎えました。ペコちゃんを軸に様々なコミュニケーション施策を展開したのが、100周年事業の全体像です。
周年事業の目的は信頼回復も含めた企業のブランドイメージの向上です。100周年を通じてより多くのファンを作りたいという思いもありました。大きなテーマとしたのは「家族の笑顔」。家族のコミュニケーションや絆のきっかけづくりに貢献することを目指しました。
ペコちゃんスマイルコンテスト開催風景
ペコちゃんの歴史を展示する「ペコちゃんミュージアム」、公募した子どもたちのなかからリアル「ペコちゃん」「ポコちゃん」を選ぶ「ペコちゃんスマイルコンテスト」、全国17都府県の児童施設を訪問する「ペコちゃんがいく!不二家キャラバン隊」、森高千里さんが歌う「ペコちゃんの歌」の作成やプレゼントキャンペーンなどを行いました。
中でも反響が大きかったのは「ペコちゃんスマイルコンテスト」でした。3歳〜小学4年生までの子どもたちを対象に、笑顔が素敵なリアル「ペコちゃん」「ポコちゃん」を選ぶコンテストで、4月から募集を開始したところ、300人の応募見込みを大幅に上回る約2300人もの応募がありました。グランプリに選ばれた2人のお子様は本当にそっくりで、現在も、店頭ポスターのモデルなどで当社の広報活動のお手伝いをしていただいています。
また、9〜10月には、ペコちゃんを通じたコミュニケーションの強化・絆作りを目的に、「ペコちゃんが行く!不二家キャラバン隊」を実施しました。全国17都府県の児童施設約70カ所にペコちゃんがプレゼントを持って訪問し、子どもたちと「ペコちゃんの歌」を歌ったり、クイズをしたりして交流を深めました。また、従業員がプレゼントを届ける企画を、全国の当社事業所の近隣にある約1200の施設で行い、キャラバン隊と合わせて約18万4000人の子どもたちと交流することができました。
周年事業に関する広報活動は初めてだったのですが、プレスリリースでイベントの告知をするなど基本的な活動を着実に行うことを心がけました。
特にメディアに取りあげてほしい企画については記者発表会を実施したり、記者ひとりひとりにまめに連絡をとって誘致するなど、メリハリのある情報発信に努めました。そのかいあって、新聞やテレビを中心に多くのメディアに取りあげていただきました。
「ペコちゃんスマイルコンテスト」の露出は、テレビも含め広告換算1億8000万円相当でしたが、特にテレビが大幅に増加しました。最近は工場見学の番組が増えていることもあって、今年に入ってからも取材依頼が続いています。
ペコちゃんミュージアム
今回はメディアに好意的に取りあげていただく機会が多かったのが印象に残っています。100周年事業を通じて明るい話題や前向きな話題が増えたので、企業ブランドの価値向上に貢献できたのではないかと感じています。
また、社内的には従業員のモチベーションも上がりました。従業員がミュージアムなどでお客様と直接触れ合うことができたこと、また、メディアで自分の勤めている会社を見ることによって、気持ちが前向きになったり仕事に誇りが持てたりという効果があったと思います。
課題だと思ったのは従業員の意識の共有です。周年事業に関しては、社内報やイントラネットを通じて情報発信したりアンケートをとったりしましたが、全従業員に気持ちが伝わったかというと難しいところです。ツイッターやフェイスブック、スマートフォンなど情報共有の仕組みが年々進化しているので、これらを活用できていたら違っていたかもしれません。
今後周年事業に取り組む機会があればさらに工夫して、遠隔地にいる従業員・パートさんなども含めて一緒に盛り上げていけるようにできればと考えています。