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ケーススタディー: 第一三共ヘルスケア様
(2011年8月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。

第一三共ヘルスケア
マーケティング部
カテゴリー第一グループ
カテゴリーマネジャー
岡本淳氏

第一三共ヘルスケア『ロキソニンS』の広報活動
「適正使用」を前面に1年の準備期間
薬剤師対象の説明会を8000回実施
市販用解熱鎮痛薬として今年1月に発売された第一三共ヘルスケアの『ロキソニンS』の売れ行きが好調だ。第1類医薬品として「適正使用」を活動のテーマに、発売1年前から発売まで8000回にも及ぶ説明会を実施するなど地道な情報提供を行ってきた。そうした活動が実を結び、上位のブランドが強く新規参入が難しいとされてきた解熱鎮痛薬市場で9%を超えるシェアを獲得した。
『ロキソニンS』とはどのような商品ですか。

『ロキソニン』は、1986年から医療用医薬品として、リウマチや関節痛など慢性的な痛みの解消に使われてきた鎮痛剤です。その成分を市販で購入できるように転用した「スイッチOTC」として発売したのが『ロキソニンS』で、痛みや熱の原因物質をすばやく抑え、すぐれた鎮痛・解熱効果を発揮するのが特徴です。

従来、慢性的な疾患に使われる一方で、歯痛や解熱でも病院で処方されていたので、医療用でも名前はよく知られていました。医療用の『ロキソニン』は痛み止めとして医療関係者から高い信頼を得るとともに一般的な認知度も高かったこともあって、『ロキソニンS』は発売前から非常に注目されていました。

ブランド戦略はどのように立てたのですか?

市販用解熱鎮痛薬『ロキソニンS』

市販薬として認可されてから1年の準備期間を設けたのには理由があります。

2009年に薬事法が改正されて、薬剤師の説明を受けなければ購入できない「第1類医薬品」というカテゴリーが設けられました。『ロキソニンS』はこの第1類医薬品に当たります。医療用で長く使われてきた実績がある一方、市販では初めてなので正しく使っていただくことがまず求められました。

ブランド戦略を考えていく上で、すばやくよく効くという成分の特徴を強調するのはもちろんですが、「適正使用」が製品のテーマとして非常に重要であると考えました。通常、市販薬の承認を受けてからあまり長い期間を空けずに発売しますが、今回は、適正使用を徹底させるのには相当な時間が必要と考え、1年の準備期間を設けることにしました。

どのような準備をしてきたのですか?

発売に先駆けて配布された
「適正使用情報キット」

まずは社内で製品研修を行いました。当社のお得意先はドラッグストアや薬局になりますが、特に第1類医薬品なので、直接販売される薬剤師の方に製品情報などをお伝えすることが必要と考え、約半年かけて取り組んでいくことにしました。薬剤師の方に向けた取り組みは、営業担当者を通じた対面説明を含め大小様々な説明会を、発売前の段階で8000回以上実施しました。

また今回は、発売に先駆けて適正使用をより確実にするために「適正使用情報キット」を作りました。今までの製品ではこのようなキットを作ったことはありませんでした。製品の特徴や情報提供の仕方をまとめたCD−ROMと店頭でお客様に説明する際に使う小冊子がセットになったもので、最終的に2万5000セットを初回分として薬剤師の方がいるお店に配布しました。

メディア向けにはどのような活動を?

非常に注目された期待の大きな製品でしたが、適正使用を最重点に掲げていたので、メディア向けの活動はシンプルに行いました。製品の発売前の1月17日にプレスリリースを発信、記者クラブで小規模な説明会を行いました。続いて、2月9日にメディアセミナーを行い、銀座でクリニックを開業されている対馬ルリ子先生に女性の痛みについてご講演いただきました。

発売日に掲載された適正使用を伝える新聞広告は反響が大きく、ブログやツイッターでの書き込みが非常に多く大変驚きました。テレビCMも適正使用をテーマに作成し、製薬会社として真摯にPRをさせていただけたかと思います。

そのほか消費者向けの情報提供として、4月22日以降、全国5都市で約2000名の方を対象に女性の痛みと鎮痛薬をテーマにしたセミナーを開催しました。こうした啓発活動は来年以降も続けていきたいと考えています。

売れ行きはどうですか。

累計400万個を販売し、非常に順調です。もともと鎮痛薬市場は歴史もあり、購入するブランドを決めているお客様が多いので、医療用で支持されているからとはいえ新規で参入するのが難しいといわれていました。昨年度は約5億円の見込みに対して6.5億円と予想以上で、今のところ9%を超えるシェアで推移しています。

また弊社が『ロキソニンS』を発売して以降、市場全体が伸びを見せています。新たに市販の鎮痛薬を買う方も増え、市場が活性化されているのかもしれません。

その他、どのような反響がありましたか?

発売後、薬剤師の方からいろいろな声をいただきました。「説明して販売するのが楽しい」「お客様から喜びの声をいただいた」などの言葉です。今回の取り組みで薬剤師の役割がクローズアップされ、モチベーション・アップにつながったという声が多く寄せられました。『ロキソニンS』の取り組みがそういう形で受け入れられたことは非常にうれしいです。

説明会、プレスセミナー、広告など、適正使用というテーマで一貫性をもって取り組んできたことが現在の結果につながっているのかと思います。今後も服薬指導をきちんと続けていただくために、新しい情報を付け加えながら、薬剤師の方とのコミュニケーションを続けていく方針です。こうした体制が強固なものとなり他の第1類医薬品にも広がっていくことになれば、『ロキソニンS』の果たした役割はとても大きいと考えています。

<第一三共ヘルスケア株式会社> 設立:2005年12月 資本金:1億円
経営企画部コーポレートコミュニケーショングループ6名のうち広報担当は2名。「広報活動は製薬会社ということもあり、医薬品をいかに正しく安全に使っていただくかというところに重きを置いています。『ロキソニンS』は本当にたくさんの方に使っていただいています。それに対する責任はとても大きいです」。