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ケーススタディー: タニタ様(2011年6月号掲載)

※数値等のデータは掲載当時のものです。

タニタ
広報室室長 猪野正浩氏

タニタの社員食堂と広報活動
社員食堂レシピ本がベストセラーに
取材が相次ぎ露出が倍増
体脂肪計・体組成計でシェアナンバーワンのタニタの社員食堂は、約500キロカロリーの低カロリーメニューで美味しくやせられると評判。その食堂のレシピをまとめた『体脂肪計タニタの社員食堂』は続編と合わせ、7月現在で219万部のベストセラーとなっている。健康にこだわる社員食堂への取材が相次ぎ、メディア露出も大幅に増加した。
社員食堂開設と出版の経緯を。

「健康をはかる」企業なので社員も健康でなければいけない。10年程前、肥満予防・改善指導を行うベストウェイトセンターの見直しに伴い社員食堂に衣替えし、社員の健康を考えた食事を提供することを目指しました。

当初は減量指導用の食事という感じで、現在と同じ500キロカロリーでしたがボリュームが少なく、病院食のようだとあまり評判がよくありませんでした。そのためメニューの改善を進め、ご飯、主菜、副菜2品、汁物で約500キロカロリーの野菜をたっぷり使ったボリューム感のある現在の形になりました。

社員食堂が初めてテレビで取りあげられたのは、2009年、NHKの「サラリーマンNEO」の「世界の社食から」でした。企業の社員食堂を紹介するコーナーで、当社の放送の評判が非常に良かったようです。それを見た出版社から、レシピをまとめた料理本の企画が持ち込まれ、広報室が窓口となって出版に向けて動き出しました。

出版元の大和書房さんも実用書は初めてだったので編集に時間がかかり、約半年後の2010年1月に『体脂肪計タニタの社員食堂』を出版しました。

レシピ本への反応はいかがでしたか?

4月にリニューアルしたタニタの社員食堂

出版後の販売の動きは比較的緩やかで、徐々に売れていくというような感じでした。それが一変したのが3月頃です。

その頃から新聞や雑誌の取材が入り始めていましたが、テレビ局がかなり興味を示して、取材が入るようになりました。テレビで紹介されると反応が良く、それを見た他局から少し違った切り口でと次々取材が入り、在京キー局全てで取りあげていただきました。

キー局の取材が一巡してそろそろ収束と思っていましたが、同じ局の別の番組からも取材が続き、7〜8月頃は毎週のように対応していました。広報も食堂を管理する栄養士もスケジュール調整が大変でしたが、取材を受けてそれが露出されると、タニタがどういう会社かわかってもらえるという相乗効果が生まれ、良い形で循環していきました。

昨年9月から約半年かけて本社のリニューアル工事があり、その間社員食堂はクローズになりました。さすがにもう取材は少ないだろうと思っていましたが、今年4月のリニューアルオープン後にTBSの「金スマ」で大きく時間を割いて取りあげていただいたところ再度注目を集め、社員食堂だけでなく企業そのものに対する取材も来るようになり、現在も取材対応が続いています。

広報活動にも変化がありましたか?

社員食堂がクローズアップされて露出が増加したのは事実なのですが、当社は以前から広報活動に力を入れてきました。テレビCMや新聞・雑誌広告が必要だとわかっていてもなかなか予算確保が難しかったので、広報部門を強化し、数年前から担当を2人から4人へと増員しました。

日常的な活動としては、プレスリリースや取材対応が中心です。リリースは、月2本くらい出しています。マスコミの方とのパイプを重視していて、可能な限り媒体社を回るキャラバンも行っています。単に資料を送るだけではなく、記者クラブで配布したり、時間が合えば記者の方に直接手渡しして説明したり、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションを心がけています。

私たちにとってメディアリストは非常に重要で、常に鮮度のいい状態を保っている必要があります。特に新聞社は担当者の異動が早いので、きちんとトレースするようにしています。現在はウェブが発達しているのでメールですませることもできますが、広報の基本はやはりフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションなので、できるだけ足を運んで、商品や会社の話を直接聞いていただくことが大切だと考えています。

今回の社員食堂の取材をきっかけに様々な媒体の方とお付き合いができるようになり、パイプが強化できたことは大きな成果でした。特にテレビ局とのパイプは以前は難しかったのですが、取材対応を重ねることで次の機会へとつなげられるようになりました。

広報活動の目標はありますか?

現在取り組んでいるのは営業支援的な要素を強く出したマーケティング型の広報です。パブリシティ、パブリシティ後の広告、話題を継続するための施策等、ストーリーを考えて組み立てるというスタイルをとっています。

市場には同じような商品、似たような商品がたくさん販売されているので、お客様が商品を選ぶのが難しくなっています。そのような状況でも当社の商品を指名買いしていただけるような広報を展開したいと考えています。社員食堂は非常に大きな注目を集めましたが、商品広報や企業の経営情報の公開などについてもきちんと取り組んでいきたいと思います。

<株式会社タニタ> 営業開始:1923年 資本金:5,100万円
広報室は4人体制。最近は中国での広報にも力を入れている。「社員食堂がマスコミに取りあげられてから、社員の健康への意識がさらに高まったのか、食堂利用者も増えました。予約が埋まってしまうこともしばしばです。私もよく利用しています。季節の食材が取り入れられていて美味しいですね」と猪野さん。